第6話


「……」

「どうした? 瞬」


「いや、やっぱりそんな大喧嘩をするようなヤツには見えないな……と思ってな」

「ああ。確かに……」


 刹那はそう言うと、俺の横で何やら画面を操作した。


「……どうした」

「いや、実はその『大喧嘩』の話を聞いてもしかしたら龍紀がその『彼女』の写真とか持っているんじゃないか……と思ってさ」


 確かに、龍紀は健と同じ中学の先輩にあたる。だから持っている可能性は十二分にあるのだが……。


「お前、いつの間に……」

「うーん? 昼休みが終わる直前くらい?」


 そう言いながら操作を進めると……。


「あっ、コレだ。ほら」

「……近い」


 思いっきり押し付けられる様に出された画面に困惑したが、すぐに刹那から受け取り、よーく見ると……。


「おい……見切れているんだが」

「どうやら龍紀、写真撮るの苦手みたいだね」


 あの『何でも出来そう』の筆頭に上がりそうな人間に意外な『弱点』を知ったところだったが、問題はその写真に写る『女性』だ。


「うーん……」

「……」


 あの温厚そうな健を怒らせた……という事と、それがこの写真に写る『女性』が関係している……という事は龍紀の話で知っている。


 確かに、健は性格も温厚で優しそうだ。それでいて『イケメン』に入るくらいの容姿をしている様に思う。


 それに対し、この写真に写る女性は……。


 少しふくよかな見た目はしているが、この写真で写っている様に『笑顔』がとても可愛らしい様に見える。


「かわいい……よね?」

「ああ」


 俺も刹那もこの写真を見て思ったのは、この画面から伝わってくる『優しさ』だった。


 そんな『彼女』に対し、健の同級生は何と言ったのだろうか……。


「まぁ、大方『あれはないって』とかなんとか言ったんじゃない? 下手をするともっと過激な言い方で……」

「……なるほどな」


 確かにこの女性の見た目は『ふくよか』である。それに対しとやかくいうヤツラは残念ながら存在する。


 でも、考えてみれば……そんな事を言われて何も思わない……なんて事はないだろう。


 ――いや、それでも『暴力』はダメだが。


「それと、俺が感じていた『違和感』なんだが……」

「ああ、朝言っていた……それがどうかした?」


「ひょっとしたら……それ『霊に関係』しているんじゃないかと思ってな」

「霊? でも、俺は何も感じなかったけど……」


 そういえば、刹那も実は霊が見えていたんだった。


「それは多分、その『霊』が『カード』と関わりがあるからじゃないか……と俺は睨んでいる」

「ちょっと待って、それって……証拠は?」


 刹那がそう言いたくなるのも分かる。


 だが、俺は『霊』が『カード』と関わりを持っているパターンを何度も見てきた。しかも、ここ最近では『夢の中』で出会っている。


「……えと、まさか」

「ああ、一回その病院に行ってみた方がいい」


「あー……」

「無理に……とは言わないが」


「いや、分かった。行くだけなら何も問題ないし」

「すまん、助かる」


 まさか、刹那がそこまで行くのをためらうとは思っていなかった……と言いたいところだが、実は「インフルエンザにかかりたくなかった」という分かりやすい理由から嫌がっていたのだ。


 それを知ったのは……病院に入る前の事だった。

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