第一話 ロールが主流のオンラインが正式稼働その9

「はろぅ、兄貴」


 絆は縁に向かって手を振った。


「ああ、ゲームだと久しぶりだな絆」


 縁も手を振った。


「そして、愛おしい妹のダイレクト身投げー!」



 きずなはいきなり縁に向かってダッシュしてジャンプ。

 そして、空中で両手を広げた。

 縁はめんどくさい顔をしながらも絆を受け止めた。



「へいへい、兄貴! あのナウい女性キャラクターは誰だい?」


 絆は縁に抱きつきながら風月を指差した。


「相変わらず仲良しだな絆」


 斬銀は絆に声をかけた。


「斬銀さんこんにちはー、相変わらずな筋肉ですねー」


 絆は斬銀を見て、棒読みでそう言った。


「何かひどくね?」


「ハッハッハー! 斬銀さんはそういう立ち位置があってるよ! 最高に! 斬銀さんしかその高見は目指せないよ!」


 絆は縁から離れて、腕を組み頷いた。


「フッ、流石は俺」


 シブくポーズをキメる斬銀。


「ほらほら絆ちゃん、風月さんが困った顔をしているよ?多分キャラクターとのギャップに」


 グリオードは苦笑いしながら絆の肩を軽く叩いた。


「グリグリも久しぶりっすよー! へーい! 元気してたー?」


 絆は舌をちょろっと出して右手の親指をグッとした。


「僕は元気だよ久しぶりだね絆ちゃん」


 グリオードはニコニコ笑いながら絆を見ている。


「はっ! 風月さんを無視しまくりんぐだった!」


 絆はわざとらしくハッとした顔をして風月の方を見た。


「絆さんの中の人は元気な人なんだね」


 風月は複雑そうな顔をしている。

 その顔は困っているというよりは、ギャップに驚いているようだ。


「おうよ! っても、まさか兄貴達が神社に来るとは思わなかったよ! 急遽あたいもロール参戦したずぇ!」


ビシィ! っと勢いよく縁を指差した絆。


「それは僕の差し金だね、縁君ならロールにのってくれるだろうと運営の人に頼んでちょっとしたサプライズさ」


 グリオードはニコニコ笑いながら頷いている。


「ああ、やっぱりあの少年は運営キャラクターだったか見覚えがあるはずだ」


 斬銀はシブいポーズを止めた。


「あれ? イベントの申請ってしなきゃ駄目なんじゃなかったっけ?」


 縁は首をかしげながら斬銀を見た。


「いやいや、あの位のロールの手伝いなら申請はいらんよ」


 斬銀は今までななく真面目な顔をしている。


「まあ、あの少年の話の続きをやるなら申請や話の流れの相談なんかしなきゃいけないがな」


「まあまあ、その話はおいおいしてー」


 絆は斬銀をぺちぺちと叩いた後、風月を見た。


「風月さん! なかなか面白い設定してますね!」


 絆はビシッと風月を指差した。


「むむ! そういう絆さんも面白い設定してるじゃないですか!」


 負けじとビシッと絆を指差した風月。


「イェーイ!」


「ういおー!」


 風月と絆はハイタッチをした。


「絆さんが一人でロールしてる時に設定読ませてもらったけど、絆さんの不幸は簡単に言えばどんな不幸なの?」


 風月は首を傾げた。


「わかりやすく言えば、災い転じて福となすかな?極端な例えだと、お金落としたけど命は落とさなかった、みたいな?」


「なるほど、なんとなく解った!」


 風月は親指をグッとした。


「あれ? 兄貴達の能力説明はしたの?」


「ああ、キャラ設定交換したよ」


「兄貴、それじゃあんまり伝わってないと思うよ?長ったらしい文章よりも口頭で短く言った方が初見の人にはいいよ」


「ふむ、それは一理あるな」


 縁は頷いた。


「キャラクターの能力とか設定ってロールで詳しく知った方が私はいいかな、初見のビックリ具合をちゃんとロール出来るしね」


 風月は腕を組んだ。


