第2話
「まぁ、それはそれとして……だ」
「何?」
「なんで俺はここにいるんだ?」
「いやー、だってさ」
刹那は頬をかきながら「物申したい」という視線をジーッと向けている俺から気まずそうに視線を外しているのは……多分、ワザとだとは思う。。
「……」
それにしても普通の場合、病院に行ったのであれば帰りは自宅に帰るはずだ。俺で言うならマンションに……。
でも、なぜか俺は診察後。
刹那の母親にそのまま車に乗せられ、有無も言わせず『刹那の自宅』に直行し、俺は制服を着替えさせられ、客室に詰め込まれ、今の今まで寝かされていた。
ありがたいと言えばありがたいのだけれど……あまりにも「いきなり」だったため、正直「物申したい」気分ではある。
「俺は、自分の部屋に帰らせてくれ……と言ったはずだけど?」
「え、えーっと……」
俺の問いかけに刹那は、言いにくそうに頬をかいた。
しかし、それを刹那の母親に聞くのは申し訳ない……ので、刹那が学校から帰って来て俺の様子を見に来たタイミングで尋ねることにしたのだ。
「いや、何て言うか。瞬の部屋は……言っちゃ悪いけど、ボロボロ……じゃん?」
「…………」
――いや、もっと違う言い方があるだろう……と毒づきたい気分だ……が、実際、部屋の隙間風は年々ひどくなっている……。その為、否定が……出来なかった。
「でっ、でも『それに、瞬は家族も同然だ』って母さんも言っていたから気にしなくていいよ」
「……そうか」
刹那は、何気なく言ったつもりだろうけど、それを言われた俺は、刹那と顔を合わせないように窓の方を向いていた……のは、正直なところ嬉しい気持ちと照れくさい気持ちが両方あり、顔を合わせづらかったからである――――――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「まぁ……とにかく、しばらくはこの部屋で生活もらうよ」
「えっ」
「……どうせ、まともに食べてないだろうから」
「……」
そう言って刹那は部屋を出て行こうとした……が。
「ちょっ、ちょっと待て!」
俺はあることを思い出し、刹那を呼び止めた。
「何?」
「いや、今『しばらく』って……」
「ん? 言ったけど……」
「いや、そう言われても、あまり長くいるのも悪いだろ」
確かに、刹那の言う通りキチンとした食事をしている……とは、お世辞にも言えない。でも、俺の「あまり長居するのも悪い」という言葉は本心だ。
「いや? 全然。大丈夫だけど……」
「…………」
――平然と、しかも即答で答えた。
「…………」
「そういう訳だから……」
「じゃあ、今日一回だけ自分の部屋に行ってもいいか?」
「何で? 別に、帰る必要ないじゃん」
刹那は不思議そうな……キョトンとした表情だったが、俺は一度でいいからすぐに出たいのには理由があった。
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