第四話 桜と祝福の鐘その2

 縁達は、爽やかな風が通り過ぎる草原に居た。


「でさ、縁さん達は最近どうでしたかな?」


 風月は笑いながら縁達を見た。


「俺の方は相変わらずだな、好きに暴れられなくてな」


 斬銀は深いため息をした。

 

「ん? どったのさ」


 風月は斬銀の顔を覗き込んだ。


「あまり詳しくは言えないんだがな?」


「うん」


「悪人退治をしてたらな?その時に『斬銀、お前の笑顔は人を恐怖にさせる』って言われてな」


「え?」


 風月が首を傾げた。


「どゆこと?」


「俺は笑顔で戦意を無くす技を持っているんだが、それが怖いと言われてな」


 斬銀は風月を指差した。


「上半身真っ裸なのがいけないんじゃない?」


「やはりそうか?」


 斬銀は自分の身体を見た。


「上半身の鎧を付けなさい」


 風月は頷いている。


「この鎧は亡き親友のおさがりでな、上半身は友と共に消えたよ」


「まって!いきなり重い話を持ってこなあで!」


 呂律が回ってない風月。


「ま、友人は幽霊になってるがな、英霊ってやつだ」


「ええ~反応に困るわ」


 風月は苦笑いをし、ため息。


「で、お前さんはどうなんだ?界牙流四代目」


 斬銀は欠伸をしつつ風月を見る。


「いや、あたしは五代目だよ」


 風月はジト目で斬銀をみた。


「おっと失礼、で、どうだ最近は?」


「何時もと変わらない修行の毎日よ?」


「恋人でも出来たか?」


「できねーな、無理して作るもんでもねーし」


 風月は鼻で笑う。


「なら縁はどうだ?」


 斬銀は縁を指差した。


「そこで俺にふりますか?」


 縁は苦笑いした。


「うーん、よく知らんしなぁ」


 風月はまじまじと縁を見た。


「そりゃそうだ、俺も困るな」


 縁はため息をして、斬銀に呆れた目線を送る。


「愛のキューピット斬銀は失敗か」


 斬銀はキラキラした笑顔で残念がっている。


「うわぁ……ゴロの良さが気持ち悪い」


 風月はジト目で斬銀を見た。


「気持ち悪いとは失礼な、こんなにフランキーなのに」


 斬銀は天使のような笑顔をした。


「はいはい、ファンキーファンキー」


 風月は斬銀を軽くあしらった。


「フランクじゃないのか?」


 縁は冷静なツッコミ。


「おや?」



 風月は右を見た、縁達もその方向を見る。

 何かが勢いよく土煙を上げながらやって来る、それは銀色のボディーにスタイリッシュさを感じるデザインの車だった。



「うお! 何あれ!?」


 風月が指差した。


「風月、車を知らないのか?」


 斬銀は風月を見た。


「おお! あれが噂に聞く『ブーブー』だな?」


「それ赤ちゃんに使う言葉だな」


 縁は苦笑いした。


「初めて見るんだからさ!」



 風月の目は夢見る少年のようにキラキラだ。

 銀色の車がスピードを下げ縁達の前で止まり、助手席の窓が開く。



「待たせたな縁殿、お久しぶりでござるな」


 ハキハキと喋るおばあちゃんが声をかけてきた。


「青桜さん久しぶりです」


 縁は頭を下げた。


「こ、これが車!」


 風月はあちこち見て回っている。


「ふむ」


 青桜は車から降りた。


「彼女も依頼を手伝ってくれるのでござるな?」


「ええ、ちょっと落ち着きが無いですが」


 縁はため息をした。


「お嬢さん、助手席に乗るでござるか?」


「助手席?」


 風月は首を傾げた。


「拙者が座っていた前の席でござるよ」


「うえぇぇぇ! ま、マジっすか! やったっす!」


 風月が万歳をして喜んでいる。


「失礼します!」


 風月はビシッとお辞儀をして乗車し、ドアを閉めた。


「話は車の中で、するでござるよ」


 青桜は後部座席のドアを開けた。


「お邪魔します」


 縁は車に乗車した。


「高級車かぁ……ちゃんと服来た方が言いような気がする」


 斬銀は自分の姿に申し訳なさを感じたようだ。


「ほらよ、斬銀さん」


 縁は車内からTシャツを斬銀に向けて投げた。


「よし、これで俺も乗車出来る!」


 斬銀はTシャツを着る、ピチピチな状態で車に乗り込んだ。


「出発でござるな」



 青桜も乗車する、車内も高級感あふれる作りになっていた。



「ヘイお嬢さん、シートベルトよろしくじゃ」


 運転席に座っていてサングラスをし、ノリノリに小刻みしている和服おじいちゃんが風月に声をかけた。


「シートベルト?」


 風月は首を傾げた。


「左にある出っ張りを引っ張り出して、右の金具にセットオンじゃ」


「お、これか!」


