第94話 新入学…… (7)

 まあ、北里めぐみから足を踏んづけられた和の口からは自然と。


「うぎゃ、あああっ! い、痛い──!」


 と、絶叫がお約束の通りで放たれる。


 放たれると同時に、和の絶叫は教室内に響き渡るから。


 これも自然と担任の教師である、八重田香里先生のルージュで濡れた艶やかな唇が開き。先ずは、「え、えぇ~と、誰でしたっけぇ~?」と、慌てふためきながらの声と。


〈パラパラ〉


 と、いった感じで出席簿を慌てながら、ページを開く音が聞こえてきたのだ。


 でッ、少し間が空けば、八重田香里先生の口から再度。


「お、大田君~。ど、どうしたのですか~? 急に大きな声を出して~。何か大変な事が起きたのですか~?」


 相変わらず慌てふためき動揺をしている八重田香里先生ではあるのだが。取り敢えず、急に絶叫を上げた和に、何か大変なことが起きたのか? と、訊ねたのだよ。


 う~ん、でもね、中身おじさん和は、流石に幼馴染に足を踏まれたから、痛さの余り大袈裟に声を出して叫んでしまったとも言えず。


 起立──!


 礼──!


 ではないが?


 自身の座っている籍を立ち、担任の八重田香里先生へと。


「すいません……。僕自身が座っている椅子の足に、自分の足を踏まれてしまいました。本当に申し訳ございません」


 と、深々と頭を下げ謝罪をしたのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る