59話 勧誘
レベリングを兼ねたC,Bランクの依頼を2週間ほどこなし、俺たち3人ともレベル36へと上がっていた。
様々な武器を使い慣れておこうという事で、レーヴァテインをそれぞれが得意とする武器以外にも変形させて練習したおかげか、剣術や槍術といった戦技が統合されて上級戦闘術のスキルへと変化していた。
そしてついに神聖魔法の習得にも至った、どうやら神聖魔法は上級や下級といった区分けはされていないらしく、戦技のように使えるものが随時解禁されていくようだ。
上級魔法と比べて性能が破格であり、神聖魔法を使えるのであればほぼ通常の魔法の出番は無くなると見て良さそうだ。
神聖魔法が恐らく魔法使いとして本番の始まりといったところだろう。
この街でも大分顔と名前が知られてきたようでNPCの冒険者から戦い方のコツを聞かれたり、魔物の弱点や性質について聞かれることもしばしばあった。
何よりも嬉しいのは名指しでの依頼があった事だろう、ヴァルディアではプレイヤーが多かった事やCランクだったという事もあってそういった事も無かった。
Bランクになった時にはラグナロクの騒ぎがあった事もあってそこまで突出して有名になるという事は無かった。
「何ていうか変な気分だな、美男美女にチヤホヤされるってのは正直いい気分だが」
「サラはデレデレだったもんな、巨乳エルフに頼み事された時は」
「しかしまぁ……それで依頼されたものが虫退治だったのというのは思う所がありますけどね」
「いいじゃねえか! ベッピンさんの頼みは受けてやるってのが野郎の性だ!」
「んまー……せやな」
サラの巨乳好きは分かりやすいものだ、大して巨乳に興味のない俺とそもそもそういった類のキャラではないカオリはそんなサラを見て苦笑いするのが日課となっていた。
ぶっちゃけた事を言えばエルフよりもカオリやサラの方が俺の好みだ、ただどうにも2人は仲間という意識の方が大きく、ましてやサラに関しては接しやすいというだけなのだ。
「そういや話は変わるが……この戦争、もしかしてアルフヘイム側の方が不利なんじゃないか?」
余計な方向へと脱線しすぎる前に真面目な話へと切り替える。
色々と調べてみた結果、ここアルフヘイムにもミズガルズにもギムル王国の騎士団に該当する組織は存在する。
そしてエルフのプレイヤーは調べてみたところ人間に比べるとやはり数が少ないようだ、エルフは全体的に魔法に特化したステータスをしているようで、前にあったケイトが特殊というわけではなくエルフという種族がそういうものなのだそうだ。
エルフのプレイヤーが少ないという事は戦争になった場合アルフヘイム側にプレイヤーが少ない可能性が高いと考えていいだろう。
それに対して人間のプレイヤーは多い、ミズガルズのプレイヤーはそのままミズガルズ側につくと考えれば相手の戦力の大きさはかなりのものになるだろう。
「なるほどな……」
「さらにタチが悪い事に……そうだな、カオリ、ぶっちゃけプレイヤーだとか言われても最初はピンとこなかっただろ?」
「そうですね、エリスさんの説明も最初は頭のおかしい人の戯言だと思わなかった……と言えばウソになります」
「傷つくな……ま、普通の人からすれば単純に天才だとかそういった見られ方をするんだよ、プレイヤーってのはな」
「その中でもプレイヤーがヒーローになった俺たちはもっと変人なんだろうな」
「あぁ、でもヒーロー持ちは多分もう案外いると思うぞ? 分かりやすいヤツで言えばダークナイトみたいなヤツだ」
「自分がスーパーヒーローだと信じてるヤツもいそうだよな、そういうのが敵になるとしたら面倒だな……」
他にも脅威はある、いくらNPCと言っても高レベルのものや肩書持ちというのは案外強いというのはお約束だろう。
恐らく絶対回避持ちや他にも厄介なスキルを持った相手との接触が想定される。
俺たちがそうして戦争について話し合っていると不意にドアがノックされる。
「誰だ?」
「急に失礼、アルフヘイム騎士団の者だ」
「騎士団? 何の用があってここに?」
「それについては今から話すさ、入っても?」
「どうぞ」
アルフヘイム騎士団を名乗る男はレベル40であり、木の皮で作られたと思われる防具を身に纏っていた。
彼は適当な椅子を掴むと腰を掛けて語り出した。
「俺はアルフヘイム騎士団、第3師団団長のシーグルだ」
「俺はエリス、こっちがサラでこっちがカオリだ」
「君たちの活躍は騎士団でも有名だよ、ただでさえこの国で人間というだけでなく色々と助けてもらっているわけだからな」
「それは良かった! でもそのお礼をしに来たってわけじゃあないよね?」
「素でいいぞサラ、キャラを作るのは疲れるだろ?」
「ちぇ、お見通しかよ」
「騎士団の情報網は広いからな、さて……単刀直入に言おう、一時的に俺の部隊に入らないか?」
「アルフヘイム騎士団からのスカウト、ですか」
シーグルと名乗った男は真剣そのものだ、通常であれば冒険者は募兵からの参戦となるはずだ。
しかしシーグルからの誘いは一時的に正規軍として活動しないかという意味のものであり、一時的に冒険者からアルフヘイム騎士団へと自分達の立ち位置を変えるものとなる。
「君たちも知っているかもしれないが、最近ミズガルズで君たちのように目まぐるしい成長を遂げる冒険者が多い……正直言って戦争は避けられそうにない、だからこそ信頼できると判断した冒険者にこうして声をかけているのだ」
「なるほどな、エリスの読み通りってとこか」
「こういう読みが当たってもなぁ……んで、騎士団に入るメリットってあるのか?」
「撃破した敵兵の数に応じて報酬を出そう、これは生死は問わない、捕虜だろうが殺そうがどちらでも構わない」
「物騒だな……それくらいか?」
「後はこちらからレベリングに適した依頼を出そう、勿論金も相応の額を支払う」
メタい発言のように聞こえるがレベルという概念は一般的に浸透している為にそんなことは無い。
戦争が終わるまでが契約期間であり、戦争時にアルフヘイム側として固定されるといった事以外に縛りは無いようだ。
「エリス、どうせアルフヘイム側で戦うんだ、受けていいんじゃねえか?」
「そうだな、カオリもそれでいいか?」
「はい、構いませんよ」
「ありがとう、レベリング依頼を受けたくなったら中央の木へと来てくれ」
「ところでシーグル、開戦までどれくらいかとか予想は出来るか?」
「そうだな……1週間前後じゃないか? 既に国境付近の住人は避難させている」
「分かった、ありがとう」
俺たちは戦争に参加する事がこれで決定した。
早速明日から出来る限りのレベリングを開始する事を決めて、今日は休むことにした。
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