第33話 面白くなってきたじゃ~ん

 マズい! 私は再びマイア達の方へと手を伸ばしたが、私達の距離はどんどん離れてゆきもう手が届く距離ではなかった。しかもその瞬間突然風が止み、今度は地面へと落下し始める。下を向くと地上にはいつの間にか大きな町が広がっており、遠くには巨大な城があるのが見えた。私は城に掲げてある獅子の旗を見て、ここがロシオズである事を理解する。しかし私は空中でどうすることもできず、そのまま街へと落下した。








――ドガッ! ガラガラガラ!








 私はある建物の屋根に激突する。天井を突き破り建物内へと転がり込むと、そこはやけに蒸し暑く、白い蒸気に満ちていた。痛って~、私は強く打ち付けた体を起こして辺りを見渡した。すると何人ものゴツイ男達が驚きの表情でこちらを見ている。しかも男達は全員裸で、体に大量の汗をかいていた。私はその光景に一瞬固まったが、すぐに自分がどこに落ちたのかを理解した。もしかしてここって……私は嫌な予感がした。










「侵入者だー!」






「ギャアアアアア!」










 私はどうやら男湯のサウナに落ちたらしい。













――ビューウォーン










 エラ達が街に落ちてから数分後、ロシオズ帝国の城の入り口には空から大きな竜巻が落ちた。激しい風が止むと、中から数十人の武装兵たちが現れ、それと同時に城の警備兵が城門を開ける。リチャード率いるロシオズ軍は、ドロシーの魔法で自国の城へと帰ってきた。








「おっかえりなさいませ~ドロシー様!」








 彼らが城に入るとすぐに、何者かがドロシーの元へと駆け寄ってゆく。それは以前エラとポセイディアで戦闘を繰り広げたあの薄紫色の髪の美少年である。彼はポセイディアでマリナの起こした津波に巻き込まれたが、何とか一命をとりとめ、現在はドロシーの部下として働いていた。






「ハーメル、私に気安く話しかけるなと言いましたわよね」






「いや~でも僕、ドロシー様が帰ってきたのが嬉しくて嬉しくて、なんせあなた様は命の恩人ですから~」






 するとドロシーは不機嫌そうな顔でハーメルと呼ばれた青年に手刀を向けた。彼女の手には空気が渦を巻くように纏わりついている。うおぉ! ハーメルは彼女の手を見て後ずさりした。






「それ以上喋ると切り殺しますわよ。私は好きであなたを助けたんじゃありません、姉様に命令されて仕方なく助けたまでですわ。ただの人間のくせに、姉様に纏わりついているお前が私は心底嫌いでしてよ!」






 ドロシーはそう言ってハーメルを睨みつけた。それを見てハーメルも降参したように苦笑いをし、両手を上にあげた。






「いや~それはそれは失礼致しました~てっきり私、気に入られてると思ってまして~それでチューチラの方はどうなったんですか?」






「しっかりとやってきたさ、あれだけ破壊すれば数十年は復興できまい」






 不機嫌なドロシーの代わりにリチャードが答える。それを聞いたハーメルは嬉しそうにリアクションをし、女王陛下に報告すると伝え戻っていった。






「チッ、人間風情が」






 ドロシーはハーメルの後姿を憎たらしそうな目で見ていた。すると今度は一人の兵士が彼女達の元へ駆け寄ってゆく。兵士はリチャード達の前で敬礼をし、報告があると伝えた。






「今度は何ですの!」






「ハッ! 先ほど国内に侵入者が入ったと報告があり、侵入者と思われる女三名を捕らえてまいりました!」






「侵入者? それは誰だ、連れてこい!」






「ハッ!」






 すると兵士は、手首に銀の手錠を掛けられた三人組を縄で引き連れてくる。リチャードは彼女達の姿を見て驚いた。それはエラと一緒に居た少女達である。






「君達は!」






「あ、リチャードさん!」






 マイアはリチャードの姿を見て喜ぶ。しかしリチャードは彼女の姿を見て困惑した。なぜ君達がここに居る、それにエラはどうした? 戸惑っていると隣でドロシーが口を開いた。






「どうやら私の魔法に変な奴らが付いてきたようですわね、確かもう一人赤髪の女も居たはず、お前達! 急いでもう一人も探してきなさい!」






 ドロシーはそう兵士達に命令した。マイア達三人は、リチャードの指示でそのまま城内に連れて行かれる。そんな慌ただしい彼らの様子を、物陰で一人見つめる人物がいた。










「確かアイツは僕がポセイディアで取り逃がした魔女……。それに赤髪の女ってもしかして……へぇ~なんか面白くなってきたじゃ~ん」










 ハーメルは不敵な笑みを浮かべていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます