第一話 ロールが主流のオンラインが正式稼働その8

「最近だと俺は数百人に命を狙われたくらいか」


 斬銀は笑って話している。


「斬銀、何か悪い事したんでしょ!」


 風月がビシッと斬銀を指差した。


「昔は軽くあらゆる世界を敵に回したがな、それとは別だ」


 斬銀はTシャツを脱ぎ始め、正座してTシャツをたたみ始めた。


「比較的平和な世の中になっちまったからな、名を上げたい奴や、俺に恨みを持つ奴、色々な奴らが俺を狙ってきてな」


 斬銀は綺麗にTシャツをたたんだ。


「禁術や禁断の技なんか使って来る奴がいたが、まだまだひよっこだ」


 斬銀はたたんだTシャツに麦わら帽子をそっと置いて、隣に籠を置いた。


「よっと!」


 斬銀は一本締めの様に手を叩いた!

 すると、Tシャツ、麦わら帽子、籠はロケットのように空高く飛んでいった!


「斬銀式宅配術、名前は無いがな」


 斬銀は満足そうに空を見上げた。


「ほー、やるねー、斬銀」


 風月も空を見上げた。


「斬銀さんは規模が違いすぎるんだよ!」


 縁も空を見ている。


「風月はどうなんだ?」


 縁はジト目で風月を見た。


「ああ、私は私より縁の方がわけわからないよ」


 風月は鋭い目つきで縁を見た。


「まず、斬銀は私がちょっかいかけた時に気付いたけど、間違いなく私より遙か彼方の存在だと解った」


 風月は少し敵意をむき出しにして斬銀を見た。


「そんな事ないぞ! 界牙流に勝てる訳ないじゃないか!」


 斬銀はボディビルポーズの一つサイドチェストをしながら神々しい笑顔を振りまいている。


「この笑顔、一般人には見た者の精神に安らぎを与え戦意を喪失するだろうが、それが効かない者には笑っている内に止めろよ?と言う暗示にすぎん」


 風月はビシッと斬銀を指差した。


「そんな事無いぞ! 風月!」


 更に輝かしい笑顔で筋肉自慢をしている斬銀。


「そして、グリオードは肉眼で界牙流の動きを見切っている、これは努力したって言い張れるレベルではない」


 斬銀を無視してグリオードを睨むように見る風月。

 無視されて体育座りでいじけ始めた斬銀。


「見えただけだ、対処は出来ないがな」


 グリオードは肩を軽く上げてため息をした。


「対処よりも、見えたって事が重要なんだよ」


 グリオードを睨む風月。


「んで、縁が一番解らない」


 見定めるように縁を見る風月。


「隙が有るようで無い、そのふれ幅が極端になったり常に変化している」


「気のせいだ風月、俺はただの兎の亜人だ」


 縁はうさみみカチューシャを触りながら風月を見た。

 その目は少し悲しげだった。


「あ、いや……ごめんね、少し熱くなりすぎた」


 風月はハッとした顔をした後、両手を合わせて縁に頭を下げた。


「ま、風月と斬銀とグリオードはアホみたいなレベルだってのは解ったな」


 縁は少し鼻で笑って頷いた。


「アホってなんだよー」


 風月は頬を膨らませた。


「そうだぞ縁! 俺達は目に見えるがお前は何かやると目には見えないだろ!」


 斬銀はまだ笑顔を振りまいている。


「株価がよく言うな、為替でもいいぞ」


 グリオードはクールに自分の顎に手を当てて笑っている。


「は? 株価? 為替?」


 風月がびっくりした顔をしてグリオードを見た。


「さっき風月が縁の隙を有る無いが極端とか変化するって言ってただろ?それって株価や株価みたいじゃないか」


 グリオードがそう言うと、数秒沈黙した。

 辺りには風の音だけ響いた。


「だははははは!」


「あはははははは!」


 次の瞬間、風月と斬銀が転げ回るって笑い出した!


「グリオードさん! 的確過ぎる! まじでそれだわ! あはははははは!」


 風月は地面をバンバン叩いている。


「縁と知り合って結構たつが、縁の力の表し方が的確な表現だ!多少違うが正にそれだ!」


 斬銀も風月と同じく地面をバンバン叩いている。


「笑うのはいいが、境内壊さないでくれよ?」


 縁はジト目で2人を見ている、縁とグリオードがちょっと浮かぶほど地面が揺れているのだ。


「暗い雰囲気は好きじゃないからな、境内一つで済むならいいじゃないか」


 グリオードは笑って縁の肩に手を置いた。


「いや、確かにそうだがって! よくねーよ!」


 縁はグリオードの肩にバシッと叩いた。


「努力が足りん、ツッコミが甘い」


 グリオードは縁を見て鼻で笑った。


「そんな努力誰がするんだよ」


 空高く飛んでいたカラスが木に止まった、カァーと一言鳴いて飛び立った。

 それを聴いた風月と斬銀は笑うのを止めて、スッと立った。


「カラスが鳴いた、そろそろ帰るぞ」


 斬銀は空を見上げた。

 空は夕焼けと夜の境目みたいな色をしていた。


「んじゃ、そろそろ帰ろうかー」


 風月は両手を上げた。


「はーい、ワープするよ」



 風月は確認をせずに足のつま先で地面をトンと叩いた。

 魔法陣がそれぞれの足元に現れ、あっという間にみんな消えた。

 そして、誰も神社の屋根に一人の女性が居た。



 身長はだいたい158㎝位、黒いゴスロリ服には兎のアップリケが数羽。

 紫色の傘を持っていて、紫色のウサミミをしていた。

 カチューシャだが。



「久しぶりに神社に来てみれば、懐かしい顔ぶれと新しい人が居ましたわね」


 女性は屋根から飛び降りた、ふわふわとタンポポの種のようにゆっくり落ちてきた。


「草刈りをするなら、ちゃんと最後までやってほしいですわ」


 女性は山盛りになった雑草の山を見た。


「ああ! 運が悪いですわ! この私が参加していない草刈りの後始末をしなければならないとは!」


 女性は悲劇の少女っぽく、身振り手振りで悲壮感を身体で表している。


「資源は有効活用いたしませんと」


 女性は指をパチンと鳴らした、すると雑草の山は一瞬で消えてしまった。


「やきいもの火種にいたしましょう」


 女性はため息をした。


「こんな後始末をしなければいけないなんて、私は運が悪いですわ」


 女性は拝殿を見て拝殿の方へと近寄る。


「お兄様達が来る前から居ましたけど、あの少年の願いは本物、ならば」


 女性は賽銭箱を見た。


「縁切りと不幸の司る私、絆もあの少年の為に一肌脱ぎましょう」


 絆は少し笑って賽銭箱を見ている。


「私はつくづく、運が悪いですわね…ふふふ」


 絆はにやりとに笑うとスッと消えた。

 身体の一部から徐々にではない、神社には誰も居なくなった。



 数十秒後。



 ピィー!!っと、ホイッスルのような音が響き渡った。

 神社の境内にまた絆が現れる。

 帰ったはずの縁達も境内へ戻ってきた。

 境内には縁、斬銀、風月、絆、グリオードが居る、少年の姿は無い。


「ロールお疲れ様でしたー!」


 と、縁が頭を下げた。

 お疲れ様でした! とみんなも頭を下げる。

 ホイッスルみたいな音はロール終了の合図らしい。

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