死ンデレラ~死にたくても死ねなかったから私は全力で幸せになる!~

@seiichikurono777

第1話 ウルセェんだよ、デブ!

プロローグ




 真面目に慎ましく生きていれば、いつか白馬の王子様が迎えに来て、自分を幸せにしてくれる。幼いころ読んだ絵本には、そんな美しい未来への希望が描かれていたが、現実問題そんな夢物語は起こり得なくて、普通に生きているだけじゃ、ただ灰色に色褪せた日々が続くだけである。




 私の人生はというもの、幼少期に親に捨てられ、貴族や富裕層の召使となり様々なひどい目に合ってきた。そしてそんな日々に耐えられなくなった私は自傷行為に手を出し、自ら命を絶とうとするが、なぜか私の体は死ぬことを許さず、つけた傷もすぐに治ってしまう。




 死ぬことも許されない、そんな絶望の中で私の価値観は壊れた。だが同時にこうも思った。




「幸せになれないまま死ねるか」と――。











「エラ! あなたよくも私のドレスを盗んでくれたわね!」




 ふくよかな体系、厚化粧に金髪の髪をこれでもかとモリモリに盛った貴婦人が色褪せたドレスを持って私に問いただしてくる。




「別に盗んだわけじゃありません、私は奥様が着られなくなったドレスを処分しようとしただけです」




 そう、あくまで私はこの肉団子、いや奥様の古いドレスを処分がてら、少し拝借しようとしただけだ。決して悪意があったわけではないし、ドレスも絶対に着ないだろうと思われる一番小さくてくたびれたドレスを選んだ。咎められる理由はない。




「お黙り‼ この私に口答えは許さないわよ‼」




「だいたいあなたがドレスなんか着て何をしようってのよ、まさか召使の分際で舞踏会に出ようなんて思ってるんじゃないでしょうね⁉」




 正解だ、そのドレスを着れば、細身の私なら少なくともお前よりはマシに映る。




「いえ奥様、私は決してそんなこと思っていませんわ♪」




 とりあえず笑ってごまかそうとしたが肉塊、いや奥様は構わず説教を続ける。




「いい? あんたなんかが舞踏会に出れるわけないでしょ! 出ていいのは高貴で美しいこの私! 選ばれるのも高貴で美しいこの私!」




 今まで一回も選ばれたことない奴が何を言っているんだ?




「だいたいねぇ、あんたのそうゆうところが前々から気に食わないの! 召使のくせして妙に夢見がちで生意気なところが!」




 ああ、ダメだ、抑えろ私、ここはじっと耐えて奥様の機嫌が直るまで……。




「いい加減身分を弁えなさい、このゴミが――」





 ドゴォ‼





 突然鈍い音がしたかと思えば、目の前にいた奥様が床で白目をむいて倒れていた。そのつぶれた鼻からは赤い血が流れ、私の右拳にもその鮮血がべっとりとついている。それが事の全てを物語っていた。




「ウルセェんだよ、デブ!」




 どうやら私は無意識に、奥様の顔面を殴ってしまったようだ。


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