第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第一話 前説・幕開き 予定のお知らせと幻の国

 本格的に公式イベントのジャスティスジャッジメントが始まり、長谷川は荒野原といつも通りレアスナタを遊びに来ていた。

 

「今日はグリオード関連のイベント、それが終わったら荒野原さんが桜野学園に来てほしいって言ってたな」


 長谷川はプレイルームでメモ帳を開いて確認をしている。

 メモ帳を閉じてポケットにしまう長谷川。

 ゴーグルとシートベルトを装着してゴーグル越しに見えるスタートを押す。


「行くぜ! レアスナタの世界へ!」


 何時ものポーズをする長谷川はこの瞬間から縁となるのだ。


「さてと、ロビーに付いたけどもグリオード達の所にさっさと行かんとな……お? メールだ」


 長谷川はメールを確認するといずみから連絡が来ていた。

 内容は『宮殿の執務室からスタートするからいきなり来てもおっけーよ』と書いてあった。


「ならさっさと開始するか開始地点設定っと」


 縁はメニューを開いてフレンドの一覧を開く、そしてロールに参加するを選んだ。

 開始ボタンを押すと縁は光に包まれてロビーから消えた。


 執務室には麗華といずみが座っていた。


「おや、縁さんおはようございます」

「縁様、おはようございますわ」

「おはようございます」


 いずみは椅子に座りながら本を読んでいてメガネをクイッとした。

 その側で立っている麗華は優雅に頭を下げて縁も軽く頭を下げた後に近くの椅子に座る。


「ん? グリオードは?」

「グリオード様は別件で席を外しています」

「そうか、それで俺は何を手伝いすればいいんだ?」

「縁さん、簡単に説明しますね? 隣に出来た幻覚の国を滅ぼしに行きます」

「それは過激だな」

「私、隣にお邪魔して色々と調べてまいりまして、さっさと滅ぼす事にしました」

「付け加えるとほとんどの人間が幻影化していますが、王と側近の2人を除いてですね」

「王と側近?」

「隷属の神にに操られていますね」

「はぁ……また奴か」

「はい、困ったものですね」


 いずみは読んでいた本を閉じた、タイトルに『簡単攻略お隣の国!』と書かれている。


「あれ? もう1人の側近は?」

「その人がジャスティスジャッジメント関係の人物かと」

「なるほどな……てか麗華さんだけで何とかなるんじゃ?」

「操られて王様ごっこの夢遊びしている異世界の人間に……現実を突き付けたくなりまして、お呼びいたしました」

「俺はブレーキ役かよ」

「いえ、万が一神に出てこられたら私も苦戦すると思いまして、確実に崩壊させる選択をしました」

「なるほどな、んじゃさっさと崩壊させに行こうか」

「おや? 縁さんにしては好戦的ですね? どうしました?」

「人と待ち合わせしていてね」

「なるほど、ではささっと行きましょうか」


 その言葉を聞いて縁は、ウサミミカチューシャを外して人の怨念に犯され、白い姿が血まみれのようになった本来の姿になる。


「さ、幸せを届けに行こうか」

「お勉強を教えに出張ですね!」

「氷を作りに参りましょう」


 3人は実にいい笑顔をして立ち上がった。


「では、私が皆様を連れて行きましょう! 哀れな知識を持つ者へと導く道を開きたまえ!」


 いずみはは手を叩くと3人の下に魔法陣が現れて光に包まれ消えた。


「はいはい着きました、説明はいりませんよね?」

「必要だ」


 縁は目の前の王国を見た、建物はファンタジー世界にあるような加工された石の家と国の承知であろう城があった。


「あ、説明してませんでしたか?」

「ああ」

「所詮は幻ですし消える事ますので必要は無いのでは?」


 麗華を先頭に堂々と敵国へ入っていく、辺りには人が居るのだが麗華達は見向きもされていない。


「ん? あれは奴隷商人か? この国は合法なのか」

「らしいですよ? まさに夢幻です」

「倫理観どうなってるんだ?」

「ちなみにこの国の王様はどや顔しながら可愛い女性の奴隷を買って『救えたか』みたいな事言ってますね」

「……なんだかなぁ、奴隷売買を許しているって事はさ? 人様の縁を滅茶苦茶る奴が救えたとほざいたんだろ?」

