第四話 桜と祝福の鐘その6

「ちょ! 縁落ちてくる! 助けないと!」


 風月は右手をバタバタさせて縁を指差している。


「腰が痛くて」


 フォルクは腰を叩いた。


「拙者、疲れたでござる」


 青桜は肩を叩いた。


「風月が助ければいいだろ?」


 斬銀のその言葉に風月は、気持ち悪い物を見るような目をし、斬銀を軽く叩いた。


「え? 嫌だよ? 何で伴侶じゃない男助けなきゃいけないの? 気持ち悪い」


「風月、その言い方は流石に失礼じゃねーか? 縁が嫌いなら仕方ないかもしれんが」


「つい癖で、失礼失礼、コホン」


 風月は、わざとらしい咳払いをした。


「恋人じゃないから無理」


 風月はいい笑顔で斬銀に親指をグッとした!


「はいはい、俺が行きますよ、縁が可哀想だしな」



 斬銀はため息をして、走り出だす!

 筋肉に物を言わせ縁を受け止めた。



「んだこりゃ!?」



 斬銀にお姫様だっこされてる縁!

 しかし受け止めた斬銀は、地面をえぐりながら、後方へと進まされる、縁の勢いを殺し切れてないのだ。


「斬銀パワー! 真! ムキムキボディ!」


 筋肉が唸りを上げる、全身の筋肉が生き、共鳴するかのように鼓動し始めた。

 斬銀は相も変わらず、縁をお姫様抱っこしつつ、呼吸を整えた。


「ふんぬぅー!」


 風月は縁をお姫様だっこしながら走り始めた。


「何!? 進まないだと!?」


 斬銀は走っているのだが、縁の吹き飛ばされた力に、押し返されている。

 地面をえぐりながら、ルームランナーでもしているかのように、進まない斬銀。


「これだから神様の力って奴は! 仕方ねぇな!」


 斬銀は呼吸を整えた。


「斬!」


 そう叫んだ斬銀、やっと止まった。


「お遊びが過ぎないか?」


 斬銀は呆れた顔をして縁を見た、風月が近寄ってくる。


「で、斬銀の言うとおりなにしてんの?」


 風月はジト目で縁を見た。


「ん? 相手が信仰心信仰心とうるさいからさ、どれぐらい信仰されてるか知りたくて」


 縁は痛がる様子もなく、斬銀にお姫様抱っこされている。


「えっと、神様って信仰の力で強弱付くんだっけ?」


 風月が首を傾げた。


「大まかに言えばね、小悪党みたいな事までして信仰心集めているなら、さぞ強いんだろうと」


 縁はニヤニヤと笑っている。


「縁は元気じゃん? で、何時までお姫様抱っこを?」


「おっと」


 斬銀は縁を降ろした。


「つまりその程度の信仰心しか集められなかった訳だよ、風月さん」


 縁はクールに笑った。


「俺の縁が、薄汚い欲だけの信仰心に負ける訳ない」


 縁は先輩風を吹かすような顔をした。


「お! かっこいい事言い出したぞ?」


 風月は縁を肘でつついた。


「クックック、兎は良く跳ねるのぉ」


 隷属の神がゆっくりのしのしと歩いてきた。


「なるほど」


 斬銀は隷属の神を見てため息をした。


「クックック、何がわかったのかな?」


「お前さんが縁の敵じゃないって事だ」


 斬銀はため息をした。


「クックック、初撃は耐えたようだが、次は無いぞ?」


「いや、縁に攻撃は効いて……」


 斬銀は効いて無いと言いかけた、縁が斬銀を見て首を振り、斬銀は言葉を止めた。


「クックック、諦めて殺される気になったかな?」


「いや、あんた弱いのに何威張ってんの?」


 風月がバッサリと言い放った。


「クックック、何を言い出すかと思えば」


 隷属の神は嘲笑うように笑っている。


「ま、いいか、縁に任せようよ、斬銀」


「そうだな」


 斬銀と風月は青桜達への元へと歩いていった。


「クックック、お前一人で私に勝てると思うのか?」


 隷属の神がゆっくりと歩いてきた。


「俺は逃げた方がいいとあんたに言った、そして俺は幸運の神ではない」


「クックック、それ程の幸運が有りながら神ではない?なら何の神なのかな?クックック」


「ただの縁結びの神だよ」


 縁がそう答えた時、カーン、カーンと鐘の音が聞こえた。


「後は任せたぜ」



 縁は斬銀達の元へと歩き出す。

 辺りに響いている鐘の音は神々しい音色だ。



「クックック!? ……この音色は! まさか!」


 隷属の神が焦っている。


「慢心し過ぎたな、忠告通りに帰ればいいものを」


 縁はため息をした。


「何々? この教会の鐘のような音は?」


「ああ、今回の依頼主の……技?」


 縁は首を傾げた。


「知り合いじゃないのかい」


 風月はペシっと縁にツッコミをした。


「いや、知り合いだけど、何故か現れる時に鐘の音が聴こえるんだ」


 縁は首を傾げた。


「気にした事無いと、そしてアレは何?」


 風月は上を指差した、そこにはうっすらと村を包む膜のようなものがあった。


「『道徳結界』だな」


 縁はうんうんと頷いた。


「道徳結界って何?」


 風月は首を傾げた。


「場合によるが今なら『道徳が無い者は出れない』かな」


「なんだそりゃ」


 風月は苦笑いした。


「ま、まずい! 早く逃げなけれ……」


 隷属の神はうずくまっている。


「今から来る奴と『縁結び』しといてやったから逃げるのは、ほぼ無理だからな?頑張れよ~」


 縁は離れた場所でうずくまっている、隷属の神に対して大きな声で言った。


「な、何?お前は何者だ!?」


「いやさっき言っただろ?縁結びの神様だよ」


 縁は首を傾げた。


「人の話は聞くものでござる」


 青桜はお茶をすすった。


「そうじゃな、敵の言葉にも真実がある……歳をとって気付くとはワシも青かったの」


 フォルクは昔を思い出すように空を見た。


「馬鹿な!? 縁結び程度の神がワシを縛り付けるだと!?」


 隷属の神は半狂乱になっていた、この神の言う縛り付けるは縁結びの事だ。


「さっきのピシッて音さ、縁結びの音なん?」


 風月はお茶を縁に差し出した。


「少し失敗したけどね」


 縁はお茶を受け取る。


「で、あそこでうずくまっている神様どうすん?」


 風月は半狂乱になっている神を指差した。


「ああ、今来る奴がどうにかしてくれるよ」


 それを聞いた隷属の神は顔を真っ赤にして、立ち上がった!


「クックック! ワシをナメるのもいい加減にしろ!」


 隷属の神は右手を振り上げ、縁に向かって走り出した!

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