49話 潜入
「周囲警戒の賊はいないんだな」
「城壁にはいるみたいだけどね、レベルは低くて13、一番高いので20かな? 穴になりそうなのはあそこだね」
サラが指をさす方にはレベルが低めの盗賊が3人城壁で監視しているようだ、隠密攻撃による倍率も考えると狙撃で静かに処理する事が出来そうだ。
「ちょっとサラさん、ケイトちゃんの試験ですよ?」
「おっと、ごめんごめん、いつものクセでね」
「構いませんよ! とりあえず狙撃……ですかね?」
「決めるのはケイト、君だ。」
「自信をもって狙撃するって宣言しちゃっていいんですよ?」
これはあくまでケイトの依頼だ、もし仮にピンチになったとしてもそれも一つの結果だ。
ちなみにだが授業料のようなものは取っていないので安心して欲しい、ケイトの依頼で発生する報酬は全てケイトの懐へと入れさせている。
「では狙撃します、サラさん、銃の静音化は可能ですか?」
「大丈夫だよ、しっかり決めるから安心して!」
「エリスさんにも弓での狙撃をお願いします、カオリさんは何かあった場合の援護をよろしくお願いします」
「わかりました、では好きなタイミングで始めていただいてかまいませんよ」
「私の射撃に合わせてください、それではいきますよ……3、2、1、撃て!」
ケイトの合図でそれぞれの矢、弾が飛翔する、無防備な状態でそれをくらった盗賊は声をあげる事もなく地面へと倒れて光となって消えたようだ。
「ビューリフォー……」
「そのネタは俺も知ってるぜエリス」
「俺?」
「ゲホッゲホッ……なんのことかなあ?」
ここまで来てついにサラのボロが出てしまったようだがどうにか誤魔化していた。
俺たちは城壁にロープを引っ掛けて壁をよじ登る、べつに正面から堂々と入る必要なんてものはないのだ。
廃墟と言うだけあって蔦が城壁に生えており苔や場所によってはキノコが生えているようだ。
しかし崩落している箇所などはほぼ無く、しっかりとした城のようだ。
「宝箱でもありそうな雰囲気ですね……」
「あるといいんだけどな、ただ盗賊のアジトってなると既に漁られてるかもしれないな」
「だったら盗賊から貰っちゃえばいいんだよ、ね? カオリ」
「そうですね、原則元の持ち主のわかるものは返却ですがそうではない物は討伐者の物になりますし」
城内にはチラホラと盗賊が徘徊しているようで、ソナーは使わずに確実にステルスキルを決めていく。
ボスが一体どの部屋にいるのかはわからない、玉座の間だとかそういった分かりやすい所にいてくれればいいのだが、そもそもそれがどこにあるのかという事を知らない為に困ったものだ。
「今のところは順調ですね!」
「あぁ、でも重要そうな場所を掴めていないって意味では進展なしってところか」
「隠し部屋とかにいられると面倒そうだよねえ」
幹部クラスか何かを捕えて尋問する必要がありそうだ、もしも定期的に連絡を取っていれば俺たちの侵入にも気付かれる可能性がある。
「適当な盗賊を捕まえてみますか?」
「それもアリですね、ただ大声を出されると厄介……ではあると思いますよ」
「たまにいるんだよねえ……静かにしてくれないタイプの人」
「もしも敵に気付かれたらどうするんだ?」
「そりゃ勿論暴れるまでです!」
「プランBってやつだね」
出来ればスマートに済ませたいものだ、しかしそう簡単にはいかないと相場は決まっている、隠密攻撃でひたすら倒し続けつつ探索をしていたのだが、ついには見つかってしまったのだ。
「おい! お前らここで何をしている!」
「えいっ!」
「ッ……! このクソガキッ!」
「一撃で倒せませんっ……仕方ありません! ファイアボール!」
「ぐあああぁぁっ!?」
どうにか対処は出来たものの声をあげられてしまった上にファイアボールの起こした爆音で周囲の盗賊が何事かとこちらへと様子を見に来てしまった。
俺たちは4人で行動していたが為に隠れる事に失敗した俺とカオリによって事態は大きくなってしまっていた。
「悪いな! あんまりステルスは慣れてないんだ!」
「構いません! このまま盗賊を倒し続けてボスを引きずり出しましょう!」
「気を抜かないでくださいね、相手はそれなりには強いですから!」
カオリはロングソードと剣に変化させたレーヴァテインによる二刀流の構えだ、俺は刀へとレーヴァテインを変化させて盗賊から放たれた矢を切って落とす。
「サラ!」
「分かってるよ!」
サラが弓や銃を持った敵を優先的に撃ち抜いていく、倒せなくとも腕の耐久値さえ削ってしまえば射撃の精度はかなり落とすことが出来る。
「ケイト、可能な限りでいいから指示してくれ!」
「カオリさんとエリスさんはとにかく敵を撃破してください! 射撃系や魔法を中心とする遠距離型の敵は私とサラさんで処理したいと思います!」
「エリスさん! 背中は任せましたよ!」
「カオリこそしっかり頼むぞ!」
続々と集まってくる盗賊をひたすら切り倒す、本当は大太刀を使いたいところではあるが味方には当たっても問題ないのだが、流石に室内で振り回すとなると壁に当たってしまう、その為に刀の方が取り回しがいいのだ。
時折敵の弾丸や矢がこちらへと飛来するが集中していればこれを切り落とすのは難しくはない、どういう原理なのかは知らないが見えはしないが感じられるのだ。
「よっと!」
敵が並んだ所で床に手を当てて中級魔法を発動させる。
【アイスウェーブ】だ、地面から氷塊の波を作り出して攻撃する魔法だ、貫通力があり室内や洞窟といった狭い場所では一撃で複数の相手にダメージを与えることが出来る。
「珍しいね、エリスが魔法なんて」
「普段はタイマンが多いからな、複数相手するなら俺も使うさ」
レベル差と魔術師による威力上昇も加わり範囲内の敵が全て光となって消える。
カオリはと言うと大胆に間合いを詰めては二振りの剣で敵を屠っていた、離れた相手にはファイアボールなどの初級魔法を放ち、たちまち敵を壊滅状態へと追いやっていた。
「2人共すごいです!」
「そう言うケイトだってすごいぞ!」
ケイトとサラは遠くから俺たちを狙うスナイパーに対してカウンターしつつ、稀に漏れてくる盗賊を体術や短剣で綺麗に屠っていた。
流石に10分ほど交戦すると無限湧きというわけではないのか敵と出会うペースが落ちてきていた。
「ふぅ……そろそろボスが出てきてもいいんじゃないかなぁ」
「ソナーで索敵してみますね!」
「いや、ここは私が……ケイトはMP回復の手段が私たちよりも少ないですからね」
「そうですね、カオリさんお願いします!」
カオリがソナーを発動させる、するとどうやら一室に多くの反応が見られたようでとりあえずそこへと向かってみる事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます