第4話
「……」
正直なところ俺にとっては『最悪な遠足の思い出』でもある。
あの後、聡さんと実苑さんたちに連れられても戻った俺たちは、念のために病院に搬送されたり、首謀者である理苑に謝られたり……と色々と……後が大変だった。
でも、そのおかげで除霊の出来る折里実苑さん。
そして……その力はないものの、暴走しやすい
「はぁー、ん……?」
俺は備え付けの郵便受けを見ると……。
「なんだ? コレ」
そして、また手紙を見つけた。
「……」
俺は一瞬身構えた……が、封筒に書かれている名前を見て内心ホッとした気持ちと懐かしい気持ちが両方湧き出て来た。
郵便受けに入っていた封筒には、住所と『
そして、封筒の中には『手紙』と…………。
「……チケット?」
豪華そうな装飾が施されている紙……というよりチケット。そして、そこには『クリスマスリサイタル』の文字と……。
「!? なんだ、これ! あっ……」
「……」
あまりにも驚きすぎて、思わず大声を出してしまい、ちょうど近くにいた人に睨まれてしまった。
ただ、このチケットに書かれていた値段に驚愕してしまったのだから仕方がない。
そこに書かれていた値段は……マフラーや手袋、コートを新調してもおつりがくるほどの額がそこには記されていたから。
「なっ、なんでこんなものが……」
俺はただ普通に手紙が入っているだけ……だと思っていた。しかし、こんな高額なモノが入っているとは……正直驚きだ。
そして、同封された手紙を読むと……。
「………………」
どうやら久しぶりに生まれ育った場所に凱旋帰国することになり、その際『リサイタル』を行うことになったらしく、ぜひ俺を招待したい……ということらしい。
「神か……」
『音無 神』。
現在、天才ピアニストとして世界中を公演・コンテストに出演している。幼少期からその才能は開花しており、『天才現れる!』とよく新聞各所に取り上げられた。
しかし、その時の神はスランプに陥っており、思い悩んでいたが、俺たちの出会いがキッカケで見事、脱出出来た様だ。
「元気……だといいな」
そう小さく呟きながら部屋に入り、チケットに書かれている日付を確認しながら壁に掛かっているカレンダーに『神のリサイタル』と書き込んだ……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……」
俺は『凱旋クリスマスリサイタル』と大きく書かれた文字と綺麗な装飾が施されている看板を見え上げた。
「はぁ……」
そして、かなり人が……多い。
てっきりこういった『クラシック』のコンサートは年配の人が多いかと思っていてが、実際は家族連れにカップルの姿が多く見られた。
開始時刻が通常のクラシックのリサイタルより早いのもあり、コンサートの後に食事にでも行くのだろう。
「………………」
前来た時は、そこまで多い……って感じじゃなかった。いや、それは多分、一人じゃなかった……という事も関係しているのかも知れない。
そう思いながら俺はあの時は隣にいて今は隣にいない『少女』を思い出した。
それに、あの時は彼女の頼まれごとでもある『カード』が関係している……という事もあり、目的があった。そのため俺は神経を尖らせていた……という事もあったのだろう。
「っ……!」
俺は肩を叩かれて思わず振り払う様に振り返った。
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