第24話 もう嫌だあああああ!!!




「無理ですって! 私、魔女の力を上手く使えないんです!」






 マリナは首を横に振り、また泣きそうな表情になる。






「うるせぇ! やれと言ったらやれ! じゃないともっと泣きたくなるぞ!」






 私は、皆が氷の女王にやられた時の事を思い出す。自分の大切なものが目の前で壊されてゆく光景、それを前に私は何もできなかった。あんな思い、二度としてたまるか! 私は攻撃が当たらない物陰に一度身を潜め、マリナの両肩を掴む。






「いいか、ここで逃げたら一生後悔することになる! お前の大切な物、大切な人達、全てを失うことになるんだ、それでもいいのか!?」






「でも私怖いんです! 力を使ったらどうなるか分からないんですよ!」






「あーもう、うざったいなお前は!」






「ヒイィ!」






 私はマリナの顔に銃口を突きつけた。








「お前の決断を待ってくれるほど、運命ってやつは優しくないんだよ! お前がやれないなら、私がお前をここで殺す! 魔女の力がアイツらに渡るぐらいなら、お前を撃って逃げたほうがマシだからな!」






 私もいい加減、彼女に痺れを切らしていた。コイツは誰かのためとか言いながら、所詮自分を守ることしか考えて無いんじゃないか? 私は怒りでそんな風にも思えてくる。








「うおおおおおおお!」








 すると遠くで何者かがアイスゴーレムへと向かってゆく。それはマリナの兄だった。






「マリナは俺が守るううううう!」






「お兄ちゃん!?」








――カキィン!








 しかしマリナの兄が振りかざした剣は、ただ高い金属音を鳴らしただけで、アイスゴーレムの体に傷一つ付けることは出来ない。挙句の果てに彼はアイスゴーレムに捕まってしまう。






「いやお兄さん、いくら何でも無謀でしょ、馬鹿なの?」






「うるさい! マリナはお前なんかに渡さああああああ!?」






 アイスゴーレムに握り潰されそうになり、マリナの兄が声を上げる。私は再びマリナの方へと顔を向けた。






「おい、ちんたらしてるとお前の兄貴死ぬぞ。どうすんの? やるの? やらないの?」






 私はマリナに問う、すると彼女は頭を抱えて蹲ってしまった。あぁ、もうダメかなこりゃ。私が諦めようとしたその時――。














「――もう……もう嫌だあああああ!!!」














 突如マリナがそう叫んだ。すると地面が揺れ始め、何かが迫ってくるような大きな音が聞こえてくる。あたりを見渡すと海の方から何かが押し寄せて来るのが見えた。








――おい嘘だろ、デッケェ津波が来てるじゃねぇか!? 








私達がそう思った瞬間にはもう遅く、高さ数十メートルの巨大な波が、一気に城を飲み込んだ。












――ザッパアアアアアン!!!












 波は全てを押し流し、アイスゴーレムはたちまちのうちに海の藻屑となった。私は激流の中、何とか城の残骸に捕まり事なきを得たが、波が去ってゆくと城の原型はほぼ残っていなかった。










「うわあああああああああん‼ 何で私だけこんな目にいいいい‼」










 マリナは何事もなかったかのように、城の中心で一人泣き喚いていた。全てを洗い流した彼女の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃである。私は彼女の規格外の力に思わず笑ってしまた。水の魔女、大したもんじゃねぇか! 泣いている彼女の上には、一筋の虹が架かっていた。




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