牛鬼対策訓練中
そんな訳で食事後の浜は魔法ブートキャンプ状態になる。
「
「
何処かで聞いたような必殺技が聞こえてくる。
「めぐりあう奇跡よ!」
「つながる魔法よ!」
「育まれし幸せよ!」
「今私たちの手に!」
『●●●●●・エクストリーム・レインボー!』
どこかで聞いたような台詞まで。
何か頭痛を覚えたところで怪しい物を抱えている佐和さんを発見。
嫌な予感がしたので質問してみる。
「佐和さん、そのデカブツは?」
佐和さんはバレル部分がロケット砲のように肥大化したハンドガンを抱えてにやりと笑った。
「こつこつ集めた砂鉄で作った必殺技用の魔道具だ」
「参考までにどんな技だ?」
「『ティロ・フィ●ーレ』と叫んだ後この銃をぶっ放す!。どうだ、魔法少女らしくていいだろう」
おいおいちょっと待った。
「色々問題無いか、その技」
「今の私では
いや、それはいいから。
「教官、質問です」
教官じゃないやい、と思いつつ振り返る。
「どうしました、清花先輩?」
「私の魔法は生活魔法ばかりで、攻撃魔法は持っていないんですけれど」
「先輩の
「本当ですか」
「なんなら海目がけて放って下さい。念の為百メートルくらい先に」
「なら
どどーん!
高さ十メートル直径三メートルくらいの氷柱が出現した。
「やりすぎです、消して消して」
「
無事氷柱は消えた。
でも付近がわっと怪しい水蒸気に覆われた。
よく見ると一部海面が沸騰しているような……
「下手な攻撃魔法よりよっぽど強力です。ですから敵相手以外にはあんなパワー出さないで下さい!」
「はーい」
ああ無意味に自然を破壊してしまった。
私は煮えた魚が浮いている光景から目を背ける。
「教官! 質問です」
また背後から声がかかった。
「教官じゃないって! で、何ですか」
「
「エネルギーは速度の二乗と重さで大きくなります。ですのでまず速度を稼ぐ事を狙った方がいいです。ですので敵に到達するのに充分な大きさの槍が出来たのなら、次は風魔法を加えて加速させる練習をするといいと思います」
「はーい、ありがとー」
はあ。
今回私は花梨先輩に『攻撃禁止、防御専念』と言われている。
攻撃魔法に慣れていない皆さんを中心に自信を付けさせたいそうだ。
そんな理由でD班二年生も攻撃は指示するまで控え目にという事になっている。
でも大丈夫なのだろうか。
まあ花梨先輩の事だから大丈夫だという自信があるのだろうけれど。
そんな訳で専ら現在の仕事は質問受け付けと指導だったりする。
なんで一年生がそんな事をしなければならないんだ!
「大丈夫ですか、遙さん」
気づくと前に百合亜さんがいた。
「何か疲れた顔をしていますけれど、休みますか」
「いや大丈夫」
「ごめんなさい、私達が色々講習だとかやらせてしまって」
申し訳なさそうに頭を下げる百合亜さん。
「いや、百合亜さんのせいじゃない。これは多分、花梨先輩あたりが最初から企んでいたんだと思う」
絶対そうにちがいない。
証拠は無いが自信を持って言える。
「そう言えば遙さん、花梨先輩や佐和さんとよく話していますよね」
「どっちも前世で色々因縁があった訳でさ。天敵と悪友みたいなものかな」
「天敵って、遙さんの敵って魔物ですよね」
「本来はそうなんだけれどさ。花梨先輩の存在自体がある意味私の天敵みたいなものなんだ」
百合亜さん、首を傾げる。
まあわからないよな。
花梨先輩は血縁上は私の妹で、魔術的には私に施された改造措置の完成版で、そして現世では私をこの研究会に引っ張り込んだ黒幕だ。
これをひっくるめるとやっぱり『天敵』というのが妥当だろう。
「花梨先輩は時々遙さんに甘えている感じですけれど、もし恋愛的に好きだとかあれば……」
「無い無い! 断じて無い!」
そこは明確に否定する。
「花梨先輩はあくまで天敵で、ついでに佐和さんは前世での悪友! それだけだ。だいたい私の女性恐怖症は知っているだろ。今は大分ましになってきたけれどさ」
「そうですけれど」
「ここの研究会で一番話していて楽なのは、まあ元同僚という意味では佐和さんだけれどさ。アレは前世での関係上女の子と意識出来ない。何せ中身をよく知っているから。アレ以外では百合亜さんが一番話していて楽かな。付き合いも長いしさ」
「えっ……」
百合亜さん、何故かうつむく。
何か悪い事言ったかな。
「遙! 質問一件!」
その声に振り返ると英美里さんだった。
「何だ?」
「電撃を更に確実に相手にヒットさせるにはどうすればいい?」
「電撃を受けるアンテナみたいなものを作ればいい。槍を投げてもいいし氷魔法で作ってもいい。電気を通すアンテナ状のものがあれば電撃魔法で狙いやすい」
「わかった」
さて百合亜さん、と振り返ると既に姿が無かった。
何か申し訳無い事をしたな。
後で謝っておこう。
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