第8話


「ん? でも、瞬はこの時はまだ『幽霊』が見えてなかったはず……」


 そう龍紀は俺の話の途中でそう聞いてきた。でも、話している俺自身もこれは聞かれることは予測の範疇だ。


「あぁ……。この時は『完全』には見えてない。」

「完全に?」


 首をかしげたのは空だった。


「あの時の俺は『なんか黒い塊がいる……』って感じに見ていた。だから全く見えていなかった……って訳じゃ無い」


「……むしろそっちの方が怖いけど」

「うん」


 一体どんな想像しているのか二人は顔を青ざめながらそう呟いていた。


 ちなみに刹那は初めて聞いた……という顔で俺を見ていたが、その時の事を思い出したのか最終的には納得した様だ。


「まぁ、そんなわけで俺たちは必死に走ってなんとか逃げ切ったけど……」

「……けど?」


「まぁ、行方不明な上に雨の中必死に走り回ればばなおさら俺たちがどこにいるかなんてなおさらさ……」

「分からなくなる……」


「そう……おかげ様でカバンはその神社に置いていたから食料もない……」

「……絶体絶命」


 空の言った言葉は、その時の俺たちを現していた――――。


「はっ!? ガキ二人が迷子!?」

「ああ……」


「なっ、なんでまた」

「どうやらはめたであろう少年たちがここの事をよく知らなかったらしい……」


「最悪だな……」

「ああ」


 ちょうど同じころ、二人の青年が雨が降る山道を歩きながら今までの経緯を話していた。


「とりあえず、分かっているのは……」

「ここにいた……ってことだな」


 そう言って一人の青年が古びた神社に置いてあった荷物を見ていくと……。


「……ん?」


 あるものが目に入った。


「どうやら……ここにはいねぇみたいだな。」


 しかし、返ってこない返事に友人は違和感を覚えた。


「おい………どうした」

「なっ、なぁこれ……。やばくないか?」


「っ!」


 そう言って荷物の近くにあったのはに粉々に砕けた鏡があった……。しかも、その鏡は黒く変色している……。


「すぐに探すぞ……」

「ああ!!」


 二人の青年はすぐに『行方不明になったガキ二人』を探しに急いで外へと走り出した――――。 


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「さっ、寒い……」

「我慢しろ。下手にここから出て『あんな奴ら』に見つかりたくないだろ」


「うん……。わっ、分かっているけど……」

「……」


 そう言っている間も刹那は体を震わせていた。


 この時『くそ……どうにかしたいけど、方法が……分からない!』という悔しい気持ちと焦りが俺の中で渦巻いていた。


「……」


 でも、下手に目立って『悪霊』に見つかるのはごめんだ。


 ただそうなると、何の変哲もないごくごく普通の小学生の男子二人に出来る方法は思いつかない。しかも、運が悪いことに辺りは暗くなっており、足元を確かめながら歩かないといけない程だ。


「…………」

「おい」


「え?」

「これ、着とけ……」


 そう言って俺はこの時、震えている刹那に上着を着せた。今思えばこの間の『鯨座』と重なる状況だったと言える……。


 ただ、刹那をこのままにさせる訳にはいかない……と思いながら俺は辺りを警戒しながら見渡して……しばらくして、俺たちは『ある人』と出会った。


しかし、それよりも先に……。


「っ!!」


 俺たちは悪霊と対峙してしまった―――――。

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