第5話
俺たちが通っている学校には、学校内に自動販売機がある。
ただその自動販売機は、家庭科室や美術室などの『副教科』と呼ばれる教科の授業が行われる『別棟』にあった。
ちなみに、前に
「うー、さっむ」
「自動販売機に行こうとすると、ここの廊下を通らないといけないのは辛いよな」
そう、その『別棟』と呼ばれる建物に行こうと思うと、どうしても外に一度でなくてはいけない。
「まぁ、仕方ないね。それで『こいぬ座』なんだけど」
「あっ、続くんだな」
「うん。でも『こいぬ座』も『おおいぬ座』と同じように色々な由来があるんだよね」
「そうなのか」
なんて話をしながら外に出る廊下を歩いていると……。
「……でも『こいぬ座』の結末は大体一緒だから」
「……」
「……はぁ」
俺は「やっぱり……」という気持ちになった。大体『カード』絡みの話をしている時に『あいつ』は現れる……と分かっていたからだ。
ただ、刹那の方はよく分からずキョトンとしているが……。
「……こんにちは」
「うぉっ! びっくりしたぁ」
「はぁ……」
いきなり聞こえた声に俺はため息だったが、刹那はようやく『そいつ』に気がつき、思いっきり体をビクッとさせて驚いた。
「空、前にも言ったがここは学校の敷地内だぞ」
「……うん、分かっている」
「分かっているなら……」
「まっ、まぁまぁ瞬、そのくらいに」
怒っていると感じた刹那が俺と空の間に割って入った。
「はぁ……で? 結末が大体一緒ってどういう事だ?」
「……うん。実は『こいぬ座』の由来は、色々あるってさっき言っていたけど、その結末は大体、飼い主であるご主人が亡くなって、その悲しみからご飯も食べずに自分も死んでしまう……という飼い犬の話」
「……そうなのか?」
「うん、そうなんだよ」
「でも、確か刹那は『おおいぬ座』と『こいぬ座』は関係がある……とか言っていなかったか?」
「それは、色々ある由来のうちの一つだな。だから、明確にそうだとは言えない」
「はい」
刹那も空もそう言っているのであれば、そうなのだろう。しかし、こうして話を聞いていると……どうしても腑に落ちないところがある。
「さっきの話と今の話を聞くとなおさらどうして、この二枚が一緒に現れたんだろうな」
「……そうなんだよね」
「うん……。おおいぬ座はともかく、エリダヌス座 が現れる理由がない」
自分の願いを無理やり押し通した男子が落ちた『エリダヌス座 』と飼い主を亡くし、悲しみ暮れて自分も死んでしまった『こいぬ座』……どう考えても接点があるようには思えない。
「……もしかしたら、瞬の周りの誰かがそういう事に巻き込まれた……とか?」
「はっ?」
突然何を言い出すのだろうか……と思ってしまった。
「あっ、いや……何となく……なんだけどさ」
「いや、さすがにそれはないだろ」
「……その可能性は否定出来ない。現に修学旅行での一件もある」
「それは……そうだけども」
確かに、あの一件は龍紀と空が巻き込まれ、俺たち二人がお世話になった『
「…………」
「そういえば、聡さんの連絡先は知らないけど実苑さんの連絡先なら分かるから……」
刹那がそう言った瞬間――。
「ん?」
「電話……」
「ああ……」
この学校では非常時のために携帯を持っていてもいいという事になっている。もちろん、テストや授業中は教師に回収されるが、休み時間中は基本的に持っている生徒が多い。
「……えと、あれ? 実苑さん?」
「…………」
液晶画面に表示された名前に、刹那は驚いていたが、空は何も言わず、俺は……。
「なんてタイミングのいい」
そう小さく呟いた。
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