第3話
「はぁ……」
「いきなりため息とか瞬くんひどいっ!」
「別に、ため息ぐらいいいだろ」
「そんなにため息ばかりしていると幸せが逃げるんだよ?」
「………………」
そんな俺たちのやりとりを龍紀は黙って見ている。
「ん?」
「龍紀、どうした?」
「いや……、やっぱ仲良いなって思ってさ」
「まぁ、小学生からの付き合いだし……」
「昔はまだ大人しい子供だったはずだったんだけどな」
「まっ、まぁ。とりあえず!修学旅行の班はこの三人なんだから仲良くやろうよ!」
「はぁ……。俺としては刹那が一番心配だけどな」
「実は俺も……少しな」
「えっ!?」
「あっ……」
「ばっか!」
大声でその場に立ち上がった刹那を俺は席に座らせた。
「あっはは……」
「悪い」
辺りが静かにしている時、いきなり大声を出したら……かなり目立つ。実は、たった今。まさしくクラス中の視線が刹那に集まっていた。
「それにしても……」
「ん?」
「どうした?」
「いや、なんでもない」
「?」
「?」
二人は不思議そうに首をかしげ、作業に戻った。
修学旅行の自由行動は基本男女別の四人もしくは俺たちの様に人数の関係により三人で編成されている。
でも、男女混合でない……というのは、実は今時それ自体珍しいらしい。
ただ俺は女子と会話をする事自体が苦手だから、男子のみ。しかも、刹那や龍紀と同じ班になっていいのなら、それはとてもありがたい話だ。
「……で、チェックポイントって『どこ』だ?」
「ん?」
「えと……」
一応『自由行動』という
そして、そのチェックポイントにいる教師から印を貰えば、後は自由にしていい……ということになっていた。
ただ、そのチェックポイントもいわゆる『観光地』として有名なところだから、特に問題はない。
そのチェックポイントを自分たちの目的地にしてしまえばいいだけの話だ。
でも、これだけじゃあ、ただの旅行とさして変わらないな……と、俺は『修学旅行のしおり』を見ながら心の中で小さく呟いた。
「なぁ……」
「ん?」
「何?」
龍紀の声に俺達は顔を上げた。
「いや、また今度でいいんだけどさ。また詳しく教えてくれな。二人の話……とか色々」
「ん? 別に構わないが……あんまり面白くないぞ?」
「えー、色々あったじゃん! 夜の学校に忍び込んだ話とか! 色々」
「……あー。そんで刹那が大泣きした話とか……な」
「……また、今度教えてくれな」
龍紀は苦笑いをしながら計画を立て、刹那も旅行雑誌を見ながら龍紀とともに計画を立てていた。
「どうだ? 上手くいきそうか?」
「どう?」
「あー、ギリギリかもな」
そうして俺は、二人の立てた計画を元に移動時間などをおおよそで計算をしていたのだが……。
「……もっと詳しく調べるか」
「うん」
「そうだな」
さすが『観光地』が多いことで有名なのもあり、行きたいところが多すぎてなかなか絞り込めない。
「放課後に本屋でも行く?あっ、でも龍紀は大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。今日は部活も生徒会の仕事もない」
そこで俺たちは一度放課後に書店に行くことになった。
でも、まさかそこで『ある少年』と出会うことになる――なんてこの時の俺たちは、知るよしもなかった。
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