99話 単調な道中

「うおおおぉっ!?」


「誰だ楽だなんて言ったヤツ!?」


 迷宮の丁度折り返し地点を超えた辺りだろうか、敵のレベルは25程度とやはりあまり高くはないのだが、入り口付近に比べてその量は3倍ほどだろうか。

 無双ゲー顔負けの量の雑魚敵が俺達の周囲を覆う、迷宮は奥へ進むほど通路が広くなっているようで、前から湧いていてもいつの間にか後ろに回られているという事も少なくなくなっていた。


 武器を振ったりだとか魔法をぶっ放せば必然的に複数体一気に屠れる為に爽快感はある、しかしその爽快感もひたすら長い時間繰り返していると作業となってきてしまう。


「ハッハー! こりゃいい!」


 それぞれが疲弊している中で1人元気に武器を振り回しているのはバートだ、遠慮なしに振るわれる彼の大剣はひたすら雑魚敵を斬り飛ばし、その中でゲラゲラと笑うバートはバーサーカーのようだ。


「バカは単純でいいわよね、飽きって言葉を知らないのかしら」


「仲間だろ? そんな事言っていいのか?」


「仲間だからこそ言えるのさ、実際アイツはバカだ」


「いるよねえ……あぁいうタイプ、結構需要はあるから居てくれると嬉しいんだけどねっ!」


 俺達レーヴァテイン持ちの組はレーヴァテインを長物へと変化させて最小限の動きで周囲の魔物を薙ぎ払っていく。

 感覚的にはウェーブ式の耐久ゲーだ、一度波を乗り切れば数時間は静かな時間が訪れるのだがこの時間を休息に当てるか、進行に当てるかがかなり命取りになる。


「ったく……スキルだとかステータス補正はあるとは言ってもな、飽きるってんだ」


「確かに、しかしこれほどまで魔物が湧くとはこの迷宮の奥には何があるんでしょうか」


「あれじゃないか? 異界への門が開いていて魔界から大量の魔物が……」


「それが溶岩の中にある城じゃない事を祈るばかりだな、まぁでも沸いてる魔物は普通だし別世界って事はないんじゃないか?」


 異世界で思いつくのは冥界だ、ガルムにヨモツシコメ、これらの魔物は現状地上では見ていない上に、ラグナロクイベントでも何かそれらしい門から出てきていただけのように見えた。


「となればアレかなあ? 魔物達を生み出す母体……マザーモンスター的なのがいたりして?」


「ネーミングセンスが無いわね、でも魔物って自然発生しているものなんじゃないかしら、母体というよりは単純にポップ率の上がるオブジェクトがあるだけ……の可能性もあると私は思うわ」


 一番楽であろうものはカリーナの予想のオブジェクトだ、単純な雑魚ラッシュを乗り切れば楽々帰還という展開となりかなり気が楽になる。

 しかしボスはまだしも異世界となれば道のりはまだまだ序の口というところだろう、そう考えると更にペースを上げて進んだ方がいいのではないかという思いが首をもたげる。


「一先ず俺はボスって考えでいいと思う、これまでこの世界のイベントはどうにも終わって欲しい所で終わってくれる印象があるし」


「これがイベントかどうかは怪しいと思うけどな、まぁでも変に考えすぎるのも悪手か」


「メタ的な考え方にはなるが、俺達のレベルでこのペースの進行スピードだろ? ってなれば異世界突入なんてなればグダグダがすぎる、NPCから振られた辺り今の俺達が適正レベル帯であろう事も考えれば……まぁボスかオブジェクトだろうなって俺は思う」


「正直オブジェクトであって欲しいって思うところだけどな、単調なだけのクソクエじゃねえかこれ」


「ま、好みは結構出る分野だろうしなあ無双ゲーってのは……多分そのうち手応えある敵が出るだろう、そこで楽しめばいいさ」


 休憩を挟みつつ俺達は歩みを進めていく、正直潜り始めてまだすぐだが日程感覚は狂い始めていた。

 まだ1週間は経っていないだろうが、確実に1日は経過しているはずだ、ただ単調にもっとも効率的な狩りをしながら手応えのある敵が出現するの待ち遠しく思うようになっていた。

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