37話 神器解放
巨人の振るう剣はまさにチートじみた物だった。
剣を振るうとしばらくの間はその空間に炎が残り、まともにくらえば防御をしていても半分以上のHPを持って行かれてしまう。
正直なところまともにくらっても防御すれば耐えられると考えればこちらも十分チートだとは思うがこの戦いでの回復魔法やポーションの消費ペースというのは非常に速い。
「神器解放はダメージを与えた時よりもくらった時の方が増えるみたいだな」
「わざと攻撃をくらうのも戦術のひとつかもね!」
「命を削るって考えたらそう簡単に狙えるもんでもなさそうだけどな!」
ミネルヴァはいつも通り元気だ、発動ももうそろそろ可能なところだろう。
その時何か温かい空気が俺たち全員を包み込んだ、強力なHPの自動回復が付与されたようで何事かと全員の動きが若干鈍る。
「みんな頑張って!!」
サラが剣を手に鏡を掲げていた。
「あれは……八咫鏡?」
その空気は鏡からあふれ出ているように感じた、サラが神器解放をしたのだ。
サラは非常に美しく、金属鎧ではなく着物を身に着けていた。
オオオォォッ!!
巨人が咆哮しサラへと巨大な剣を振り下ろす、しかしサラはその剣を片手持ちした剣で弾いていた。
「私たちも続きますよ!」
「っと、OK!」
サラの神器解放はどちらかと言うと支援型のようだ、サラは空中に浮かんだまま動かない、いや動けないのだろう。
サラの神器のおかげで俺たちも神器解放が使用可能となったようで高揚感に包まれていた。
「ミネルヴァ! 力を貸してくれ!」
「りょーかいっ!」
俺は一気に力を解放し神器を身に纏う。
白い鎧と兜には金の装飾がされており、非常に高い防御力を持っているようだ。
そして手には盾と槍が装備され、まさにミネルヴァの装備をそのまんま借りてきたかのような恰好へと変化した。
カオリは魔法使いらしい姿から一変し、赤を中心とした装飾を施された甲冑を身に纏い、盾と剣を装備しているようだった。
「行くぞ! カオリ!」
「はい!」
俺達は空中を地面があるように走り巨人へと肉薄する、相手の行動が手に取るようにわかり周囲へ被害が及ばぬよう盾で相手の攻撃を防ぎつつ攻撃を加える。
神盾アイギス、その性能はまさに神器のそれであり巨人の振るう剣を受けても全く衝撃を感じない。
「メッタメタにしてやって!!」
「言われずとも!」
槍で思い切り突き刺した後に巨人の顔面を蹴とばす、巨人は地面へと倒れ、そこに神器解放をしたカオリが恐ろしい速度で剣を振るい確実に相手にダメージを与えていく。
「ティウ! 大技いきますよ!」
「思いっきりやれ!」
カオリの足元にルーン文字が現れる、カオリの武器が消滅し、ルーンから2mほどの大剣を軽々と引き抜く。
そして気合と共に振り下ろされた剣は大地を割り、巨人へと大きなダメージを与えられたようだ。
それでも巨人は光になる事は無く立ち上がろうとしていた。
「ミネルヴァ! 俺達もやるぞ!」
「いっけぇ!!」
槍と盾を手放して出現したのは巨大な岩のようなものだ、俺の目がおかしくなければ直径100mほどはあるだろうか、思っていたものと随分と違うが、これもミネルヴァの神器か何かなのだろうか? 後でサラに色々と聞いてみるとしよう。
「オラァッ!!」
巨人よりも遥かに大きなそれは、立ち上がろうとする巨人を押し潰し地面を大きく陥没させた。
神器解放の効果が切れ、岩が光となって消えていく。
その下に巨人の姿は無く、依頼欄の巨人討伐にチェックがついているのを確認することが出来た。
「っしゃあ!!」
「やるじゃねえかエリス!」
「やりましたね!!」
勝利を確信して思わず右手の拳を天へと突きあげる、周りからも歓声があがり俺たちはむさ苦しい冒険者たちに取り囲まれる事となった。
「すげぇな! やってる事はメチャクチャだが感動したぜ!」
