エピローグ
三年後 ~物語は終わらない
今日から大学も冬休みだ。
そんな訳で一度目覚めて時計を見た後、私は再び布団を被る。
睡眠こそ我が快楽、その信念は変わらない。
しかし……
「遙さん、朝です。朝食が出来ましたよ」
そんな声が私を起こしにかかる。
『ごめん、後で食べる』
身体を動かすと目覚めてしまうので魔法音声で対応。
百合亜さんには悪いけれど眠れる時は睡眠優先だ。
「やっぱり起きないでしょ、遙」
「そうですね、でも今日から冬休みですし、起こさなくてもいいんじゃないかと」
「甘いよ百合亜、こういう時はこうやるの!」
どさっ、と身体の上に重さがかかる。
窒息まではいかないが身体の固化症状も少々。
「こら
「ちなみに百合亜も一緒だよ、さあどうだ!」
おいそれちょっと待て。
魔力走査をかけると確かに布団の上には二人分の気配。
一人はポニテで、もう一人は百合亜さん……カキーン!
固化症状(中)、辛うじて魔法詠唱可能な固化状態だ。
『
何とか一回で固化は解除される。
でももう目が覚めてしまった。
起きるしかないか。
「そこの二人、起きるから退いてくれ!」
「やっぱり百合亜がいるとちゃんと起きるよな」
「そこの
仕方無くベッドから出てリビングへ。
リビングでは既に花梨先輩、壁、
「沙羅先輩は?」
「研究室。朝早く出ていった」
「まだ三年なのに早いよな」
「もう研究課題が出ていますからね」
そう、あの時代の面子のほとんどがここに集まってしまっている。
何故こうなった、そう言いたいのは私の方だ。
今年の春、日本最難関の某大学に無事合格した後、花梨先輩から連絡があった。
「東京に来るならちょうどいいマンションがありますわ。学校から近くて便利な場所ですし家賃も安いです。何なら紹介しましょうか」
その悪魔の台詞につい頷いてしまったのが敗因だ。
現地に行ってみたら都心駅の超高級高層マンション。
エレベーターに押し込まれ逃げる暇も無く到着したある階の玄関ドア。
開けたところで見覚えのある顔がゴロゴロいたりした訳だ。
「あ、満員のようだから帰ります」
「甘い!」
壁に捕まった。
「まあ入れや」
空間移動魔法でも逃げられないよう、花梨先輩が魔法でガードをかけている。
そんな訳で無理矢理超高級マンションの無茶苦茶広い部屋に案内された訳だ。
「私のお兄ちゃんの名義で、この階にある三部屋全部を買ってあるの。だから使い放題なんだよ」
「花梨先輩、まさかと思いますが名義は藤代遙になっているんですか」
「うん、お兄ちゃんの」
おいおいおいおい。
「こんな場所、共益費も積み立ても税金だって凄くかかるじゃ無いですか!」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん名義の色々な配当だけで充分足りるから」
私の名義で何をやっているんだ、花梨先輩。
まあ厳密には私の名義では無く、私の偽名の名義なのだけれども。
「それにちゃんと皆の分の個室も作ってあるからね。空間曲げてリビング同士を行き来出来る様になっているし」
さいですか、はい。
そんな訳で無理矢理ここのマンションで皆さんと共同生活になってしまった訳だ。
ちなみに全員大学が同じ訳で無く、ポニテや壁、小木津先輩は別の私立大学だ。
「国立より私立大規模大学の方が授業ごまかせるしね。遊びにちょうどいいし」
「でもなかなかこれはという物件はいないよな。結構飲み会も出ているのだが」
「今まで出会ったレベルなら遙にたかった方がましだよね、実際」
おいおい壁とポニテ、なんという事を言う!
でもまあそんな感じでずるずると、集団生活を続けてしまっている訳だ。
今日の朝食はソーセージ、目玉焼き、サラダ、味噌汁とご飯。
「いただきます」
何となく皆でそう言い合って食べ始める。
「今日はソーセージがこだわりの逸品だよ。埼玉の日高まで行って買ってきたんだ」
「サイ●クハムか。でもどうせ魔法移動だろ」
「当然じゃない、電車代勿体ないし」
「あ、でもこのソーセージ、確かに美味しい」
本当だ、確かに肉肉しくて美味しい。
困った事に最近この生活に慣れきってしまっている自分がいたりする。
大学を卒業したら今度こそ離ればなれになるのかな。
そうなるのが正しいと思いつつ寂しいなと思ったりもする。
我ながらおかしくなっているのはわかっているけれど。
「今日は遙、何か予定があるの?」
「今日はFXも休みだからさ、思い切り惰眠を貪る予定」
「何なら添い寝してあげようか、それとも百合亜の方がいいかな?」
「冗談はやめてくれ、頼むから」
そこで
「私なら妹だから添い寝しても問題無いよね、お兄ちゃん」
「妹ってのはあくまで前世!」
そんな感じで今日という日も幕をあける。
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