「ええそうです、経済の理由で許可してるとか」

「ある程度は国として仕方ないのでしょうね、国としてどうかと思いますが」


 麗華はため息をすると雪がちらちらと降ってくる。


「素直に殴り込みします、用事が有るのはこの国の王様だけなんで」

「んじゃ、乗り込みますか」


 3人は城へと歩く。


「ん?」


 城を警備していた兵士が縁達に気付いた。


「お疲れ様です」

「ああ、お疲れ様」


 縁が頭を軽く下げて挨拶をすると、兵士は違和感無く挨拶を返した。


「縁様今のは?」

「代わりに説明分しましょう! 『運が良かった』んですよ」

「いずみ、説明になってるかそれ?」

「ふふ……では今度お茶の時間の時にゆっくりと」


 縁が運が良かったおかげで何事も無く目当ての部屋前までやってきた。


「お邪魔いたします、殴り込みにきました」

「絆と仲良く出来そうだ」


 ドアをケリ破り破る麗華を見て縁は苦笑いをした。


「何だお前達は?」


 部屋の中には談笑中の男女が居て、男性が女性に囲まれていた。

 見るからに若い男性だが風格があるように見える、黒い髪に整った顔と軽装備でマントを羽織っている。

 三人は部屋の中に居る人物達を見た、縁は軽くため息をしいずみはウキウキしながら本を開いていた。

 そして麗華は赤い髪の少女と目線があってその少女は睨むように麗華を見る。

 その視線に麗華は一瞬楽しそうにニヤリと笑った。


「ユウキ様、あの者は隣のグリオシファンの!」

「ほう? 騒々しいが直接和平でも結びに来たのか?」


 高そうな布切れ一枚で金髪グラマーな女性が麗華を指差す、ユウキと呼ばれた男は余裕綽々な態度を崩さない。


「平和的な解決? もう遅いのでは?」

「小国ながらあれだけの悪事をよくできた物だ、本来なら滅んで当然だが……どうだ? 我が序列に加われば俺の力で他の国に口添えするが?」

「流石ですユウキ様! 非道な敵にすら手を差し伸べるとは」

「フッ、そうでもないさリシア」


 全力でよいしょするリシアにユウキは頭を撫でた。


「えー! このオバサンが序列に加わるのー? リスティはどう思う?」

「ベル、本当の事を言ってはダメよ!」


 髪の色が違って顔が似ている姉妹が麗華を煽ってくるが麗華は平然としていた。


「断ると?」

「ツヤナシダン王国の悲劇の様になる」

「ここより南にあった滅んだ王国ですね? 全てを焼き払われたとか」

「そうだ、断るとお前の国もそうなるが」

「断ります」


 麗華は即答した。


「貴様! ユウキ様のご好意を!」


 銀髪で唯一武器を持っていた女性が武器を抜こうとする!


「落ち着け、クーネ」

「はっ!」


 ユウキの言葉で武器を抜くのを止めた。


「よく考えろ、国を滅ぼされたくはないだろ? 序列に加わるんだ!」


 端から見れば一人で盛り上がっているユウキ、その状況をニヤニヤしながら見ているユウキの側近達。


「楽しみにしていますよ、殺し合いをしましょう?」

「何を馬鹿な事――」

「……ですが我慢の限界です、早速殺し合いをしましょう」


 麗華は今まで一言も喋っていない赤い髪の少女を氷漬けにした!


「俺も便乗するか」


 縁は指を鳴らすと双子と武器を持っていた女性が真実を突き付けられた顔をした後、幻だった様にうっすらと消えた。


「ルナ!? クーネ!? ベル!? リスティ!?」


 ユウキはやっと表情を崩してビックリし始めた。


「恐怖による交渉ならこれくらいはしたらどうです?」

「この部屋は魔法結界が有るはずなのに!? それに他の3人は何処に!?」


 リシア少々半狂乱になっている。


「ユウキでしたか? これが暴力による交渉ですよ? こんなの初歩過ぎますが」

「こ、これはいったい」

「威張っていた割には弱いんですね?」


 麗華は疲れきったため息をしている。


「お、麗華さん私が変わりますよ?」 

「お願いいたします、馬鹿の相手は疲れましたから少し休みます」


 縁は鞄から飲み物を取り出して麗華に渡した。


「いやー! スズキユウキ君! 私は君とお話がしたかったんですよ! あ、自己紹介が遅くなりした、私は博識いずみといいまして神様から説明と解説の加護というのを貰っています、あなた達の事は全て知ってますよ!」


