第2話
「ただ……言えるのは、その『第三者』がこのカードの存在を知っていて尚かつ……」
「……」
「ん?」
空の視線が気になったのか聡さんは顔を上に向けた。
「!?」
「…………」
「あっ!」
俺たちも聡さんの驚いた顔が気になり上を向くと――――。
「龍紀っ!」
「あっ! いたっ!」
そこには瞬と刹那の姿があった。
「まぁ、カードがバラ撒かれたことを知っている人間……もしくは、そう仕向けた『食えない奴』かの人間……だろうな……」
聡さんがそう小さく呟いた声を俺は聞き逃さなかった――――。
「瞬! 刹那!」
俺は坂の上にいる友人2人に声をかけた。
「はぁ、いきなりいなくなるなよ」
「本当だよ……誤魔化すの大変だったんだよ?」
刹那は「ねぇ?」と尋ねるように顔を瞬に向けた。
「…………お久し振りです。実苑さん、聡さん」
瞬はそんなことよりも……といった様子で、俺の隣にいる実苑さんと聡さんに驚いていたののものの、すぐに気を取り戻して丁寧に挨拶をした。
「えー、無視?」
刹那は自分の言葉をほっとかれて……少ししょんぼりしている。
「ひっさしぶり~! いや~! 大きくなったか?」
実苑さんも瞬達に気づき、大きく手を振りながら声をかけて坂を走り出した。
「はぁ……、そういう言い方をすると親戚のおじさんみたいだな」
ため息をつきながら聡さんは言ったが、そんな『ちょっとした毒』は実苑さんの耳には届いておらず、諦めた表情の聡さんと俺たちは実苑さんの後を追って瞬と刹那と合流した。
「改めて、久しぶり!2人とも!」
「久しぶり~!」
再会を喜んでか、かなりテンションが高い実苑さんと刹那はお互い飛び跳ねる様にお互い喋っている。
「お久しぶりです」
「久しぶり……」
しかし、視線をズラせば静かな再会を聡さんと瞬はしていた。
正直、その雰囲気は「ものすごく……怖い」ただの再会の挨拶がどこか殺伐とした雰囲気を醸し出しており、俺は率直にそう思った。
「でも、二人ともここにいていいの?」
実苑さんの率直な質問に瞬は思い出しように時計を見ると……。
「やっ、ヤバイ! 龍紀、急がないと!」
「え?」
「今ちょうど自由時間になっているからな……。その時間が後……三十分か」
「それは……ヤバイだろ!」
俺は瞬と刹那と共に集合場所へと向かった。
「すみません!俺たちはこれで!」
「ハーイ!」
「じゃあ~ね~!」
「じゃあな……」
その後、俺達はギリギリのところで集合時間に間に合った。
間に合いはしたのだが……、先生たちをずっと誤魔化し続けてくれたお礼……というの名の『代償』として『黒いカレーまん』というよく分からないものを買わされたということはちょっとした裏話である。
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