第十五話 対戦! 妖怪牛鬼!

襲撃の公表

「さて、突然ですが皆様にお知らせしておく事があります」

 朝食の前。

 全員が砂浜に座っている前で、花梨先輩が全員に対して話しかける。


「昨日夜、この島の反対側の崖下に魔物の兆候が確認されました。確認した結果、今夜の夜中過ぎに魔物と化して、このキャンプ地に襲来してくる可能性が高いと判断されました」

 周りがざわめく。

 一年生だけでなく二年生以上もだ。


「二年生以上の方は夏合宿最終日に襲ってくる妖怪の事を御存知だと思います。ですが今回は例年と比べ、妖怪が強力に成長している模様です。ですので緊急対処訓練は取りやめ、全員で待機した上で戦闘を行うこととなりました」

 ざわめきは一層大きくなる。


「では敵魔物の概要及び戦闘計画について沙羅さんの方からお願いします」

 沙羅先輩が立ち上がる。

「例年襲ってくる魔物は牛鬼と呼ばれる妖怪だ。形は牛の頭と胴体を持った蜘蛛だと思って貰えばいい。海から現れて人を海中に引っ張り込んだり口やツノで攻撃したりする魔物だ。

 ただし今回は例年以上の魔力を確認している。例年の魔物は接近攻撃しかしてこなかったが、今回は遠距離攻撃も使ってくる可能性が高い。また飛行する可能性もあるので例年と同じ作戦は通用しない」


 おいおいおい。

 でも確かにあの魔力は魔城の中隊長並みかそれ以上だ。

 それくらいはする可能性もあるだろう。


「しかしこちらが逃げたなら、牛鬼は他の犠牲者を求め、隣の島等を襲う事が充分に考えられる。従ってなんとしてでもここで倒す必要がある」

 ざわざわは一層大きくなる。

 そりゃそうだ。

 そんな魔物と戦わなければならないなんて覚悟を決めている奴なんていない。


「そんな訳で作戦としては出来るだけ安全かつ確実に牛鬼を倒す手段を取る。

  ① まず花梨の空間魔法で敵を固定し、逃走不可能な状態にする。

  ② 次に一年の遙君の魔法でこちらの攻撃だけを通す防護壁を前面に展開する。

  ③ 更に念の為、敵が遠距離攻撃を放った際は私の盾魔法で弾き返す。

 そこで他の方は牛鬼に対し、遠距離攻撃魔法で対処して欲しい。幸い牛鬼は水魔法以外のほぼ全魔法が効く筈だ。

 なお花梨の魔力も遙君の魔力も無限では無い。出来るだけ強力な攻撃魔法を集中して放ち、短時間で牛鬼を殲滅する必要がある。

 幸い敵襲予定までは約十五時間ある。本日の午前中は各自遠距離攻撃魔法の練習をして欲しい。なお牛鬼は五十メートルの位置に固定するつもりだが、場合により距離は前後する可能性がある。その辺を各自考慮して訓練して欲しい。以上だ」


「そんな訳で本日は午前中が各自訓練、午後は魔力回復のための休憩時間とします。夕方から監視可能な人員で交代して魔物を監視し、動き始めた時点でこの場所に集合、戦闘態勢に移る予定です。宜しくお願いします。

 それでは朝食にします。いただきます」


 おいおい、この重い雰囲気で朝食開始かよ。

 さすがにいただきますの唱和の声が小さかった。

 それでもちょっとだけ間が空いたが、おかずを取る勢いはいつも通りかそれ以上。

 大多数は覚悟を決めたかやけっぱちか、この場は食べる事に集中する模様だ。

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