「それも一理あるな」


 縁は頷いた。


「あたしは文章だけじゃ、あんまり理解出来んのよー」


 風月はため息をしながら首を横に振った。


「百聞は一見に如かずだね、うん」


 グリオードも頷いた。


「なあ、すまん一ついいか?」


 斬銀がスッと右手を上げた。


「お、斬銀さんどったのさ!」


 絆はビシッと斬銀を指差した。


「ああ、そろそろ四時間になるからな三時間以上には1時間刻みにパック料金はあるが、お前ら大丈夫か?」


 斬銀は縁達を見た。


「運営乙」


 絆はビシッと敬礼した。


「おれは3日のVIPルームだから大丈夫だがそろそろ一回休憩しようかな」


 縁は腕を上げ背筋を伸ばした。


「あー、兄貴またガッツリとレアスナタやるのね」


 絆は呆れた顔をしながら縁を見た。


「また? 縁はレアスナタばかりやってるの?」


 風月は首を傾げながら絆を見た。


「昔から兄貴は暇さえ有ればレアスナタばっかりやってたからね」


 絆はため息をしながら首を振った。


「別にいいだろ? 人様に迷惑かけてないんだし、やることはやってたんだからさ」


 縁はニヤリと笑いながら目を瞑った。


「レアスナタやるためだけに勉強したりなんだりしてたからね、ある意味では尊敬するよ兄貴」


 絆はため息をしながら縁の横っ腹をツンツンと突っつき始めた。


「それは置いといて、そろそろ俺はログアウトするよ」


 縁は突っつく絆の指を払っている。


「俺はもう少しくらいなら、話すなりロールしても大丈夫だ」


 斬銀は手持ち無沙汰からか小躍りしている。

 ノリノリだ、筋肉からほとばしる汗が輝く位にはノリノリだ。


「僕ももう少しなら大丈夫だよ」


 グリオードはいつの間にか本を読んでいる。


「私ももう少し大丈夫」


 絆は縁を突っつくのを止めて右手を上げた。


「あたしも」


 風月は右手で絆の右手にハイタッチした。


「なんだ俺だけ落ちるのかよ、ちゃんと休憩しろよ?」


「兄貴だけには言われたくないよ、じゃあ、またの兄貴」


 絆は縁に向かって手を振った。

 それを合図にそれぞれ軽く挨拶する。


「じゃ、縁があったらまた会おう」



 長谷川はゴーグルを通して見えるログアウトと書かれたボタンを押す。

 すると一瞬にして元の部屋の光景になる。

 当たり前なのだがゴーグルを通して辺りを見なければレアスナタの世界は広がらない。

 長谷川はゴーグルとシートベルトを外した。


 すると



『長時間のロールお疲れ様でした、ちゃんと休息をして再びレアスナタの世界へ!』



 とスピーカーから聞こえる。


「んじゃ、ちゃんと休みますか」


 長谷川はプレイルームから出た。

 広々とした部屋へ戻ってきた長谷川、一人で居るには広すぎる部屋だ。

 長谷川は部屋にあるベッドに横になった。


「ベッドも広すぎるだろ! 友達それか居ないが彼女と一緒じゃないと」


 おっきなベッドでゴロゴロする長谷川。


「いや、待て、友達とベッド? 誤解はされたくないから女友達は除外して、男友達と……」


 長谷川の顔が青ざめていく。


「うむ、一緒ならば彼女しかダメだな」


 長谷川は一人頷いている。


「さってと」


 長谷川は身体を起こしてベッドに腰をかけた。


「今日抜かしたら後2日か、じっくりレアスナタを楽しもうじゃないか!有給最高!」


 長谷川は一人はしゃいでいる。


「絶対今度来る時は、誰か誘おう!このただっ広い部屋が独り言を虚しくしている」


 長谷川はため息をしてうなだれた。

 彼が残り2日この部屋で虚しくレアスナタを遊んだのは言うまでもない。


 続く

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