ノー ロジカル・エレメンツ

いせやじろう

プロローグ



 立ち込める、砂埃。


 光の線がハウスダストに反射しているせいで妙に際立ってみえる。


 大きな衝撃が音を立てて体をつらいて、オレは硬く目を瞑った。


 徐々に徐々に瞼を持ち上げ、目を開けた先には、普段の穏やかな電車内では想像できないような光景が広がっていて。


 オレは一瞬たじろいで、目を見開いた。


 瞬間―


「魔法能力者よ!」


「やめて!魔法能力者は来ないで!」


「あああ、ごめんなさい。せっかく助けてくれたのにっ。でも魔法能力者は……、無理なんです!!!」


 包み込む悲鳴と罵声の嵐。


 それらの音が、まだ整理のついていない脳に直接伝わっていく。


 その根源がどんどん遠ざかり、気が付けば一人、電車の先頭車両に取り残されていた。


 オレは眼球の渇きなど気にも留めず、目の前に広がる光景を凝視した。


 そこには間違えなく存在していたのだ。


 扉で仕切られていた電車の運転席。

 スマートフォンを見つめる女子高生。

 つり革を掴みながらなられない姿勢で居眠りをしている中年のサラリーマン。


 ただの日常の一ページがそこにあった。


 しかし、ヤツらがやってきてから瞬く間に日常は異常へと変容し、混沌が車内を包み込んだ。


 だが今はどうだろうか?

 先頭車両はおろか、テロリストの所在すら見受けられない。


 瞳に映るのは、青々とした晴天広がる空とボロボロになって荒廃した運転車両だけだ。


 オレ― 青山一颯あおやまいぶきは、人知れず息を吐いた。

 それから困ったように眉をひそめると、小刻みに震えている手の平を見つめた。


 そして―


「なんか……指からビーム、出たんですけどおおおお!」


 と、今世紀最大の声をあげた。



 青山一颯あおやまいぶき、16歳。











 突如、未開の力が目覚めました。









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ノー ロジカル・エレメンツ いせやじろう @Tobmal

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