第三話 太陽の花を採取 前編 その1

 長谷川は、何時ものゲームショップでアルバイトをしている。

 そのゲームショップの名前は『舞台』

 名前の由来は『ゲームは演技だ! 設定の塊の作品だ! 舞台だ!』との店長の言葉からである。

 その店長の名前は神無月京五郎 かんなづきけいごろう である。

 美人の奥さんのあけみと、可愛い娘の友美と言う名前だ。

 店は常に閑古鳥が鳴くほど暇だが、ネット販売のやり取りの方が主なようで、そちらの売上がいいらしい。



 このゲームショップに最近新しいアルバイトが入った。

 アルバイトの名前は名字は荒野原 こうやはら で名前は しゅう である。

 肩甲骨辺りまである長い黒い髪、顔立ちに特長は無いが、強いてあげればややジト目だ。

 性格は物静かであり、話やゲームで興奮しても少し早口になったり、口数が多くなる程度。

 元は一流企業で働いていた彼女だが、辞めてゲームショップ『舞台』へと来たようだ。

 本人曰わく『数年我慢したが、言い寄る男とセクハラがうざかった』との事。



 長谷川はそんな彼女とカウンターで店番をしている。

 しかし、店は閑古鳥だ。


「今日も今日とて閑古鳥~」


 と、荒野原はリズム良く歌っている。


「このご時世~こんな店舗だったら間違いなく倒産だ~」


 なかなか不謹慎な歌だ。


「ここの店はネット販売がメインだからね、そのネット管理もあけみさんがやってるから、店が暇なんだよな」


 長谷川と荒野原は簡易テーブルを挟んでお互いに座っていて、目の前にレジがある。


「こんな暇でさ、アルバイトとは思えない給料貰っていいんだろうか」


 荒野原は誰も入ってこない店の出入りを見た。


「それはある…っても、店長に気に入られないと、ここのバイト出来ないけどね」


 長谷川も誰も入って来ない店の出入り口を見ている。


「『荒野原さん、レアスナタの愛を語ってくれ! それで採用を決める!』って面接の時に言われたわ」


 荒野原は軽くため息をした。


「ああ、俺も同じようなもんだよ?『ゲームの愛を語れ! 賞賛も批判もひっくるめて愛を語れ!』ってね」


 長谷川は苦笑いをして荒野原を見た。


「本当は店長、ずっとゲームしたいだけだよね?」


 荒野原は長谷川を見た。


「ああそうだよ、この店が軌道に乗るまではがむしゃらだったらしいけどね」


「でも店長も遊んでるだけじゃないんだよね?」


「ああ、森山ボックスが出しているゲームを遊んで攻略本を作ってるんだよ」


「へー」


 荒野原は近くに置いてあるジュースを飲んだ。


「っても、手書きの物をそのまま本にしてるんだがな、メモとか絵とかもそのままね」


「ネットの攻略情報みたいな?」


「例えば……凄く解りづらいアイテムがあったとしよう」


「うん」


 荒野原は頷いた。


「『画面が切り替わったら、上に六歩、右に七歩』って感じで書いてくれるんだ、もちろん普通にも書いてあるんだが」


「ああー攻略情報って読んだだけじゃ解らない時はあるよね」


「店長曰わく『攻略本ってのは攻略を教えるもんだ、小馬鹿にこいた言い方だろうが、つまらん事でゲームを投げてほしくない』ってさ」


「あーそれはちょっとわかるかも」


 荒野原は頷いた。


「あ、そいや、荒野原さんは何時からレアスナタをやり始めたの?」


 長谷川は軽くハッとして言った。


「αテストのからだね、いやーあの頃は出会い目的の奴らが多くて参ったね」


 αテスト、βテストの中期まではパソコン専用だったのだが、βテストの終盤に今のようなVRスタイルを取り入れたのだ。

 無料でアカウントを作れた時代に色々とあった、リアルトレードマネーや、マナーの問題等々。



 まず、森山ボックスはパソコンで簡単にアカウントを作れないように、アカウント制作を社員がユーザーの自宅に訪問、または本社での作成に変えた。

 簡単に言ってしまえば契約書にサインである、様々な契約書にサインをして、レアスナタをプレイ出来るのだ。

 その結果、業者やマナーの悪いユーザーを弾いた、こんな事をしているのは森山ボックスくらいである。



 レアスナタは本当にレアスナタを好きな人しか集まらないのだ、身分をさらしてまで悪い事をする奴などそんなに居ない。

 そして、知らないや聞いてないは効かない、納得して契約書にサインしてるからである。



「俺はαテスト終わりくらいからかな、中学生の時に友達とアカウント作ったからね」


「おー、中二病バリバリの時期じゃん?」


 荒野原はジト目で長谷川を見た。


「我ながらいい設定だと思うよ、縁は」


 長谷川は苦笑いをした。


「神様の子供でめちゃめちゃ強い!…みたいな設定だからな縁は」


「長谷川君のキャラクターは『森山ボックス公認人物設定解析本』を見たよ、なかなかいい設定だと思う」



 森山ボックス公認設定解析本とは、レアスナタをプレイするユーザーのキャラクター設定資料集である。

 これは書籍と電子版があり、電子版だとPCやスマホ、ゲーム中に閲覧出来る。

 もちろん、掲載を許可したプレーヤーだけ掲載するのだが、九割以上が許可を出しているから、運営は制作と編集が大変である。

 電子版は、比較的直ぐに修正や追加が出来るが、書籍は数年に一回の更新だ。

 書籍の方が根は張るが、人気が有るようだ、電子版は書籍よりも安く、どちらも掲載を許可したプレーヤーには色々と特典がある。


「そう?友達からは強すぎるからつまらないって言われてるけどね」


 長谷川はため息をした。

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