第13話 一体何があったんだ?

ザッ ザッ ザッ ザッ




 灰色のローブを着た男が一人、凍った街を歩く。体格は大柄でフードを深く被り、背中には二丁のライフル銃を担ぎ、片目には十字模様が入った眼帯をしている。男は氷漬けになった街を一人徘徊し、建物内で生きたまま瞬時に凍らされた人々の姿を見て、憐れむように街を後にした。




「ここも遅かったか……」




 男は灰色に雪を降らす空を睨みつけ、今度は城の方へと向かう。男は氷漬けになった城内をしばらく徘徊し、辿り着いた王座の間へと入る。すると男は中で、氷漬けになっている男兵士達や武器を持った女性達の姿を発見した。男は何かに立ち向かったまま凍っている彼らの姿を見て何かを察した。




「奴はここに現れたのか……しかしなぜロシオズの兵隊達までいる? ここはフロッグ王の城のはずだ、ここで一体何があった?」




 男は改めて周りを見渡し、一人だけ空へと手を伸ばすように凍っている、暗い赤髪の少女の姿を発見した。少女の視線は強い怒りの念を宿したまま、天井に空いた穴の方に向けられ、その先にある灰色の空を睨みつけていた。男はそれを見て、その穴から何かが飛び去ったことを理解する。




「最後まで奴の姿を見ていたのか、まるでまだ生きているかのような目をしているな、遅れてすまない……お前の敵は必ず俺が打つ」




 男はそう言って、凍った少女の頭の上に手を置いた。すると少女の目が一瞬光ったように見え、男は一瞬驚く。




「フッ……まさかな」






コツッ!






すると男の背後で何か物音がした。男はすぐに銃を構え、音のした方へ体を向ける。




「誰かいるのか!?」




 男はそう呼びかけ、音のした方向へと向かってゆく。そこはどうやら宝物庫のようで、男は壁に開けられた穴からゆっくりとその部屋に入った。部屋に入ると男は、部屋の端に開けられたままの一つの宝箱を見つけ、恐る恐るその中を覗く。すると中には地下へと続く階段があった。男は部屋にあった松明に火を灯し、用心しながらその階段を降り始める。すると通路の奥から誰かがすすり泣くような声がしてきた。




「誰かが居る! おい、生きているのか! 生きているなら返事をしろ!」




 男は声が聞こえたほうへと急いだ。すると通路の端で泣きながらうずくまっている一人の小さな少女を見つけた。少女の目は涙で赤く腫れており、よく見ると片足の先が凍らされている。男は急いで、着ていたローブを少女に着せると、凍った靴を脱がし、凍傷になっていた足先を自分の腹部へと当てた。松明の火を出来るだけ彼女の傍に近づけ、男は少女の体温が下がらないように努めた。すると少女は徐々に落ち着きを取り戻してゆく。




「答えられる範囲でいい、ここで一体何があったんだ?」




「フゥ……フゥ……、空から……綺麗な女の子が降りてきて、それで……皆凍らされちゃって……リチャードさんも、ツバメお姉ちゃんも、エラも、皆っ……皆っ……!」




 すると少女は事の顛末を思い出し、辛そうな表情になる。男は大丈夫だと彼女を優しく摩り、もうしゃべらなくていいと促した。リチャード王もここに来ていたのかと、男はそう呟き、少女の足がだいぶ良くなった後、患部に緩めの包帯を巻き、少女を背中に担いで、再び王座の間へと戻った。




「エラっ……、皆っ……」




 少女は凍り付いた仲間達を見て、再び悲しそうな声を出す。男はどれが君の友達だと聞くと、少女に指示されるがまま、あの天に手を伸ばす少女の元へと向かった。すると少女は男の背中越しに、伸ばされた少女の手に自分の手を重ね、涙を流しながら、ごめんね、ごめんねと繰り返した。こんな悲しい事はもうあってはならない、男は深くそう思った。










「……返せ!」










「!?」




 男は不意に聞こえた声に驚いた。今、コイツが喋った!? 馬鹿な、そんなことあり得るはずがない! 男がそう思った瞬間、凍氷漬けになった少女から心臓の心拍音のような音が聞こえ始める。まさか、本当に生きているのか!? 氷漬けになったその中で!!










 ドクン……ドクン……ドクン…ドクン、ドクン! ドクン‼  ピキッィン‼










 すると氷に一筋のひびが入った。男はそれに驚き、一歩後ろへと下がる。すると次第に少女の体から白い煙が立ち始め、少しずつ氷が解けてゆく。そして氷はひびの入った場所からボロボロと崩れ始め、中にいた赤髪の少女が、その場に倒れた。男はその光景を見て驚愕する。




「馬鹿な……今まで氷の女王の魔法を、自力で解いた奴なんて居ない! コイツは一体……何者なんだ!?」




 男は倒れている少女を見つめ、そう呟いた。


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