「あんな岩どこから出したんだよ! 地形もお前が直したのか!?」
どうやら俺が岩をぶん投げた場所はすぐに元に戻ったらしく普通の平原が広がっていた。
「そうだ、なぁサラ、ミネルヴァのアレって何なんだ?」
「あぁ……確か巨人族との戦争で島を投げただろ? それじゃねえのか?」
「そんな事もあったっけかなぁ?」
ミネルヴァは大して覚えていないのかとぼけているのか、ハッキリとはしないようだ。
「もっと槍に雷とか纏わせて突き刺すとか想像してたんだけどな、俺」
「出来るけどさ、相手は巨人だしなーって事でアレにしたの!」
神器解放はどうやら相棒である神が武器や技を選択し、使用者がそれを実行するという形のようだ、というか岩を出したのは確信犯だったらしい。
ギリシャ神話は色々とブッ飛んでいるとは聞いていたが想像以上だ、となるとハデスが相棒のダークナイトももしかしたらもっと派手な事が出来るのかもしれない。
「何はともあれ勝った事に変わりはねえ!」
しばらくは勝利によるどんちゃん騒ぎが続き、それぞれが健闘を称え合っていた。
「そういえば……っと」
こういったボスは撃破報酬が美味いはずだ、見てみると武器を入手していたようで、その名はレーヴァテインだ。
かなり特殊な武器のようで、この武器の分類は全て対応しているようだ。
つまりこれは剣であり、槍であり、杖でもあり弓でもある、どれにでも使えるというものなのだそうだ。
「レーヴァテインつったらアイギスとかと同じような神器なんじゃないのか?」
「だね、でもこれは本物ってわけじゃないみたい、よく出来た複製品ってところかな」
どうやらこの討伐に参加した全員が入手したようで性能はかなり高い、ルーンが刻まれておりこれで剣や槍等に変形させるようだ。
「皆、巨人の討伐ご苦労だった!! ギルドに帰還したら皆の健闘を称えて宴会を開くぞ!」
どこからともなくダルコが現れた、お前一番レベル高いんだろうから戦えよとツッコミを入れようかと思ったが、何かしら別の事でもしていたのだろう。
ボロボロではあるが聖職者のようなNPCも無事だったようで、奇跡的に犠牲者はゼロに抑えることが出来た。
「アマテラスってすげえな、あのえーと……アマノナンタラカンタラって剣とか、特にヤタノカガミとか!」
「素が出てるぞ」
「アマノムラクモノツルギ、です、クサナギノツルギの方が馴染み深いでしょうか」
「あれってアマテラスさんのものなんですか? てっきり
「正確には持ち主、持ち主だったと言われる人は結構いましてね、一応私の神器でもあるとこの世界では認識されていたようです」
どうやら八咫鏡は掲げていないと効果を発動させる事が出来ないらしい、それを使わず天叢雲剣だけで戦えばダメージソースとしてもかなり優秀だと思われるそうだ。
「強敵相手に一回使えるかどうか……ってところだろうか」
「その辺は色々と試して実証するしか無いと思いますよ、一先ずサラさんの神器解放が非常に優秀だという事は今回でわかりましたね」
サラの神器解放による八咫鏡は神器解放に必要なゲージを自動回復させる効果があった、複数人での戦闘であればこれによって仲間の神器解放を狙えるというのは強い。
「ま、俺のもカオリのも相当なもんだとは思ったけどな」
「神様の武器だとかを使うんだし、ショボいって事はないはずだよ!」
サラが笑顔で親指を立てる、凱旋ムードのまま俺たちは街へと戻った。
依頼達成による報酬金は100万zと大盤振る舞いだ、レベルも31へと上昇しこの後はひたすら飲んで食ってと騒ぐこととなった。
ちなみに酒は飲ませてもらえなかった、サラはどうにかして飲もうと企んでいたようだが詐欺師のスキルを使うという事は無かった。
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