第16話 地獄を見るなんて慣れてる




「アァアアア‼」





私は自分で、腹に刺したナイフを引き抜いた。腹部からは血が勢いよく吹き出し、着ていた服がじわじわと赤く染まってゆく。周りが驚愕する中、私は服の裾をたくし上げ、その傷口を皆の前にさらけ出した。すると傷は見る見るうちに塞がってゆき、まるで何事もなかったかのように、綺麗な肌へと戻っていく。



「おい、それは一体どうゆうことだ!?」



 オルフのおっさんはその光景を見て慄いた。



「私の体は普通じゃない、受けたどんな傷もすぐに治っちまう。それにさっき気付いたんだが、この力は氷の女王(アイツ)にやられてからさらに力を増した。アイツと戦っていた時、私は四肢を破壊されてて、立つことすら出来なかったはずなんだ。でも気づいたら私は、両足で立ってアイツに殴りかかっていた」



 私は血の付いた拳を握り締める。



「私に魔女を殺せる力はなくても、魔女は私を殺せない。私なら最強の魔女狩り(ウィッチハンター)になれる。頼む、私に魔女を殺す術を教えてくれ、奪われたもの全部、取り返したいんだ!」



 しかしおっさんは所持していた銃を構え、その銃口を私の額へと向けた。



「断る、お前が魔女だという可能性だってあるんだ。そんな危険な奴に、何も教えることは出来ない、それに俺は今ここで、お前を殺すことだってできる」



 おっさんは容赦のない狩人の目で、こちらを威嚇してきた。しかし私は、その銃口を自らの手で、さらに額に押し付けた。





「私は死なないさ、だって私は……まだ何も手に入れてない‼」





私がそう強く答えると、おっさんは銃を向けた手を緩めた。そしてため息を一つついて、諦めたようにその銃を背中へとしまった。見ていた二人もホッと胸を撫でおろし、私も強張った肩を下す。



「三人でしっかり話し合え、その上でお前が魔女狩りになるというのなら、出来る限りの事は教えよう」



 私はその返答に喜んだ。



「しかし魔女狩りは修羅の道だ、多くの人の死を目の当たりにすることになる。時には何もできない自分の無力さを呪いたくもなるだろう。いいか、中途半端な覚悟で決めるなよ、魔女狩りになったら、地獄を見る事になると覚えておけ」



「あぁ、それでも何も出来ないよりマシさ、それに、地獄を見るなんて慣れてる」



 私はおっさんに、そう答えたのであった。

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