第21話 私を殺してください

「ウゲッホッ! ゲッホッ!」






 気が付くと私は浜辺に打ち上げられていた。しかし溺れた時に大量の海水を飲み込んだのか、意識を取り戻すと同時に咳き込み、鼻と喉の奥には強烈な痛みと不快感が残っていた。起こったことを整理すると私は水中で何かに捕まれ、そのまま浜辺に投げ出された。視界も悪かったため、私は自分を助けたそれが一体何なのか分からなかったが、確かに人の手のようなものに掴まれた感触を覚えている。あれは一体何だったのか、まさか……人魚?










「あ、あの~」










 突然声を掛けられ顔を上げる。そこには人魚とは似ても似つかない、全身海藻まみれのバケモノが立っていた。








「「うわぁあああ!」」








 私がその姿に驚くと、バケモノも腰を抜けしたように驚いた。なんだコイツ、人間なのか? 私はそのバケモノをもう一度よく見てみた。すると海藻の間からは細い褐色肌の手足が伸びて、青みがかった長い髪の毛も見える。頭と思わしき部分からは物腰の弱そうなタレ目を覗かせており、その目は怯えた様子でこちらを見ていた。とゆうか今にも泣きだしそうだ。バケモノじゃない……?






「ごめんなさい! ごめんなさい! あなたを傷つけるつもりはないんです! だからその、怖がらないで!」






 怖がってるのはそっちだろ。私は慌てふためいている様子を見て、若干拍子抜けした。コイツは一体何なんだ? コイツが助けてくれたのか? とゆうかさっき海に落ちた少女はどうなったんだ? 私は訳が分からずにいた。すると海藻まみれが何かを差し出してくる。それは私の銃だった。






「これ、あなたのですよね?」






海藻まみれは私に聞いてきた。そうだ、確かにそれは私の銃だ。オルフのおっさんから譲り受けた小型のライフル銃、中には対魔女用の銀の弾丸が装填されている。私は海に飛び込む際に、荷物と共に銃を浜辺に置いたのだが、どうやらそれを拾ってきてくれたようだ。すると海藻まみれは銃の装填口を開け銀の弾丸を取り出して見せた。






「あの、これってもしかして銀の弾丸ですか? 魔女を倒す時に使うっていう……」






「あぁ、そうだけど……それがどうしたんだ?」






 すると海藻まみれは、いきなり私の肩を掴みぐっと顔を近づけてきた。














「お願いします‼ これで私を殺してください‼ 私もう、限界なんです‼」
















「はぁ!?」








 私は突然言われたその言葉を理解できずにいた。殺してください? いきなり何言ってんだコイツは。しかし海藻まみれの目は本気である。いやいやいやいや、馬鹿言え! 出来るかそんなこと! 私はそいつを跳ねのけようとした。しかし海藻まみれは私の体にしがみつき泣きながら訴えてくる。






「おい離せこの野郎! 何なんだお前は! 会っていきなり殺してくださいとか頭おかしいだろ!」






「だっで~限界なんですも~ん! 私もう死にたいんです~! 生きてるのが辛いんですよ~!」






 海藻まみれは号泣しながら私の足を離そうとしない。本当に何なんだコイツは! いい加減ぶん殴るぞ! 私は海藻まみれに少し苛立ちを感じ始めていた。すると今度は背後から何人もの足音が聞こえる。ん? 誰か来るのか?










「マリナあああああああ‼ やっぱりここに居たのかあああああ‼」










「ヒイィイ!」






 突然聞こえた叫び声に、海藻まみれが驚く。振り向くと武器を持ったこの国の兵隊らしき男達がずらりと並んでいる。中央にはそのリーダーらしき、青いつんつん頭の青年が立っていた。目はつり目で、貴族のような長い装束を着ている。






「あれほど海に近づくなと言っておきながらあああああ! またお前は勝手にいいいい!」






 青年はかなり怒っていた。何だ、この海藻まみれの知り合いかなんかか? それにしては随分小綺麗な奴だな、まるで王族みたいだ。憤怒の表情で叫ぶ青年を見て、私はそんなことを思っていた。すると青年は私の持っていた銀の弾丸を見て、さらに形相を変えた。










「銀の弾丸!? さてはお前、魔女狩りかああああああ‼」










「えっ?」








 怒りの矛先が私に変わった。






「奴を捕らえろおおおおおお‼」






 すると青年は突然兵隊達に指示をし、私に攻撃を仕掛けてきた。えええええ!? 突然の出来事に私は身動きが取れず、兵隊達の投げた網にすんなりと捕まってしまった。ヤメロ! 私は魚じゃねぇぞ畜生おおおお! 私は激しく抵抗したが網は固く、成すすべなく連れていかれた。


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