第17話 どうして魔女狩りになったの?





バキュン! バキュン! バキュン!






 人気のない林の中で、私はライフルを片手に、迫りくるオルフのおっさん目掛けて何度も発砲した。しかし私が放った弾全てを、オルフのおっさんは軽々しく避け、生えている木を巧みに使い、その距離をじわじわと詰めてくる。私はおっさんの素早い獣のような動きに全くついてゆけず、ついには至近距離で蹴りを入れられ、倒れたところにナイフを突きつけられた。






「勝負あったな……これでお前は九十九回死んだことになる」






 おっさんは涼しげな顔で私にそう言い放った。氷の女王にやられてから一週間、私はマザーとマイアの承諾を得て、魔女狩りになることに決めた。ここ数日はオルフのおっさんに、魔女狩りになるための指導を受けているのだが、以前ツバメから教わった護身術とはまるでレベルの違う、対魔女用の戦闘訓練に、私は付いていけずにいた。






「クッソ、また負けた!」






 私は悔しさで地面を叩きつける。今まで腕っぷしには少し自信があっただけに、こうもコテンパンにされると流石にストレスが溜まってくる。リチャードの時もそうだったが、やはり戦闘のプロはレベルが違うと、私は痛感せざる負えなかった。しばらく不貞腐れていると、オルフのおっさんは私の持っていた銃を取り上げて、中に装填されていた弾を取り出して見せる。






「この弾は対魔女用に作られた“銀の弾丸”だ。通常の鉛玉と違って重さが軽い、だから遠距離からの発砲は狙いがブレやすいんだ。この弾を使うときは標的との距離を詰めて、なるべく近距離で撃った方が良い、弾が軽い代わりに、連射性と近距離での弾道が制御しやすいんだ」






「そうなら先に言っといてくれよ、弾無駄にしちまったじゃねぇか」






「何でも先に、答えを知ることが正解だと思うな、先に失敗を得ることで、成功法がより身に付くんだ」






 ちぇ、古くせぇ考え方。私はそう心の中で思った。






「今日はここまでだ、日没も近い。出来るだけ弾を拾って帰るぞ、あの弾は意外と貴重なモノだからな」






 だったら無駄撃ち出せんなよ、てゆうかそもそも訓練を実弾でやる必要あんのか? 不死身の私ならともかく、あんたは当たったらまずいだろ。私がそう問うとおっさんは、実弾の方が神経が研ぎ澄まされていいんだと言った。全く、すげぇんだか頭おかしいんだか……。






「二人ともお疲れ様~」






教会へと戻ると、マイヤが夕飯を作って待っていた。私は訓練の疲れもあり、出された食事に勢いよくがっつく。今思うとあれだけのことがあって、よく私達は生きて居れたものだと食卓を囲む度に思う。以前は割と当たり前のように摂っていた食事も、今では感謝すべきものに変わっていた。






「そういえば、オルフさんはどうして魔女狩りになったの?」






ふとマイアがそんなことを尋ねた。するとオルフのおっさんはパンを食べていた手を止めて、真剣な表情で語り始めた。










「俺の恋人は魔女によって殺された。俺はその復讐のために魔女狩りをしている」










「おっさんの恋人も、氷の女王アイツにやられたのか?」






 私はそう尋ねた。






「いや、俺の恋人を殺したのは炎を操る魔女だった。奴は俺達が住んでいた町に火を放ち、彼女の命と、お腹にいた赤ん坊の命を奪った。この目の傷はその時に負ったものだ」






 するとおっさんは目に着けていた眼帯を外して見せた。眼帯の下には痛々しいやけどの跡が赤く残っており、よく見るとおっさんの体にも同じような跡が数ヶ所見える。今まで気が付かなかったが、おっさんも相当な目に合ってきたんだと、私はその話を聞いて分かった。






「俺は奴を見つけ出し、必ずこの手で奴を殺す! 俺が氷の女王を追っているのは、少しでも奴に近づくためでもある。炎の魔女はかつて、氷の女王と対立していたと記録が残っているからな」






 そう言っておっさんは席を立った。そして自分の荷物がある部屋へと向かってゆく。






「おい、どこ行くんだよ、まだ飯が残ってるぞ!」






「すまないが、俺は明日にはここを発つ。これ以上ここでグズグズしては居られないからな、俺には奴らの根城を見つけるという大切な使命があるんだ。エラ、明日の早朝に最後の稽古をつけてやる。そこで俺から一本も奪えなければ、魔女狩りは諦めろ。やるだけ時間の無駄だからな」






「……わかったよ、一本でも獲れればいいんだな! 上等だ、あんたに勝ち逃げされたまま行かれんのは私も気に食わねぇからな!」






私がそう言うとオルフのおっさんはフン、と鼻息を鳴らし、部屋へと戻っていった。いよいよ明日、私の運命が決まる。絶対に勝ってみせると、私は心に誓った。


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