第四話 桜と祝福の鐘その7

『コラ! 暴力はいけませんよ!』


 優しく叱る女性の声が辺りに響いた。


「お、やっと来たか」


 縁は空を見た、縁につられ、風月、斬銀、青桜、フォルクは空を見た。


「いけません! 貴方からは外道へと身を落としてしまった方々の心を感じます!」


 なんと、空からシスターが光に包まれてゆっくりと降りてきた。

 神々しいその姿に一同は息をのむ。


「『道徳の加護』を持ち、道徳の神を主とする、シンフォルトと申します」



 シンフォルトはニコッと笑った。

 絵に描いたような教会のシスターの服に、金髪に青い瞳、聖母のような笑顔。

 ただ腕には道徳と書かれた腕章をしていた。

 縁を庇うように前に舞い降りる。



「ダメですよ、暴力はどうしようもならない時の最終手段! それで解決しようとしては! 道徳が足らない証拠です!」


 シンフォルトはゆっくりと隷属の神に近寄っていく、隷属の神は走るのを止め、情けなく後退りをしていた。


「く、くるな!」


 隷属の神からは余裕を感じられない。


「さあ! 貴方にも道徳と清らかな心を!」


 シンフォルトは神に祈りを捧げるように、祈った。


「うあああああぁぁぁぁぁ! 止めろ! やぁぁめぇぇぇろ!!」


 隷属の神は苦しみだし、地面をのた打ち回っている。


「や、やもえん! きょうせい……が!」


 隷属の神は黒い霧となり消えた。


「忘れんぞ! この恨み! 貴様等を根絶やしにしてくれる! クックック!ハッハッハ!」


 捨て台詞は元気な隷属の神だった。


「コラ! 懺悔は最後までしなさい!」


 シンフォルトはムッとしている。


「えっと縁、こちらの強烈なシスターさんは?」


 風月はシンフォルトを指差した。


「シンフォルト、道徳の加護を持ってるシスター」


「それはさっき本人が言ってたじゃん、私が気になったのは何をしたか」


 風月はジト目をした。


「ああ、道徳心を植え付けた」


「は? 道徳心?」


 風月は耳を疑った。


「あの神は隷属の神だったんだがな?」


「ふむふむ」


 風月は頷いた。


「簡単に言えば悪人にキラッキラな道徳心植え付けられたら発狂するだろ?」


「自己嫌悪に陥ると」


 風月は苦笑いした。


「ハッ!?」


 シンフォルトは辺りを見回した。

 

「いけません! この村は悪しき神の加護により! 道徳からかけ離れています!」


 シンフォルトは跪いてお祈りを始めた。


「このシスターさん、大丈夫?」


 ジト目でシンフォルトを見る風月。


「行動には一貫性があるんだがなぁ」


 縁は苦笑いした。


「主よ! 道徳有る者に主の祝福を! 無き者には懺悔の時間を!」



 シンフォルトは気合いの入った祈りをしている。

 鳴り響いている鐘の音が大きくなる。

 すると、目の前に放置された、なんちゃって盗賊団と村のあらちこちらから、奇声が聞こえてきた。



「違うんだ! 俺は悪くねぇ! ウァーン先生が!」


「あの娘が悪いのよ! あの娘が!」


「俺は金を稼いだだけだ! 稼いだだけなんだ!」


「フタの裏のヨーグルト舐めましたぁぁぁぁ!」


「悪戯で靴にプルプルスライム入れましたぁぁぁ!」


「醤油を薄口にすり替えて、健康に気を使うように仕向けましたぁぁぁ!」



 何やら色々と聞こえてきた。



「ああ! 皆様の懺悔が聞こえます! 皆様! 罪の告白を聞かせて下さいまし!」


 ある意味地獄絵図のような懺悔が聞こえてくる、シンフォルトはニコニコしながら、祈りを捧げている。


「いや、懺悔……でいいのか? 後に行くほどちゃっちいぞ?」


 斬銀は苦笑いする。


「何時見ても見事なお祈りじゃな、ハッハッハ」


 フォルトは高笑いした。


「やり過ぎでござるよ」


 青桜はため息をし、青桜の周りに浮いていたる鯨はジト目でシンフォルトを見ている。


「あのシスターさん、普段何してんの?」


 少し呆れた顔で風月は縁を見た。


「シンフォルトは世直しをしているのさ、で、殺さずに悪人を改心させ、被害にあった人達のケアも忘れない」


 縁は説明をし始めた。


「ほうほう」


 風月は頷いた。


「うん、簡単に言うとこれだな」


 縁はうんうんと頷いた。


「じゃあ、彼女の能力は?」


「他人に道徳心を植え付ける、いや、良心を爆発させる? 他の人の力って説明出来ないよな」


 縁は苦笑いした。


「説明か、アイツなら上手く出来そうだよな」


 斬銀は笑った。


「この間リッシュ兄さんに会ったよ」


「ほう、元気だったか?」


「ああ」


「なんつーか、強烈だってのは解った」


 風月は苦笑いした。


「それをお前が言うか? 界牙流」


 斬銀は試すような目をして、風月を見た。


「それを言われたら、何も言い返せないよ、流派斬の師範代」


 

 風月はニヤリと笑った。

 そんな話をしていると、鐘の音が鳴り止んだ。

 叫び声も聞こえなくなる。


「皆様の懺悔! 確かに聞き届けました! さあ! 汚れ無き身に生まれ変わったのです!」


 シンフォルトはニコニコしながら、両手を広げている。


「あら?」


 シンフォルトは首を傾げた。


「どうしました? 皆様?」


 シンフォルトは縁達を見た。


「あらあら」


 シンフォルトは風月に近寄ってきた。


「うお!? な、何!?」


 風月は怖がって斬銀の後ろに隠れた。


「フッ、俺に隠れるとはな、守ってやるぜ? 鉄壁の斬銀とは俺の事よ」


 斬銀は天使のような笑顔を風月に振りまいた、風月はげっそりとした顔をし、斬銀から目をそむけた。


「あらあら、相変わらず上半身裸なのですね、斬銀、着るものを寄付しましょうか?」


「久しぶりにあったセリフがそれかよ、縁、シンフォルトがいじめる~」


 斬銀が縁に飛び付こうとした!


「こっちに来るな! 気持ち悪い!」


 縁と斬銀は鬼ごっこを始めた。


「若いって素晴らしいですな、ハッハッハ」


 フォルクは高笑いした。

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