第五章 迷宮
96話 次の仕事は迷宮攻略
「みんなありがとー!」
アルフヘイム、そしてミズガルズ両方のイベントは無事にこなす事が出来た。
ミズガルズは人間が多いためか、音楽家を目指しているであろうプレイヤーの参加が非常に多かった、クラシックからクラブミュージックのようなハードコア、俺達と同じようなバンドミュージック等かなり祭りとしては充実したものとなっていた。
「しかし……アルフヘイムは良かったものの、こっちじゃ他のプレイヤーの方がウケが良かったな」
「まぁ戦うのが本業の俺達だからな、音楽を本気でやってるヤツらには敵わないんじゃないか?」
「音楽ってのは案外難しいもんだからな、カバーとなればまだしも作るとなると話は変わってくる」
音楽イベントも終了し、俺達はクリフたちの案内でミズガルズの街を見て回っている所だ。
ミズガルズの街はよくある西洋チックなファンタジーな街並み、というよりは近代的な街並みで車が走っていても違和感は無さそうな雰囲気だ。
「ちょっといいか?」
「ん?」
俺達を呼び止めたのはレベル40のNPCだ、冒険者のようで年齢はレベルと同じく40ほどだろうか。
「マーヴィス! 何か用か?」
「相変わらずだなバート、ちょっと厄介な仕事があってな……両国の英雄が揃っているなら頼めないかと思ってな」
「ってなると俺達にも用事が? 俺はエリスだ、こっちはパーティーのサラとカオリ」
「どうも、Aランクのマーヴィスだ、いきなりという形になってしまって申し訳ない」
「急であるならば仕方ないですよ、それでその厄介な仕事というのは何でしょう?」
「迷宮の攻略だ、どうにも戦争が終わってからというものえらく大量に魔物が湧いてきていてな」
「迷宮っつーと……ダンジョンみたいなもんか?」
「いや、その迷宮は実は中の構造も分かってはいるんだ……」
どうやらその迷宮は構造自体はただの複雑に入り組んだ一本道なのだそうだ、一番奥には広い空間があるそうで最初にここを発見した冒険者は中で品質のいい武器を手に入れたのだとか。
「どちらかのパーティーではなく、私たち両方に話を振るという事はもう既にかなり犠牲が出ているのかしら、それともそこの魔物が恐ろしく強いのか」
「両方さ、帰還予定の日を過ぎても送った調査隊は戻っていない、湧き出てくる魔物もCランク辺りのヤツらが多くてな……下手に救助隊を送れば共倒れになっちまう」
「俺は行くぜ! 手応えのありそうな仕事だ!」
「俺も構わない、ただ……本気で動くとなれば味方の攻撃が厄介になると思うんだが」
パーティーを組めるのは4人までだ、敵の攻撃に加えて万が一クリフたちのパーティーの攻撃が俺達へと当たってしまう事があればかなり危険な状態になるはずだ、戦争と違い今回は死の危険性も孕んでいるとみていいはずだ。
「それに関してはこちらを装備していただければ問題ありませんよ」
「これは?」
マーヴィスから渡されたのは腕章だ、ダンジョンでもそうであったがこの世界での誰かに干渉するようなアクセサリは腕章が担っているのだろうか?
その腕章のアイテム名は【共闘の腕章】とあり、これを装備した上で同盟を結んだプレイヤーとの攻撃を無力化するという代物のようだ。
「便利な腕章だねえ……早速装備してみよっと!」
「俺も装備してみるか……特に何か変わった気配はないな」
「お互いの神様が見えるようになるってわけじゃあないんだね」
あくまでお互いの攻撃が当たらなくなるというだけで、パーティーを組んだ時のように神が可視化されるというわけではないようだ。
装備変更による防御力の差などは全くない、腕章はあくまでマルチプレイ時に補助する為のものという認識でいいのかもしれない。
「その同盟には調査隊も入っている、もしも生きている者がいたら救助してもらえると助かる」
「分かった、努力しよう」
「その迷宮の場所はここから近いのかしら?」
「近いとは言えないな、ここから東に進んだ所にある、詳しい位置は地図を見てもらうのが一番だろう」
地図で場所を確認してみると魔導ボードで2時間ほどはかかるだろうか、徒歩で行くには少々遠すぎるといったところだ。
迷宮には一度入ると内部を攻略するまで出口が開かないようになっているらしく、攻略には長期間かかると見込んで向かうのが良さそうだ。
「ところで報酬はどれくらいなの? 一応聞いておきたくてね」
「1人200万ってところだな、内部で得たものはそのまま懐に入れてもらって構わない」
「なるほど、となれば魔物の素材だとか集めればそれ以上にもなるってことだね」
「そういうことだ」
「分かった! それなら不満はナシ、いつ出発すればいいのかな?」
「いつでも構わない、ただ早ければ早いほど助かる」
「分かった、明日にでも出発する形でいいか?」
「構わねえ! 何なら俺は今からでも行けるぜ!」
「バート、食料と飲料の買いだめは大事だ、確認する時間を確保するという意味でも明日出発に俺も賛成だ」
「ま、いつでもいいんだけどな、みんなに任せるぜ」
「OK、じゃあ明日出発だ、門の前に集合でいいか?」
「おう!」
クリフ達との共闘はかなり早い段階で実現する事となった、今回の仕事の内容は大量の魔物との連戦、そして途中補給無しという読みを間違えれば全滅してもおかしくはない仕事だ。
俺は足りない事を見越して多くの物資を街で買い込む事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます