転生した世界はまさにゲームのような世界だった。

28話 プレシオサウルス

「恐竜ってのはスゲェな！」

「対物ライフルでもありゃ倒せんじゃねえのか？」

「確かにそれもスゲェがそれでも勝てないと思うぜ……っぶねぇ！！」

　プレシオサウルスの動きは思っていた以上に機敏だ、まるで首を自由自在に操れる鞭のように動かして殴打や噛みつきを繰り出してくる。

　俺たちも常人離れしたステータスでそれなりの速度で泳ぐことが出来るが常識的に考えてプレシオサウルスはそれ以上の速度で泳ぐことが出来る。

「こういう所は常識的なのは本当に腹が立つってもんだ！」

「文句を言ってもどうにもなりませんよ――ッ！！」

　回避行動は魔力を放出する、そのせいでわずかではあるがMPを削られてしまうというのが俺たちを苦しい状況へと追いやっていた。

　こちらの攻撃をなかなか当てることが出来ず、ドレインブレードを使用しても赤字になってしまうのだ。

　大きな図体をしておきつつプレシオサウルスの攻撃は基本的にヒットアンドアウェイであるというのも俺たちを苦境へと追いやる原因の1つだ。

「卑怯なヤツめ！」

「こんなのゲームでいたらクソモンス確定だってんだクソが……！」

「気持ちは分かりますが今はどうするかを考えましょう！」

　現状まともに攻撃が可能なのはサラだけだ、時間をかければサラの銃撃のみでプレシオサウルスのHPを削り切る事も不可能では無いはずだ。

　プレシオサウルスの攻撃を避けつつどうにか斬撃を加える、レベルで言えば俺たちよりも低いが恐らくプレシオサウルスは素のステータスが高いタイプの魔物だ、俺たちの攻撃を受けても怯む様子も見せないというのがそれを確信へと近付けさせる。

「あの気になったのですが……」

　戦闘中にアマテラスがサラへと言いにくそうに声をかける。

「なんだ？ このクソな状況を打破出来る手があるってのか！？」

「そうとは限りませんが……戦技は使われないんですか？」

「ん、戦技？」

「うせやろお前……」

　サラはこれまで魔法はよく使っていたが銃による戦技を発動させているところというのは見た事が無かった、MPの節約かと思っていたが素で存在を忘れていたらしい。

「俺とか剣技バリバリ叫んでただろ？」

「そういやそうだったな、クセで銃にはそういうのが無いって思っちまってたぜ」

　使い慣れた武器というのも色々と問題がありそうだ。

　この中でサラは実戦的な経験は一番あるのだろうがこの世界での動き方というのは恐らく一番疎い、魔法は分かりやすかったからすぐに覚えたのだおるがやはり固定観念というのは恐ろしいものだ。

「補助魔法も銃専用のがあるじゃねえか、魔法って結構便利なんだな……ライトニングバレル、ピアシングバレット！」

　サラがそう口にすると電気を纏った魔弾が銃口から発射された、これであれば遠距離からでも弱点属性で攻撃が可能なようだ。

　放たれた弾丸は電撃を放ちつつプレシオサウルスを貫通する、大きなダメージが入ったのかプレシオサウルスが怯む。

「カオリ！」

「はい！ チャージスラッシュ！」

　その隙に俺とカオリがチャージスラッシュを発動させて一気に距離を詰める。

　水中では踏ん張りが効かない為に体を回転させつつ斬撃を加える。

　サラが自身への補助魔法で電気属性を付与したおかげで攻撃する機会がかなり増えた、状況は次第に俺たちの有利へと傾き始め、ついにプレシオサウルスの動きが鈍り始めた。

「っしゃ、デカいの行くぜ！！ ライトニングキャノン！！」

　サラが少し溜めのモーションを取った後に、巨大な電気の弾丸が放たれた。

　それはプレシオサウルスへと命中し大きなダメージを与えたようだった、しかしそれだけでは仕留めきれていないようで麻痺の状態異常を発生させつつも抵抗し続けている。

「ちぇ、仕留められたと思ったんだがな……さっさと死んでくれクソトカゲさんよ、エクスプローシブバレット」

　サラは麻痺して動けなくなったプレシオサウルスの頭に狙いをつけて呟いた。

　その弾丸はプレシオサウルスへ命中すると同時に爆発した、その一撃が決め手となったようでプレシオサウルスは動かなくなり、光となって消えていった。

「お」

　俺はどうやらプレシオサウルスを倒した事による経験値でレベルが上昇したようだ、スキルの獲得は無かったものの中級剣術から上級剣術へとランクが上昇しているのが確認できた。

「レベルアップか、やったじゃねえか！」

「はは、ありがとな」

「おめでとうございます！」

　どうやらプレシオサウルスが水晶を飲み込んでいたようで倒すと同時に黒水晶の欠片を入手していた。

「湖底竜の十文字槍だってよ、使うか？」

「ありがとう、こっちは湖底竜の杖だったし、カオリにやるよ」

「私のは防具ですね……サラさん使いますか？」

「んや、カオリが使うといい、俺は前にはあんまり出ないからな」

　中々いいドロップ運をしているようだ、恐らく剣術はロングソードや大太刀のおかけで成長したのだろう、となれば槍も成長させる価値はありそうだ。

「さて、戻るか……」

　俺たちは再び上へと向かって泳ぎ始めた、ボスのようなものは倒したがそれで魔物がいなくなるというわけでもなく向かってくる雑魚をそれぞれ武器を振るって陸へと戻る事となった。

「槍も結構使いやすいな」

「私の得意分野だからね！」

「そういやアテナの武器は盾のアイギスと槍だったな、エリスも案外槍の方が合うんじゃねえか？」

「ありそうだ、まぁ気分で使い分ける事にするさ」

　俺たちは魔導ボードに乗ってヴァルディアへと飛ばしがてら道中の魔物を屠っていった、途中偶然にも地面に剥き出しになっている黒水晶を発見し破壊した。

　どうやら黒水晶は必ずしもボスのような魔物に守られているわけではないそうだ、低レベルプレイヤーへの救済処置だろうか？

　雑魚の量が多かった事もありサラとカオリも遅れてレベル26へと上昇した。