 風月はシートベルトをした。


「出来た!」


 風月は目をキラキラさせて、運転席の老人を見た。


「よし、それじゃあ出発じゃ!」


 老人は車の運転を開始する、ゆっくりと動き出す車、風月はまだ目を輝かせている。


「よい子のみんな、今は後部座席もシートベルトしないといけないからな!だが、この車は『魔法』で大丈夫なのだぞ!」


 斬銀は何故か説明口調だ。


「お疲れ様です」


 縁は斬銀を見て頭を下げた。


「あの、手伝いの詳細教えて下さい」


 縁は青桜を見る。


「フォルクが通達したと言ってたでござるが?」


「村を救うからヨロピク!だけじゃわかりません」


 縁は苦笑いした。


「フォルク、詳細を言わなかったのか?」


 青桜は呆れている。


「仕方なかろう、シンフォルトからの急ぎの依頼じゃったんじゃ」


 フォルクの言葉に青桜はため息をした。


「トドギランの村が山賊に占領されたらしい」


「山賊か」


 斬銀は頷いている。


「しかしだ、拙者の調べでは村の近くに住む山の民だとわかった、村とは友好的な関係でござった」


「って事はだ、脅されてるか操られてるかだ」


 風月は外の景色を見ながら、ニコニコしてそう言った。


「縁を呼んだのは、相手が神だからじゃよ、ワシらでは荷が重すぎるのじゃ」


 フォルク鋭い目つきでバックミラーで縁をチラッと見た。


「ほう?」


 縁の目つきが変わった。


「いや、シンフォルトで対処……ああ、遅れるのか」

 

 縁は苦笑いした。


「ダシに使ってすまんのぉ」

 

 フォルクは申し訳無さそうな顔をしている。


「つまりその人が来るまでにさ、村をある程度確保しとけばいいって事だぬぇ~?」


窓から見える普段と違う景色に上機嫌な風月。


「うむ」


フォルクは頷いた。


「すまぬが少々運転に疲れた、近道も兼ねて魔法高速道路の休憩所で休ませてくれ」


「おお、聞き慣れない単語が出てきた」


目をキラキラさせている風月。


「魔法高速道路か、最近出来た金持ちしか使用出来ない道路だな」


斬銀はピチピチなTシャツが気になるのか、身体を見ている。


「そうなの?」


風月が振り返り斬銀を見た。


「簡単に言えば、車で異次元に突入して目的地にワープする施設、かな?」


縁は右手の人差し指を上げて、風月に説明する。


「ほえ~」


風月は頷いた後、また窓を見出した。


「ハッハッハ、お嬢さん、これからビックリしますぞ?」


フォルクは袖から証明書(カード)を取り出し、それを車に設置されていたカードリーダーに差し込んだ。



『今イケてる手前どもの真実、を、読み込みを開始します』



「うお! なんだなんだ! 喋ったぞ!」



風月は車が喋った事に大興奮している、車の進行方向から虹色の道が現れる。

それは空へと続いていて、道の先には虹色のもやもやした霧があった。

車はその道をたどり、もやもやを目指し進む。



「何かよくわからんが、スゲー!」


風月が窓外を見ている。


「ハッハッハ、元気なお嬢さんだ、流石は界牙流だけはありますな」


「む! あたしの流派を知ってるとは! あたしを狙う刺客か! かくごー!」


風月は目つきを鋭くし、構えた、もちろんふざけている。


「こらこら、おいたはダメでござるよ」


青桜は苦笑いした。


「冥林(めいりん)、いや本名は霞じゃったか?」


それを聞いた風月はびっくりした。


「おばあちゃんの仙人の名と本名を知ってるとは、なにものだー!」


風月は許容範囲内で暴れている。


「ワシがちょいと若い頃に、冥林さんに世話になっただけじゃよ」


フォルクはニコニコしている。


「ほほー」


「確か、あの人の口癖は『好きな人救う為の努力は怠らないから、世界に喧嘩できる』じゃったか?」


それを聞いた風月は更にびっくりした。


「え? マジでおばあちゃんと知り合い?」


素になる風月。


「ワシがピチピチの少年と青年境目だった年齢の頃にな」


「マジか! ちょっとお話し聞かせて」


フォルクは自分の思い出を語り出した。


「そいえば、衣通姫青桜さん」


斬銀の目つきが変わった


「む? 拙者の苗字を知ってるとは」


青桜はクスリと笑った。


「今思い出したぜ、どちらかと言えば『同業者』だからな」


「いやいや、老婆に片足入れた老いぼれは、ただ旅をしているだけでござる」


「フッ、そうかい」


斬銀と青桜は笑っている。


「うーん」


縁は完全にはぶられていた。


「武道派がそろうとこうなるわな」

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