第36話 お前の友達を殺した






「リベンジマッチだと? ふざけるのもたいがいにしろ!」






 リチャードは剣を勢いよく振りかざし、私はその攻撃をナイフで受け止める。ガキィンと金属のぶつかり合う甲高い音が鳴り、受け止めた剣の重さから彼の怒りが伝わってくる。






「自分が何をしているのか、分かっているのか!?」






「それはこっちのセリフだ! お前こそ魔女なんかに従って、一体どうするつもりだ!」






 私達は武器越しに互いの心中を探り合う。






「私には王としての責務がある! 国を守るために戦わなければいかんのだ!」






 リチャードは剣を振るう腕にさらに力を入れ、私の体勢を崩そうとしてくる。






「それは罪もない人達を不幸にしてまですることか!」






 しかし私も負けじと彼を押し返す。






「君に何がわかる! 私は一国の王として国民の命を背負っているんだ! 何も背負ってない君とは違う!」






「いいや違わないねぇ! 少なくともお前は、私と同じ間違いをしてる!」






 私達は互いを弾き合った。






「同じ間違いだと?」








「あぁそうだよ、今のお前は間違っている」








 私はリチャードに初めて会った時の事を思い出していた。自分達が幸せになるために起こしたクーデター。しかし私達の前には一人の兵士が立ち塞がった。私達はその兵士を殺し、フロッグ王に復讐を果たした。しかし数日後、私達の前にはリチャードが現れ、彼の手には血塗られたガラスの靴が握られていた。リチャードは死んだ兵士の復讐を宣言し、後に私は彼と殺し合うことになる。その靴で兵士の目を潰し、死に追いやったのは紛れもない私だったからだ。










「以前私は、お前の友達を殺した」










 リチャードはその言葉に動きを止める。私は彼の目を見て話をつづけた。






「自分達の幸せのために殺すしかなかった。それが正しいと思ってた」






「あれは君達にとって仕方のなかったことだろう、それは私も理解している」






「そう……仕方がない、そうやって人は自分の幸せを守るためなら簡単に他人を不幸にできるんだ。そしてそれは間違っている。それはお前から教わったことだ」






 リチャードは驚いたような顔でこちらを見た。






「いくら自分の幸せのためとはいえ、誰か傷つければ必ず恨みを買う。そしてそのツケはいつか自分に帰って来る。私はお前の友達を殺して幸せになろうとした。だからお前に殺されかけた。それは当然の報いで、紛れもない真実だ」






 私はそう言って一歩ずつ彼に歩み寄り始めた。






「リチャード、このままのやり方を続けてもお前の国は絶対に幸せになんかならない! 誰かの不幸に成り立つ幸せなんてありゃしないんだ! だからもう辞めろ! 罪のない国を滅ぼすなんてこと!」






 私がそう言うとリチャードはとても辛そうな表情になった。拳を強く握りしめ、視線の先にはドロシーを睨んでいる。彼はどこにもぶつけられない感情と必死に戦っているようだった。








「分かってる……分かっているさそんなこと‼ でも仕方がないんだ! 私が弱いばかりに、力がないばかりに! 従うしかないんだ……国を……国民を守るために……!」








 リチャードは涙を流し、再び剣を強く握り締めた。






「これ以上私を苦しめないでくれ……! もう私の前から居なくなってくれ!」






 そう言ってリチャードは剣を振りかざして私に向かってきた。私はそんな彼を見て悲しくなる。そうだ、弱者は何も守れない。自分も、大切なモノも……だからこそ私は――。












「――強くなったんだあああああ‼」












 ドゴッ‼ 私はリチャードの腹部に渾身の右ストレートをかます。その瞬間彼の胸部の鎧は砕け散り、リチャードは床に倒れた。その光景を見てドロシーは驚いた表情になる。






「お前が私を救ってくれたように、今度は私がお前を救ってやる」






 私は倒れたリチャードにそう言い残し、玉座で悠然と座っているドロシーを睨みつけた。








「次はテメェの番だドロシー! 私のダチを追い詰めた落とし前、キッチリと払わせてやる」






「調子に乗るなよ人間……! 細切れにしてあげますわ」






 ドロシーは恐ろしい表情でこちらを睨みつけていた。

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死ンデレラ~死にたくても死ねなかったから私は全力で幸せになる!~ @seiichikurono777

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