第六話 兎と砂時計その4

「椰重ちゃんが負傷して搬送された」


 スファーリアの目は殺意に満ちていた。


「ははは、搬送!?」


 色鳥は動揺を隠せないようで、一人てんやわんやしている。


「これ病院の地図」


 スファーリアは紙を色鳥に渡した。


「よし、行ってくる!」


 色鳥は紙を見た後、忍者のように壁を蹴り、執務室の上に付いている窓から出て行った。


「縁君」


 スファーリアは縁を見た。


「どうした?」


「病院の医療品の在庫が無くなりそうなの、一緒に来てくれないかしら?」


「わかった」


 縁は立ち上がり、いずみが作った資料を鞄に入れた。


「後、ここにジャスティスジャッジメントが向かってくる、価値の無い音が近付いてくる」


 スファーリアは無表情だったが、言葉に並々ならぬ殺意がこもっていた。


「グリオード、防衛の準備をしましょう」


 いずみはグリオードを見たが……


「あら? グリオード?」


 グリオードは居なかった。


「グリオード様は国民の非難誘導に行きました、お話なら私が」


 麗華はいずみを見る。


「隠し通路でしょうか?ふふ、流石賞賛の加護を持っている人ですね、行動が早い」


 いずみはニヤリと笑いながら、グリオードが座っていた椅子を見た。


「スファーリアさん、敵の数はわかるか?」


 陣英は立ち上がり、側に置いてあった装備を身に付け始める。


「ごめんなさい、そこまでは正確にわからないけど、大群」


「お兄様、お義理姉様と一緒に行って下さい」


 絆は立ち上がり、傘を手に持った。


「私も久しぶりに戦いましょう!お馬鹿さん達の意見も聞きたいですし」


 いずみは右手でパチンと指を鳴らした、すると空中に本が現れた。

 本のタイトルは『私の質問』と書いてある。


「縁君、付いて来て」


「ああ」


 スファーリアは小さいトライアングルを取り出して、トライアングルビーダーで叩きトライアングルを鳴らした。

 スファーリアと縁は音符に包まれて消えていく。



「着いた」


 一瞬で目的地に着いたようだ。


「すげー移動方法だな」


「運で移動する貴方にも凄いけどね」


 縁をジト目で見るスファーリア。


「いやはや」


 縁は辺りを見回す、目の前にはそこそこデカい病院が建っていて、他には木と舗装された道しかない。


「あれ? この病院は……」


 縁は確認するように辺りを見回している。


「久しぶりだな!縁!」


 病院内からアフロ頭でサングラスをし、白衣を着ている男性がやってきた。


「アフロ先生!」


 縁はそのアフロ頭の男性に近寄る。


「再開を喜びたいが、注文したい物をリストにしておいた」


 アフロ頭の男性は封筒を縁に渡した。


「わかりました」


 縁は封筒を鞄に締まう。


「俺の人脈を使って早めに納品させます」


「助かるぜ」


 アフロ頭の男性は安心した表情をしている。


「先生の病院もジャスティスジャッジメントの被害に?」


「ああ、医療品の在庫がやられた、隠していたのは大丈夫だったけどな」


 アフロ頭の男性は深い溜め息をした。


「しかし、縁がスファーリア先生と知り合いでだったとは」


「それはこっちのセリフですよ」


 縁はチラッとスファーリアを見る。


「私は桜野学園に保険医として勤務している、本業はこっちだがな」


 アフロ頭の男性は少々めんどくさそうに病院を指差した。


「っと、まだまだ患者が居るんだ、また今度ゆっくり話そう」


 アフロ頭の男性は病院内へ歩きながら右手を上げた。


「はい」


 縁は去っていく男性に軽く頭を下げる。


「縁君、アフロ先生と知り合いだったのね」


 スファーリアはタイミングをはかり縁に話しかけた。


「ああ、このウサミミを作ってくれたのも先生だった」


 縁は自分の頭に付けているウサミミカチューシャを触った。


「縁君の力を抑えるアイテム作るとか、アフロ先生何者?」


 スファーリアは縁のウサミミを見る。


「『アフロに出来ない事は無い』ってさ」


 縁は首を振った。


「なんじゃそりゃ」


 スファーリアは呆れた顔をして溜め息をしている。


「アフロ先生は自分の事話さないしな、スファーリアさんはアフロ先生をどれくらい知ってるの?」


 縁は首を傾げた。


「教師としての付き合いくらいしかないよ?」


 スファーリアも首を傾げる。


「そっか、真相はアフロのみ知るって奴か」


 縁はドヤ顔で言った。


「何言ってんの」


 スファーリアはジト目で縁を見ている。


「そうだ、色鳥はちゃんと来たのかな?」


「私の音式移動音楽演奏術の一つ『レゾリュマン・エスピランド』より速いとは思わない」


スファーリアはえっへんと腰に手を当てて、自信に満ちた顔をしている。


「何か凄そうな名前だな」


 縁は苦笑いをして自信満々のスファーリアを見た。


「ふふん、そうでしょ」


 縁とスファーリアは病院に入り、受け付けをすませ色鳥が居るかもしれない病室へと向かった。

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