62話 対人戦闘練習

 俺たちはお互いに武器を構えて実戦練習や補助魔法の検証を行う。


「銃のエクスプローシブバレットは結構厄介だな」


「そうですね、斬ってダメージを減らす事も出来ますが、その場合は爆風によるダメージがあるようですし」


「あとはやっぱり範囲魔法だよね、ダメージはそんなにでも避けられないっていうのは大きいよ」


「ま、それの弱点としてやっぱり集中しきれないってのが分かったのが収穫か」


 フロストバイトなどの中級魔法となると、どうしても相応の集中力が要求される。

 少なくともカオリとサラとの模擬戦で試した結果は稀に使うにはアリだが、使いどころを間違えると一気に攻め切られてしまうという事がハッキリと分かった。


 そしてゲームらしく剣技を多用した戦法も試してはみたのだが、やはり燃費の悪さは言わずもがなとして、無駄な動きが多すぎるというのがハッキリした。

 魔物ならまだしも、NPCやプレイヤー相手にこの戦闘方法はやめた方がいいだろう。


「やっぱ対人は地力勝負ってとこか?」


「だと思うよ、スキル、戦技、そして自分自身の戦闘センス……その集大成がエリスの言うPvPなんじゃないかな?」


「どうだろうなあ、PvP用の動きっていうのはPvEとは違う事が多いと思うしな」


「私はその辺はよくわかりませんが……とりあえずやる事は同じでしょう? 相手の行動を読んで倒す、それだけです」


 幸い俺たちは全ての武器を使いこなす事が出来る。


「神聖魔法の方もどうにかいい使い道を見つけたいんだけどな」


「こればっかりはどうしようもないと思いますよ、習得に励むだけです」


 神聖魔法だが俺が現状使えるものは【セイクリッドウェポン】と【アブソリュートガード】のみだ。

 セイクリッドウェポンは3人共使えるようだが、それ以外にサラは【オーバーリカバリー】、カオリは【ホーリースラッシュ】のみが使用できるらしく、3人の中で攻撃系の神聖魔法はカオリのみだ。

 アブソリュートガードは自分を中心とした一定の範囲にバリアを張る魔法だ、この防御は非常に強力でカオリのホーリースラッシュですら簡単に弾いてみせた。

 このホーリースラッシュだが、強力な斬撃を飛ばすようなものでありシンプルかつかなりの破壊力を有している。

 サラのオーバーリカバリーはHPの全回復に加え、更に上限突破させて回復するというものだ。

 この上限突破したHPは3時間ほど持続し、時間を超えてしまった場合は通常の上限のHPにまでHPは減少する。


「神聖魔法って言ったらセイクリッドウェポンが思ったより大したこと無かったよね」


「ま、あくまで神聖な力が付与されるだけみたいだしな」


 セイクリッドウェポンによる攻撃力上昇効果はない、単純にガルムのような特殊な魔物を倒す為の属性を付与するだけのものという認識で良さそうだ。


 神聖魔法でハッキリしている事はその性能の破格さだろう、防御、回復、攻撃、どれにおいてもチートクラスの効果を持ち合わせている。

 しかし同時に消費MPもかなりのもので、神器解放中の大技と同等のMPを消費してしまう。

 例外はセイクリッドウェポンだ、これはあまり恩恵が感じられない為か消費MPはかなり少ないものとなっている。


「神器解放終了時に全回復だったらよかったんだけどな」


「ま、それはそれで使いづらそうだけどね」


 ちなみに神器解放を発動させての戦闘の練習も行った、ゲージは意図的にダメージを受けて溜めるという形であったが為に気分のいいものではなかったが、その分収穫はあった。


 結論から言えば神器解放を発動されても、状況は苦しくはなるが騒ぐほどのものではないという事が分かった。

 どうにも魔物相手に使用するよりも効果がかなり弱まっているような印象を受けた、これはサラやカオリも同じように感じたらしく、PvP特有のバランス調整とでも思っておけばいいだろうか。


「NPC相手がどうかは分からないけどな」


「ま、神器解放しなくちゃいけないってなる相手ってプレイヤーとかヒーローくらいじゃないかなあ?」


「サラさん、声が大きいですよ」


 シーグルは不思議そうな顔をしていた、話が通じなくてホッとする珍しい案件だ。

 NPC相手がPvEとしてカウントされるならば、NPCへの神器解放はまさに必殺、逆転の一手となりえるだろう、しかし流石にシーグル相手にそこまでする気は起きなかった。正確にはゲージを溜めるのが面倒なだけなのだが。


「ま、とにかくもういっぺんやろうよ!」


「相手はどうすんだ? 俺か? カオリか?」 


「そうだなあ、2人いっぺんにかかってきて!」


「よし、分かった」


「本気で行きますよ、よろしくお願いしますね、サラさん」


 こうして今日1日を対人戦闘の練習や検証をして過ごす事となった、大量のMPポーションが消費され、今日1日でかなりの金額を消費してしまったのに気付くのはこれが終了して宿に戻ってからの事だった。

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