 今まで我慢していたいずみは早口でキラキラした目でユウキに話し掛けている。


「ま、それよりユウキ君に事実確認がしたくてですね!? この国が幻想で出来てるって知ってますか? 自分が神のいいように扱われてるのはご存知でしょうか?」


 いずみの怒涛の質問にユウキはビックリした顔をして動かないでいる。


「ちなみにユウキ君、記録媒体で自分の居た世界……地球の知識を使っているようですが、地域や場所によっては時代遅れですよ? 現に麗華さんの国には人型兵器、平たく言えばロボットが防衛してもおかしくないレベルの科学力を持ってるんですよ」

「なっ!?」

「ああ、喋らなくてもいいですよ、今知ったのは知ってますから! さてはてお勉強の時間は終わりですよ、麗華さんにまかせましょ」

「かっかっか! お前面白いな!」


 麗華が氷漬けにした赤い少女が氷漬けを破った!


「ルナ!?」

「ユウキみたいな雑魚じゃなくオレと遊ぼうぜ?」


 ルナはニコニコしながら麗華に近寄っていく。


「ルナ! ユウキ様に――」

「イエスウーマンは黙ってろや! 虫唾が走る!」

「え!?」

「めんどくせぇから喋るな! いちいち説明しねぇとダメか!? なあ!? 気い聞かせて少しは黙ってろや! お前らはバカの一つ覚えで女の頭を直ぐに撫でる撫でられるをやってろや! 惚れる女も女だし男も男だわなぁ!? ジャスティスジャッジメントとの契約が無ければこんな事に居たくねーんだよ! ゴミ共が!」


 ルナの怒涛の言葉責めにユウキとリシアは呆気をとられている。


「横槍失礼します、幻覚で王様ごっこしていたので知らなかったから仕方ないのでは? 愚かには変わりませんが」

「あん!? ……あーなるほどな、確かにそれを考慮してなかったな」


 ルナはいずみを睨むがその言葉を聞いて頷き始めた。


「あんた説明上手そうだから頼んでもいいか?」

「お引き受けしましょう! お馬鹿さんでもわかるように簡単に説明しますね」


 ルナの言葉にウキウキないずみ。


「スズキユウキ君、君がこの世界に来たのは仕組まれたもので、君が王様になるように運命は流れを変えましたそして今、世界はジャスティスジャッジメントと呼ばれる組織の脅威があちこちで起きています、かなりの情報制限された中でお飾りの王様を頑張っていたようですね? で、言われるままに侵略や防衛をしていた訳ですよ!」

「博識様、一言でお願いします」

「常識考えてたかだか十代中盤、後半の人間が国を仕切る事態無理なんですよ、裏が有ると考えませんでした?」

「さて茶番は終わりにしましょうか」


 麗華は指を鳴らしてリシアとユウキを氷漬けにした!


「同じ悪魔として名前を聞いておきたい」

「白眩身麗華といいます」

「ジャスティスジャッジメント信仰推進委員会書記、ルナ」


 ルナの足元に魔法陣が現れて光り放ちルナを包んだ。


「まあジャスティスジャッジメントはもう潮時だろう、本当の名前は相思相愛の悪魔のルナ・シア・ソウって名前だ」


 悪魔らしく少々露出が過激な姿と先程の幼い容姿ではなく、大人の女性へと姿を変える。


「どうだい? 俺と戦争するか?」

「ふ……ふふ、そんな誘われ方したら……」

 

 ルナはそう言うと外へ出て行って、麗華は下を向いて震えている。


「断れませんわ!」


 まるで子供におもちゃを渡したような目をしている麗華はルナを追って外へ向かった。


「これは面白くなりそうですね!」


 いずみは何時の間にか手に持っていた世界戦闘記録というタイトルの本を大事に抱えて外に向かう。


「異世界の人間よ、操り人形ではなく生きて自分の身の丈にあう幸せを探すんだ」


 縁は軽く手を叩くと氷漬けにされた2人は徐々に薄っすら消えていった。

 軽くため息下後に縁も外に向かう。

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