第35話 リベンジマッチだよ王様






 エラとハーメルが結託しドロシーを倒すために暗躍する中、ロシオズ帝国皇帝リチャードは、捕らえた三人の不法侵入者を城の地下牢獄へと移動させていた。捕まったマイア達は彼の兵士達に押され、檻の中へと入れられる。






「ここでおとなしくしていろ!」






 兵士の一人がマイア達に言い放つ、リアは兵士の乱暴な態度に怒って噛みつこうとしたがマイアがそれをなだめた。






「リア、今はおとなしくして」






 マイアに言われリアは渋々感情を抑え込む。リチャード達が立ち去ろうとするとマイアは柵にしがみつき、彼らに一つの質問をぶつけた。






「あの! リチャードさんは何であの魔女に従っているんですか! 私達どうなっちゃうんでしょうか!?」






 彼女がそう聞くと取り巻きの兵士が怒って彼女を黙らせようとした。しかしそれをリチャードが止める。彼は取り巻きの兵士達に席を外させ、一人になると彼女達と話し始めた。






「すまない、それについては詳しくは話せない。本当は君達を巻き込むつもりはなかったんだ。しかし君達の方から私に付いてきてしまったため、今はこうして君達を捕らえておかなければならない」






 リチャードの丁寧な対応を見て、マイアはリチャードが人まで変わったわけではないと分かり安心する。しかしならばなおさら、彼があんな残忍な事をする理由が分からなかった。






「もしかしてあのドロシーって人に脅されてるんですか? それとも氷の魔女に……」






「君達には関係のないことだ!」






 彼は突然声を荒げた。マイア達はそれに驚く。リチャードは申し訳なさそうにため息をついて、再び話し始めた。






「すまない、これは私の問題なんだ。大丈夫、エラもいずれここに連れてくる。彼女も揃ったら私の手引きで君達をこの国から出してやる。それまではここで我慢していてくれ」






 リチャードはそう言ってマイア達の前から立ち去った。マイアは辛そうな彼の背中を見て心配そうな表情になる。リアとマリナは魔法で脱出するかと彼女に問うが、マイアがそれを制止させた。






「ダメだよ二人とも、リチャードさんがああ言っているんだ。今はおとなしくエラを待って居よう。それにここには氷の女王の手下もいる。二人が魔法を使えるってバレたら、何されるかわからないよ」










「――そうそう、今は君達におとなしくしてもらわなくちゃね♪」










 !? 薄暗い牢獄の暗闇から突然声がしてマイア達は驚く。彼女達が声のした方に目を向けると、そこには氷の女王の手下であるハーメルが立っていた。あなたは!? マリナが彼の姿を見て叫ぶ。






「お久しぶり♪ 水の魔女さん」






 彼は不敵な笑みを浮かべていた。










それから数分後、リチャードはドロシーの前に呼び出されていた。彼は国に侵入したエラ達の事について、彼女に追及されていた。






「だから言っているだろう! 彼女達はただの一般人だ! 私とは何の関係もない!」






「ふ~ん本当にそうかしら? だとしても気に入らないですわ、それにそのうちの一人ってフロッグだか何だかの国に居たのですよね。あの国は姉様が滅ぼしたはずですわ。だとしたらあいつらは姉様が取り逃がした人間ということ、姉様の汚点は私が払拭しなければなりません」






「いい加減にしろ……! いつまでこんな事やるつもりだ! 今までどれだけ多くの人達が不幸になったと思っている! 無関係な彼女達にまで手を出そうというのなら私は――!」






――ズギュン!






 リチャードがそう言った瞬間、彼の体は大きく吹き飛ばされた。リチャードは自分の胸を押さえ、凹んだ胸部の鎧を見て驚く。クッソ! 見えない空気の弾丸、彼はドロシーの魔法の恐ろしさを痛感する。






「私は……何ですって? あなたが私に逆らえる立場だと思って? 忘れたのかしら、あなたが逆らったらこの国は一瞬でなくなる、姉様の魔法でね。そうじゃなくともこんな国、私の魔法でいつでも壊して差し上げましてよ!」






 そう言ってドロシーは痛みでうずくまるリチャードに近づき、彼の頭を踏みつけた。リチャードは悔しさで歯を強く食いしばる。






「謝りなさいリチャード! 人間の分際で魔女である私に口答えしたことを、ドロシー様もうしわけございませんでしたってねぇ!」






 ドロシーはぐりぐりとリチャードの頭を踏みつける。リチャードは悔しさで歯を強く食いしばった。






「さぁ早く!」






「もっ……もうしわけ――」












――ドッカーン!












 しかしリチャードが口を開こうとしたその時、二人のいた王座の間のドアが突然爆発した。










「おいおい、気になって来てみたら随分とハードなプレイしてるじゃねぇか!」










 二人が目を向けると舞い上がった爆風の中、何者かがこちらへと向かってくる。リチャードはその人物の姿を見て驚いた。








「リチャード、やっぱお前変態だろ」








 それは武装したエラの姿であった。






「エラ、なぜ君がここに!? 城の兵達はどうした!?」






「訳あって全員、その辺でお寝んねしてもらってるよ」






 彼女の後ろには首元に針が刺さった兵士達が転がっていた。その針はハーメルの使っていた毒針である。エラはハーメルの協力によって、すんなりと彼らの元へたどり着いたのであった。






「屈強なロシオズの兵達を一人で? あなた一体何者ですの!」








「すべての魔女を殺す……最強の魔女狩りだ!」








 そう言ってエラはドロシー目掛けてナイフで切りかかった。








――ガキィィン!








 しかしその攻撃はまたもリチャードの手によって防がれる。リチャードは彼女に手出しはさせないと強くエラを睨みつけた。ドロシーはそんな二人の様子を見て悠然と玉座に座る。






「最強の魔女狩りですって? 随分と面白い事を言うじゃない。リチャード! 名誉挽回したければその生意気な人間を始末しなさい!」






 リチャードはそう言われて力でエラを弾き飛ばし、彼女に向かって剣を構えた。エラも華麗に着地をし、リチャードに向かってナイフを向ける。






「なぜこんな所にまで来たんだ! ただの一般人である君が!」






「決まってんだろ! お前とのリベンジマッチだよ王様」






 エラは口をニヤリとさせながらそう答えた。

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