第六話 兎と砂時計その7

「これはまた団体さんだな」


「数が多い、面倒くさい」


 グラウンドまで来た2人は空を見た、ヘリコプターが数機こちらへとやってくる。


「手伝うか?」


「大丈夫、お客様は座って聴いていて」


「解った」


 縁は鞄から折り畳み式の椅子を取り出して、その椅子に座った。


「さあ、演奏会を始めましょう」


 スファーリアはトライアングルを右手で軽く叩いた、すると空中に様々な楽器が現れた。


「おや?」


 縁に向かってくる楽器があった。


「おお、トランペットじゃないか」


 太陽の花を採取しに行った時、縁が使用したトランペット。

 また会えて嬉しいのか、音を鳴らしながら縁の周りをふわふわ浮いている。


「その楽器は縁君に会えて嬉しいのね」


「そうなのか?」


 縁は嬉しそうな音を出しているトランペットを見ている。


「縁君、音楽は生きているの、だから人の心を動かす」


「なるほど」


 ヘリコプターからロープを使って降下してくる部隊が。

 先程スファーリアが冥府へお帰り頂いた青年が言っていた精鋭部隊だろう。

 ヘリコプターは隊員を降下させるとその場から離れていった。


「演奏会の開始ね、先手必勝」


 スファーリアはトライアングルビーダーを構えて、敵の集団に突撃する!


「一人だと!? 撃て!」


 精鋭部隊は一斉にスファーリアに対して自動小銃で狙いを定め発砲した!


「ぬるいよ?」


 スファーリアは指揮棒を取り出して、音楽の指揮をするように銃弾を弾く!


「何!?」


「敵は音人のようです!」


「対亜人弾に切り替えろ!」


「突撃します!」


 精鋭部隊の数人がスファーリアに近接戦闘を仕掛けようと、ナイフを構えている。


「魔法くらい使ったら?」


 スファーリアはトライアングルビーダーで地面を叩いた、すると地震でも起きたように近接戦闘を仕掛けようした精鋭部隊達は尻餅をついた。

 その隙をスファーリアは見逃さず、トライアングルビーダーで確実に次々と急所を突いていく!


「統率がとれているね」


 スファーリアは手を休ませずに次々と精鋭部隊を次々とトライアングルビーダーで吹き飛ばす!


「第77部隊だ、対亜人増援を頼む!」


 隊員の一人が無線を使い応援要請をしている。


「貴方達の音が私に響くか試してあげる」


 スファーリアは精鋭部隊から距離をとり、目を閉じて相手の音を感じとろうとしている。


「装填しました!」


「よし、一斉射だ!」


 装填を完了した精鋭部隊が先程と同じようにスファーリアに一斉に発砲する。


「つまらない音」


 その言葉を発したスファーリアは既に空中に居た。

 スファーリアはトライアングルビーダーを精鋭部隊を指揮している人物に向かってぶん投げる!


「ぐぇ!?」


 トライアングルビーダーが顔に当たった人物はそのまま地面に倒れた。


「楽譜通りにしか弾けない人達は面白くないの」


 スファーリアはため息をして精鋭部隊を見ている。


「女のくせになめやがって!」


 部隊の統率を乱す隊員がスファーリアに向かって走り出した。


「仲良しごっこのマラカス、来て」


 浮いていたマラカスはスッと消えてスファーリアの手に収まった。


「死ねや!」


 シンプルにナイフを突き立てる精鋭部隊の隊員だが……


「私を殺せると思ってるの?」


 スファーリアはマラカスで襲いかかってくる男の喉元を素早くマラカスで突いた!


「……戦闘科の教師なめすぎじゃない?」


 スファーリアは周りに居る精鋭部隊を呆れた目で見ている。


「権力で好き勝手してきた奴らが血反吐を吐く程訓練したとは思えない」


 スファーリアは帽子を外した、浮いていたトランペットがスファーリアの近くへとやってくる。


「そこで死んでいる隊長が唯一人並みに訓練していたくらいかな?」


 帽子をトランペットに載せるスファーリア、トランペットは縁の元へと向かった。


「努力無し人をどうこう出来ると思っているのだろうな、権力に尻尾をふる楽譜から消したい音共が」


 スファーリアの目は殺気に満ちている。


「音楽会は中止だ、お前らに奏でるのは開幕と終幕の2音のみ」


 スファーリアは右手を軽く上げると、地面に刺さったトライアングルビーダーが彼女の元へとやってくる。


「フッ……世の中では私の行為は『イキってる』というらしいな」


 スファーリアは縁の方を見た、縁はジェスチャーで『さあ?』と答えた。


「しかしこの場に置いて世間や倫理観や常識の何もかも意味はない」


 トライアングルビーダーの矛先を精鋭部隊に向ける。


「意味を持たなくさせたのはお前達」


 トライアングルビーダーを構えるスファーリア、手加減はしないという気迫を出していた。


「あがけ、お前達の生きる音を見せてみろ」


 スファーリアは普段は見せないニヤリとした笑顔をしている。


「音色手向け演奏術『開幕』」


 スファーリアは自分の周りで浮いているトライアングルを右手で叩いた、リーンと高い音が辺りに響く。


「終わりを告げる音は心を判別するぞ?」


 その気迫に場の人間は空気な飲まれていた。


「相手にのまれるな!攻撃をするんだ!援護を待つんだ!」


 精鋭部隊の戦闘服を着た少年が声を上げた!

 その言葉に周りの隊員がハッとしている。


「ほう?」


 スファーリアは声を発した少年を興味津々に見た。


「ケッ! てめぇなんざに指図されなくても解ってるわボケ!」


「ガキは黙ってろ!」


 少年に対して暴言をあれよあれよと発する隊員達。


「グエ!」


「ガハァ!」


 よそ見している隊員に対してスファーリアがマラカスを投げたる、投げたマラカスは喉元に当たっていた。

 暴言を吐いた隊員達は白目を向いて倒れた。


「この程度で精鋭部隊……そうかそういう事か」


 スファーリアは敵を見定めるように見た。


「人間ここまで腐るものか、救いや止める者が居ないとこうなるか」


 スファーリアは鼻で笑って周りの人間達を見ている。


「さっきからブツブツうるせぇんだよ!」


 先程まで恐怖で動かなかった精鋭部隊が今更攻撃を再開。


「上層部もこんなのばっかりなんだろうな」


「ぐぇ!」


「ギャ!」


「ぶぇ!」


 トライアングルビーダーであっさりと返り討ちにするスファーリア。

 突如、空中に魔法陣が現れる。


「増援か?」


 スファーリアは魔法陣を見る、そこから現れたのは……


「ブオォォォォ!」


 象が出てきた、象は象はでも色々と改造されていた。


「やったぜ! ジャスティスエレファントだ!」


「やっちまえ! 正義の力を見せてやれ!」


 象の登場で湧き上がる隊員達。

 象は蛇の尻尾、ライオンの顔が別の場所にあったり、鷹の目ともう滅茶苦茶である。


「命すら弄ぶか」


 トライアングルビーダーを地面に刺して、スファーリアはすぐさま現れた象に向かってジャンプした!


「音式格闘演奏術、ピエソート・フィーネ」


 スファーリアの右手に音符が現れる。


「お前はもう従わなくていいんだ、安らかにその命を終わる」


 象に飛び付いたスファーリアは象の頭を優しく撫でた。


「パォーン……」


 象は一瞬で大人しくなり、涙を流しながらその巨体をゆっくり地面へと横たわった。

 作られた命は終わる事を喜ぶように死んでいる。


「おい、余興が過ぎないか?さっさと私を殺せる術を見せろ」


 スファーリアはため息をした。


「こ、このアマが!」


「ジャスティスジャッジメントをなめるな!」


 生き残りは三下しかいないらしい。


「お前達が凄い訳じゃないだろ、先程冥府へ旅立った男がお前達を『精鋭部隊』と言っていたが……」


 スファーリアはトライアングルビーダーが刺さってる場所まで戻る。


「『そいつにとっては精鋭部隊』に過ぎないというわけか」


 スファーリアはトライアングルビーダーを抜いた。


「言わせておけば! ジャスティスジャッジメントのスーパーロボットを見せてやる!」


「お、おい!? 奴らを呼ぶつもりか!?」


「うるせぇ! 正義は俺達にあるんだ!」


 三下らしい会話をする精鋭部隊だ。


「スーパージャスティスロボ! 助けてー!」


 いきなり大声で助けを呼んだ隊員、すると。


「こっちか」


 スファーリアが何かを感じとりその方向を向く……

 戦闘機が5機こちらへと向かって来る!


「トライアングル!」


 トライアングルが戦闘機の方向に現れた。


「落ちろ!」


 トライアングルビーダーでトライアングルを思いっきり叩いた。

 音の波動が戦闘機に襲いかかる!

 呆気なく墜落していく戦闘機。


「よし、あのまま行けば墜落地点には何もないな」


「で、終わりか?」


「ば、馬鹿な! ジャスティスロボが!」


 予想外の出来事に隊員が今更ざわつき始めた。

 アレが彼らの心の寄りどころだったのだろう。


「おそらくは合体ロボットなのだろうが……合体するまで待つと思うか?」


 当たり前の言葉を放つスファーリアだった。


「化け物が! だが……」


 隊員が何かを言いかけたが、スファーリアのトライアングルがほんのり光った!


「トライアングルの判別が終わったようだ」


 スファーリアはトライアングルに近寄り……


「音式手向け演奏術『終幕』」


 スファーリアはトライアングルを右手で叩き音を鳴らしす。

 リーンと高い音と共にその場に居た精鋭部隊の命は幕を閉じた。


 だが一人生きている人間が居た。


「は…は…」


 暴言を吐かれいた少年が這いつくばって逃げようとしていた。


「待ってそこの少年」


 スファーリアは優しく声をかけた。


「ヒィ!」


 少年は脅えきっていて、その場に伏せてしまった。


「君からは気高い音を感じた、話を聞きたい」


 スファーリアは少年に近寄る。


「……こ、殺される!」


 少年は震えていて話を出来る状況じゃない。


「お疲れ様」


 何時の間にか縁がスファーリアの近くに居た。

 縁はスファーリアの帽子をスファーリアに渡した。


「ありがとう」


 スファーリアは帽子をかぶる。


「少年よ、運が……」


 縁は何時ものセリフを言いかけたが。


「いや、君の生き様が今と将来を変えるぞ? 話してみるといい」


 縁はうずくまっている少年に近寄り、肩に手を置いた。

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