第4話
「……なんとかしねぇと」
明らかに刹那をこのままにしておいていいとは思えない。そんな俺の焦りの気持ちとは裏腹に、状況はどんどん悪くなっていっているようにしか思えない。
「はぁ……はぁ……」
刹那の息遣いはどんどん荒くなるばかりで、熱が上がっていっている事が俺にも分かるほどだ。
せめて休ませることが出来れば……。そう思っている間も刹那は苦しそうだった。
しかし――――――
「一体、何がどうなっている?」
進んでも進んでも一向に、刹那の家に辿り着くような様子がない。しかも、今自分がどこを歩いているのかすら分からない。
しかも、刹那から「確かめて欲しい」と言われた女性らしき人にも出会えず、とりあえず俺……いや俺たちは白い霧の中を歩き続けている。
でも、今は頼まれた事よりもせめて刹那だけでもどうにかしなければならない。
一人でいる場合と二人……しかも、一人は高熱を出している場合では事情が違い過ぎる。焦りばかりが俺の頭を横切った。
すると…………
「~~!」
「ん?」
ふと「今、誰かに呼ばれたような……?」とその場で歩みを止めた瞬間。
「……ちょっと」
その声は俺の目の前でかけられた。
「っ!」
あまりに目の前にいたため、俺は思わず後ろに後退してしまった。それくらい驚いたのだ。
本当に心臓に悪いからやめて欲しい……と言いたくなるタイミングで俺に声をかけたのは……白い霧の中でもよく分かる長く黒い髪が特徴的な少女。
……
「そこまで驚かなくても……」
「……」
なんて空自身は不貞腐れたような表情を見せたが、俺としては「いや、この状況で長髪の黒髪に声をかけられたら……」あのホラー映画に出てく来る『有名な黒髪長髪の女性』を連想してしまう。
「わっ、悪い……」
「……いい。突然話しかけた私も悪かったから」
そう言いながらも……空の声は暗い。
「それより……」
空は、俺の隣でぐったりしている刹那を見た。そして、すぐに辺りを見渡し始めた。
「…………」
「……何か心当たりでもあるのか?」
「たぶん、これはカードの力と『他の力』が合わさって出来上がった現象じゃないか……と思う」
「そうか」
内心「やっぱりか」とため息とともに言いたい気分だ。ただそれくらい造作もなく出来る気はしていた。それくらいこの『カードの力』はすごいのだ。
しかし、この状況が『カードによって作られた』のであれば、このまま歩き続けても刹那の家に着くことはおろか、刹那を休ませられる場所すらたどり着く事は出来ないという事をなるのだろう。
「刹那。悪い、ちょっとの間ここで待っていてくれ」
俺はそう言いながら那を地面に寝かせ、上着を被せた。
「そもそも『鯨座』の由来はなんだ? 俺としては『鯨』自体にそんなに狂暴なイメージ出来ないが……」
でも、こういった状況を作り上げている時点で俺の認識を改めるべきだろう。
「たぶん……あなたが考えている『鯨』と『鯨座』のは違う……と思う。そもそも『鯨座』の元になったのは、生け贄になったお姫様を襲うために召還された化け鯨だから」
「化け『鯨』ってなんだ?」
正直『鯨』自体かなり大きい。種類によってはそれだけでも十分『化け物』と呼んでもいいほどだと思う。
「うん。動物の鯨とは違って、鯨座のモチーフになったのは、爪のある前足とイルカの様な胴体と尾を持つ……例えるならアザラシが変形した様な怪物なんだよ」
「…………」
俺としては「なるほど……」と言いたいところだが、残念ながら今から、空から説明を受けたが、上手く連想出来そうにない。
この簡単に連想が出来ない『想像上の産物』とも言える簡単に肯定出来そうに存在を人々は『怪物』と呼ぶのだと……感じた。
「……っ!」
「誰?」
ふとそんな事を考えている間に、何やら空以外の『別』の視線に気がついた。どうやら空もその視線に気づいた様だ―――。
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