第四話 桜と祝福の鐘その5

「せ、先生がやられた!?」


「に! 逃げろ!」


「は、走れ! と、止まるんじゃねーぞ!」


「縁の準備が出来たようだな」


 青桜は呼吸を整え、息を止めた。


「響け、桜音色!」


 納刀する音が辺りに響き渡る。


「がっ!」


「くっ!」


「うーわ、うーわ、うーわ」


 と、様々な断末魔が聞こえ次々と盗賊団は倒れていった。


「さて、余興は終わりだ」


 青桜は立ち上がり、ホコリを払う。


「歳をとると、技一つで疲れが出てダメでござるな」


「姫ちゃん、こっちのベンチに座りなさい」


 フォルクは何時の間にかベンチで休んでいた。


「そうさせてもらうでござる」


 青桜の呼吸は少し速く、疲れた様子でベンチに座る。


「後は縁に任せようぜ、神様相手なんざ、疲れるだけだからな」


 斬銀はフォルク達が座っているベンチの近くに座った。


「お? 斬銀は神とバトルした事あるん?」


 風月はスキップしながら斬銀に近寄っていく。


「色々と居るが、縁とも殴り合ったな~懐かしい」


 斬銀は思い出に浸る。


「ほほう、夕日を背景にお互いを殴り合いでもしたの?」


「ま、そんな所だな」


 斬銀は歯を輝かせて笑った。


「で、あのぶっ倒れてる人達はどうするん?」


 倒れている自称盗賊団を指差した。


「ほっとけ、少しお灸だ」


 斬銀はため息をした。


「風邪をひくかもしれませぬな、ハッハッハ」


 フォルクは笑っている。


「それより、青桜さんの技のキレがヤバイよ」


 風月は目を輝かせている。


「いや、今の拙者には数回が限界でござるよ、若い時の無茶が響いたでござる」


 青桜はため息をして、肩を叩いた。


「そうだ、その刀に名前ってあるの?」


 風月は青桜の刀を指差した。


大飛燕草おおひえんそう


 青桜は刀を少しだけ持ち上げた。


「花の名前だよね?」


「そうでござる、横文字ならば『でるふぃにゅーむ』でござる」


「ふーん」


「大飛燕草は『あなたは幸福をふりまく』や『誰もがあなたを慰める』と言った花言葉があるでござる」


 青桜は刀に手をかけた。


「ほう、いい花言葉じゃないか」


 斬銀も刀を見る、すると刀がプルプルと震えている。


「ん? 今震えなかったか?」


「大飛燕草は少々恥ずかしがり屋な、精霊でござるからして」


「おお~精霊なんだ」


 風月は青桜に近寄って刀をマジマジと見た、すると刀はスッと消えてしまった。


「うお? 消えた!」


「いやはや、悪気は無いでござる」


「ま、そのうち慣れるっしょ」


 風月は笑った。


「して縁殿、準備はいいでござるか?」


 流し目で縁を見る青桜。


「ああ、行ってくるよ」



 縁は迷う事なく何処かへ歩く、村の中にある地下へと続く階段を見つけて降りた。

 階段を下りきると、細い道が続いていて、明るい部屋が見えた。

 縁は細い道を歩き部屋へと入った、中は祭壇や御神体等があった。



「良く来たな、幸運の神よ」


 部屋に声が響いた。


「またあったな、隷属の神」

 

 縁は御神体を見た。


「ほっほっほ、何か用かな?」


「随分と余裕だな、俺の力が干渉したはずだが?」


「ふむ、自分を神と勘違いしている馬鹿に、お灸をすえてやろうかとの」


 強い口調で言い放たれた言葉、縁はジッと御神体を見ている。


「それにお前さんの力なぞ、ワシには効いとらんよ?ファファファ」


 高笑いが地下室に響く。


「信仰心集めは勝手だがな、俺の神社に御参りしにきた少年が、お父さんの無事を願っていたんだよ」


 縁は無表情で御神体を見ている。


「ほう? それとワシがどんな関係があるのかな?」


 声はニヤニヤした言い方をしている。


「少年は神様にお願いしようとしたら、金が無いからと門前払い」


 縁の声に徐々に怒りが混ざる。


「それがどうした?タダで願いを叶えられると思っている方が間違いではないかね?」


「言葉でわかるなら、こんなアホみたいな事はしてないか」


 縁のその言葉に周りの空気が変わった。


「で、逃げないのか?」


「貴様、その口封じてくれる!」



 御神体から黒い霧が現れ、それが人の形となる。

 その姿は以前太陽の花を採取しようとした時に現れた神だ。

 相変わらず老人の姿をして杖を突いている。



「ワシに口出ししなければ、長生き出来たものを!」


 隷属の神は縁に向けて手をかざした!


「ワシの隷属となるがいいわ!」


 縁に首に首輪がはめられた!


「容易いな、ほっほっほ」


「は?」


 縁は首輪を容易く右手で引きちぎった。


「遊んでないで、さっさと逃げた方がいいぞ?」


「なんだ? 逃げてほしいのか? フォッフォッフォッ!」


 隷属の神は笑っている。


「ま、いいか、俺は忠告はしたからな?」


「小僧! 調子に乗るなよ? ワシは……」


 隷属の神は怒りを露わにし、縁を睨んだ。


「あのさ」


 縁は隷属の神の言葉に割って発言した。


「人の事言えないが、ベラベラ喋ってないでかかってこいよ」


 縁はニヤリとした。


「後悔するなよ! 小僧!!」


 隷属の神はかっこいいと思われるポーズをしながら、縁を指差した。


「俺も若い頃こんな感じだったのかな、当時はかっこいいと思ってたんだろうな」


 縁は深いため息をした。


「かあああああぁぁぁぁぁ!!!」



 隷属の神は足を踏ん張り、腰を入れ、力を解放しだし、膨れ上がる筋肉、隷属の神は斬銀のようなムキムキマッチョマンになった。



「力でわからせてくれる!」


 隷属の神は一瞬で縁の前まで来た。


「はぁぁぁぁぁ!!!」


 

 隷属の神の丸太のような右腕で、縁の胸に打撃を与えた!

 その速さは凄まじく、縁が防御出来ない速さであった。



「うぐぅ!!」



 縁は弾丸のように真っ直ぐ吹き飛んでいく。

 通って来た細い道を通り、縁は階段にぶつかった。

 それでも勢いは止まらず、野球の犠牲フライのように空へと舞い上がる。



「……」



 気を失っているのか、動かない縁、今度は地上へと落ちてくる。

 落下した場所は屋根だった、斜めの屋根に当たり、また跳ねる縁は空中に放り出される。



「縁!?」


 風月はびっくりして立ち上がった!


「おやおや、高く上がってますな」


 フォルクはお茶を飲んでいる。


「ふむ、黒幕とのバトルに先手をとられたでござるか?」


 青桜は団子を食べていて、近くに小さい水色の鯨が浮いていた。


「あー、ありゃ遊んでるな、兎の神様ってのは相手をおちょくるのが好きなんかねぇ」


 スクワットをしている斬銀。

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