第七話 演目 つまらないおと

「……」

「ひでぇな」


 2人は桜野学園の校門にやってきたようだ。

 校舎は所々崩れ落ち、桜の木は折れ、苦しんでいる生徒が所々にうずくまっている。


「ひゃははは! 優秀な人材ばかりと聞いていたが、どいつもこいつも雑魚ばかりじゃないか! センコーも逃げるばかりだ!」


 あきらかに生徒じゃない青年が大笑いをしていた。

 その青年は青い制服を着ていて、胸元に剣を掲げてる男の剣士のバッチを付けている。

 髪は金髪で耳にピアスをして人生なめまくったオーラを放っていた。


「縁君、生徒の治療をお願い」

「ああ」

 

 スファーリアはトライアングルビーダーを右手で持ち、トライアングルを左手で左肩に担いだ。

 縁は走りながらウサミミカチューシャを外して何時もの神様モードになる。

 そして鞄から兎のマークの救急箱を取り出して治療を開始した。


「んー? なんだぁ?」


 男は生徒を治療をしている縁を見つけた。


「……絶滅遅延演奏術」


 スファーリアは男に近寄ってきトライアングルを地面に突き刺した!


「おーおー! 先生がお帰りなさったか!? 学園をほっといて何処行ってたんでしかぁ? 男とデートですかぁ?」

「遺言はいい終わった?」

「ぶふぉ! すげーよこの人! イキってるよ! 遺言はいい終わった? キリッ! だよ!」


 男は地面に刺さったトライアングルを見て大爆笑している。


「覚悟はいいのね?」

「おお! 怖い怖い! そこらで苦しんでいる生徒の真似してやるよ! 先生ー! 怖いよー! ってか!」


 地面に刺したトライアングルを右手に持ったトライアングルビーダーで叩くと高い音が辺りに響いた。


「終わりね」


 右手でトライアングルビーダーを肩で担いだスファーリアは男のほぼ真ん前まで歩いてきた。


「どうしたの? かかってこないの? ここはもう『学校じゃなくて戦場』なんだよ?」

「ハッ! 何を意味――」


 男が挑発しようとした時、スファーリアは右手に持っていたトライアングルビーダーで素早く相手のスネを狙った、軽やかな棒裁きである。


「喋る事よりやる事があるでしょ? 殺し合いは?」

「ガッ!? て、テメェ!」


 男は足の痛みに耐えきれずに足を押さえながらしゃがみこんだ。


「ジャスティスジャッジメントって何でこんな奴らばかりなの? 弱すぎじゃない」


 スファーリアはトライアングルビーダーの矛先を青年に向けた。


「ほら、グズグズしないで殺し合いをしましょうよ? まさか今になって私との実力差に気付いた? 遅すぎる」

「実力差だぁ!? 」

「あのね? さっきも言ったけど学校じゃなくて戦場なの、もうここは『教える場所』じゃないでしょ!?」


 スファーリアはトライアングルビーダーを地面にぶっさす!

 男は焦って何かを確認しているようで小型の端末を右手でバレないように操作していた。


「ほら、チャンスをあげるから頑張って?」


 スファーリアはトライアングルビーダーに寄りかかった。


「ほらどうしたの? 大好きな殺し合いをすればいいでしょ? まさか恐怖したの?」

「な、なめやがって!」


 怒りに身を任せ立ち上がる男は脂汗を流して苦痛の表情をしている。

 しかし何かを思い出したかのようにニヤリと笑い始めた。


「へっ! 逃げ出しや奴らは今頃――」


 他にも仲間が居るらしくそれを口にした男だったが。


「もう別の教師が対処したんだけど何時の話をしているの? そしてその話をしてこの状況が変わるの? てか一度警戒態勢に入った場所に再び襲撃ってバカでしょ」

「まあ何か目的があっての事だろうけどな」


 縁がスファーリアの近くに何時の間にか居た。


「縁君お疲れ様、ありがとう」

「あの生徒達さ、あまり怪我らしい怪我をしてなかったんだが? スファーリアさんが来たと言ったら学園の避難所に行ったよ」

「敵の性格を見破って自分達が生き延びる最善の選択をしたのね、実戦でやり遂げるとはね、私の生徒じゃないけど」


 スファーリアは生徒の行動を評価するように優しく笑った。


「生徒は生き延びる最善の策をした、それにすら気付いてないって可笑しいよ?」

「てか俺達は棒立ちで突っ立ってるのに何で仕掛けてこないのこの人」


 男は2人がお喋りをしている間はただ睨みつけて2人の話を聞いているだけ。


「簡単、本能では勝てないと解ってるけどプライドが許さないってヤツ」

「そして何か待ってるのか」

「て、テメェら! ベラベラと好き勝手言いやがって!」


 吠えるだけ吠えて何もしない男は自分の今置かれている状況をやっと理解しているようだ。


「桜野学園教師の緊急時の心得その7、生徒の生命が関わる緊急時、生徒を生命を守るための殺害を許可する」

「なるほど、この場においてスファーリアさんは人を殺そうが罪に問われないと」

「さて授業は終わり、死ね」


 スファーリアは寄りかかるのを止めて、地面に刺さっているトライアングルビーダーを右手で引き抜き肩に担いだ。


「なっ何を! お、俺はこんな所で死ぬ人間じゃねぇ!」


 青年は魂を叫びのように言い放つと同時にヘリコプターの音が聞こえてきた。


「こ、この音は!?」


 今まで生きた心地がしなかった男の顔に生気が満ち、よろけながらも立ち上がりヘリコプターの音がする方向を見ている。


「へっへっへ、テメェらは終わりだ! ジャスティスジャッジメントの精鋭部隊の――」


 青年はニヤニヤしながら話していたが突如白目を向いて倒れた。


「死者には敬意を」


 もう動かない男を見るスファーリア、その目は死者が冥府へと旅立つのを見守る目をしている、そして縁は死者に対しててを合わせた。


「縁君、これからグラウンドで演奏会が始まるけれど」


 スファーリアは学校のグラウンドの方を見るとヘリコプターが上空で待機していた。


「特等席で聴かせてもらおうか」

「招待するわ」


 2人はグラウンドへと歩き出して、地面に埋まりっぱなしのトライアングルは自分で脱出してスファーリアを追っかけたのだった。

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