第4話 まぁそれも、悪くねぇかな

それからの私は、マザー達の下で共同生活の手伝いをしながら、クーデターを起こすための準備を始めた。その過程で私は、教会に住む王妃達と打ち解け、彼女達から王についての話を聞いた。なんでも王は普段から気になった女性全てに声を掛けていて、その嗜好も幅広く、現に教会にいた王妃達は、決して全員が整った美女というわけではなく、性格や体格、年齢も全てバラバラ、それらことから王が相当な性癖の持ち主であることが伺えた。私は実際に王を見たことはないが、一体どんな奴なんだろうか……。




「いいか皆、いよいよ明日がクーデター決行日だ! 私たちの今まで溜まりに溜まった鬱憤、全て晴らすぞ!」




 リーダーであるツバメが王妃達の前で高らかに叫ぶ、彼女は城の元女兵士だったらしく、城の内部構造を知り尽くしており、クーデターの作戦指揮や戦闘指揮を全て担当している。というか王は兵士にも手を出していたのか。




「エラ!」




 金髪の少女が私に駆けよってくる。彼女はマイア、腹を下し運ばれてきた私を看病してくれたのが彼女だ。彼女の家は貧しく、少しでも家計の力になるため王妃になったそうだが、王のあまりにも乱暴な扱いと女癖の悪さに耐え切れず、城から逃げてきたらしい。歳も一番近いこともあって一番仲が良いのが彼女だ。




「いよいよ明日だね! 私はクーデターに参加はしないけど、エラの事信じて待ってるからね!」




「ああ、お前の鬱憤も必ず私が晴らしてくる! それまでマザーや教会の事は、お前に任せたぞ」




「うん! 私、皆のためにうんとおいしいごはん作って待ってるからね!」




 こんないい子を泣かせるなんて……。王はなんてクズ野郎なんだ。




「エラ、ちょっとこっちに来なさい」




 呼ばれて振り向くとそこにはマザーが立っていた。どうしたのだろう? 私は呼ばれるがまま彼女に付いていった。




「こんなことになって今更じゃが、わしはお前を巻き込んでしまったことを、本当にすまないと思っている、お前は元々、何も関係がなかったはずなのに……」




「なにを今更、私はそんなこと気にしてねぇよ! それに助けられたのは私の方だ、あんたがここに私を運んでくれなきゃ、今頃どうなってたか」




 そうだ、マザーと出会わなかったら私は、人生の全てを間違え、無駄にしていたかもしれない、王の実情を知らなかったとはいえ今考えれば恐ろしいものだ。




「それに私は好きでやってんだ、私も小さいころに親に捨てられてさぁ、顔なんか覚えちゃいねぇけど、勝手に捨てられる悲しみや苦しみはわかる。だからこそあんた達の力になりたいと思ったんだ」




 私がそう答えるとマザーは嬉しそうに頷いた。




「ここにお前が来てから、明らかに皆の表情が良くなった。私達は長い間王への反逆を企てていたとはいえ、本当は誰しもが王に立ち向かうことに、不安と恐れを抱いていた。そこに何でもハッキリと言ってくれるお前が勇気を与えてくれたんじゃ」




「まぁその何でもハッキリする性分のせいで、今まで散々な目に合ってきたがな」




「それもまたお前の良いところじゃよ」




 ふと言われたその言葉に、私はとても嬉しさを感じた。自分の性格を褒められたのは生まれて初めてだったからだ、思えばこの正直すぎる性格はずっと嫌われるものでしかなかった。そんなことを今更思い出して少し目が涙ぐむ。






「人は痛みで繋がり、分かり合うことが出来る」






 ふとマザーがそう呟いた。




「何だよ急に、臭いこと言いやがって」




「年寄りの戯言じゃ、ほっとけい」




 私がからかうと、マザーは少し恥ずかしそうにした。




「必ず、無事に帰って来るんじゃぞ」




「ああ、王の首しっかり獲ってきてやるよ!」




 それ聞いたマザーは安心したように自分の部屋へと戻っていった。私は皆のところに戻り、クーデターに決起する彼女達の姿を見て思う。




「人は痛みで繋がり、分かり合うことができる……か。まぁそれも、悪くねぇかな」

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