第11話
「……」
『……』
最初、私はその男の子がどこから現れたのか分からなかった。
扉が開いた音なんてしなかったし、窓も開いていない。それなのに、その男の子は、突然現れたのだ。
その男の子も驚いていたが、私の『驚き』とは若干ニュアンスが違うらしく、男の子はそもそも『自分が見えている』という事に驚いていたらしい。
私は未だにその事を聞いても、いまいちピンと来ていない。
ただ、その男の子の話を聞くと、男の子も病院に来ている期間が長いらしく、色々と話をしていくうちに仲良くなった……のだが。
『じゃあまたねぇ、バイバーイ』
「あっ、うん」
そう言って手を振って「またね」と言える相手が増えた……という事はとても嬉しい事だ。
でも、それ以上に気になる事があった。
「あの子、一体どこの子だろう」
そう、実はあの子の姿を『病室』で見た事がなかった。もちろん、病院で見た事はあったが、それ以外の場所で見た事がない。
つまり、その男の子は『通院』しているのだろう……と思っていた。
それに、男の子の服装は『制服』だ。だから、学校に通いながら……だと、私は思って納得していたのだが、いつも彼が現れるのは『お昼頃』だった。
「…………」
考え出すと、色々謎は深まるばかりだ。
そんな時、男の子から「誕生日の日も遊びに行くよ」と言われた。もちろん、私に断る理由はない。
少しの間、私が体調を崩していたときは、隔離されていたこともあってか会いに来てくれる事はなかったが、ここ数日は普通の病室に戻ることが出来た。
だから、そんな話も出来た。
健くんも先輩と一緒に来るとは言っていたけど、学校があるから多分『夕方頃』になるだろうと思っていたから。
「……! はーい」
扉のノックされた音に気がつき、私はいそいそと扉を開けた――。
■ ■ ■ ■ ■
「……それで、君は『彼女』をさらってどうしようと思ったんだ?」
「……」
俺と空は、ある『人物』と……その『動物』と対峙していた。まぁ、正確にはその『人』も『動物』も普通の人には見えていないんだけど。
『驚いた。まさかわざわざ会いに来てくれるなんて!』
「……こっちの問いの答えになってないが、まぁ。俺が君の姿を見えていた……というのは分かっていたって事だな」
この男の子のリアクションを見る限りそうだろう。
『あはは、本当はあの子をこの牛さんにさらってもらおうって算段だったけど、君が来てくれたんならそれでいいや』
「…………」
不敵な笑み……とはこういう事を言うのだろうか。あまりにもその『笑顔』は、幼い『少年』には似合わない。
『ただねぇ、僕は特に目的なんてないんだよ』
「……え?」
『僕はただ、変わりゆく外の世界をあまり知らない彼女に世界の美しさを教えてあげようと思っただけさ!』
「……」
「……」
今度は打って変わって、まるで「キラッ!」とかいう効果音が付けられそうな可愛らしい笑みをこちらに向けながらそう言っているが、正直意味が分からない。
『……すみません』
隣にいた『牛』ですら、まるで「頭が痛い」といった様子でこちらに対し申し訳なさそうに謝罪した。
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