第3話
「いや~、元気そうだったね」
「……そうだな」
実苑と聡は走り去る三人の姿をほほえましそうな表情で見送っていたのだが……その姿はさながら、大人が小さな子供を見ているような……そんな感じだ。
「さて……君は戻らなくていいのかな?」
実苑は隣にいる少女……空に話しかけた。
「…………」
当の空は……というと……瞬と刹那、龍紀の姿を見送った後も地面を向いたまま黙り込んでいた。
「……あの、さっき聡さんは言いましたよね?」
「なんだ?」
「最初から『カード』の存在を知っている人、もしくは……『第三者』が関わっている……と」
「あー、そういえば言っていたね」
空の言葉に実苑も思い出しながら頷いた。
「それは……あくまで俺の考えだ。合っている、という証拠はどこにもない」
「でも、今は聡の言っていた事が一番しっくりきているよなぁ? 他にも色々考えられる『理由』はあるけどさ」
「……」
それはその通りである。現に、今は何も情報が無い。
空にとって『カード』はとても大事なものである。今のところ一番筋が通っている『話』は聡さんの話だ。
「…………」
「?」
「どうした? 突然黙り込んで……」
突然、黙り込んだ聡さんに実苑さんも不思議そうに尋ねた。
「いや……」
「えー、教えてくれてもいいじゃんか!」
「……」
実苑の言葉に同調するように空は首を縦に振った。
「なぁ……」
「?」
「確か、明日って……」
聡の何気ない言葉に実苑は何か分かったようだ。
「あー、うん」
「あの……」
これこそ『長い付き合いだからこそ分かる事』なのだろう。だから……と言われてしまうと、仕方がないのかも知れない。
まぁ、要するに……今のやり取りは……ついさっき知り合ったばかりの空には全く分からない話だった。
「空……ちゃん?」
「はい……」
「申し訳ないんだけど、また瞬と刹那に『ココ』に来るように言ってくれるかな? 後、これも一緒に……」
「?」
そう言って実苑は空に『ある場所』が記された紙を手渡した。
「これを……?」
「うん!」
元気な声で実苑は答えた。
「詳しい話はそこで話す。なんだかんだで色々うやむやになったからな」
「そうそう。君はもちろんだけど、コレはあの二人……だけじゃなく、龍紀くんも一緒に聞いてもらった方からね」
「……分かりました」
この時の空は正直、まだ納得はしてはいなかった。
しかし『明日』たった一日を待てない程せっかちな性格ではない。だから、空は二人の言葉を信じ、実苑からの手紙を受け取り……二人と別れた。
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