第21話 ギルドの仕事

 翌日カオリに話を聞いてみると彼女は普通に14年間生活をしてきたようだ。

 前にミネルヴァにも言われたがそれによる差というものは殆どないようだった、ただしこの世界の常識だとか多少の魔物についての知識はカオリの方がやはり情報通といった様子だ。


「世界にはまだまだ知らない事がたくさん……ですね」


「だな、まぁ知らない事はこれから知ってきゃいいんだよ」


「とりあえずどうする? 早速ギルドの依頼を受けに行くかフリーの依頼を探しに行くかしたいんだが」


 フリーの依頼は冒険者になったから受けられないというわけではない、ギルドの依頼は報酬が完全に固定されている為に値段交渉などは行えない。

 堅実ではあるが掘り出し物は狙えそうにないというのがギルドの依頼の長所と欠点だろう。


「折角冒険者にもなったわけですしギルドの依頼を受けてみませんか?」


「OK,サラもそれでいいか?」


「いいぜ、金はあるに越した事ないからな」


 サラは完全に素を出している、昨日夜遅くまでカオリと何かを離していたようだがそこで何かしらあったのだろうか。


 俺たちはギルドへと足を運ぶ、相変わらず普段着の見た目の為にギルド内部では目立ってしまうがそこは大してサラは気にしていないようだった。

 依頼だが俺はCランクだが2人がDランクの為に受けられるのはDランクとEランクの依頼だけだ。

 Fランクの依頼は俺がCランクのせいで逆に受けることが出来ないのだ、実力差のあるパーティーというのはどうやら損する部分の方が大きいとみていいようだ。


「どれがいいと思いますか?」


「そうだなあ」


 Dランク依頼はゴブリンロードやダイアウルフなど中型の魔物の討伐が主となっており、報酬も1万zから高いものは2万zと悪くないもので他の冒険者も依頼を受けているのかすぐに報酬の高い依頼は消えていってしまっている。

 どうやら神話だとかファンタジーの魔物だけではなく現代では絶滅してしまっている恐竜だとか動物というものこの世界には存在しているらしく不思議な感覚に襲われる。


「コレでいいんじゃねえか?」


「ウルスス・アルクトス?」


「クマですね、私はいいと思いますよ」


 ウルススアルクトス、どうやら弱点は火属性のようだ。

 ブレスなどの攻撃は行わないもののその高い筋力を駆使した攻撃は半端な回避では避けきれない衝撃を生むのだそうだ。

 

「クマは撃った事がある、心臓を撃ち抜いてやればイチコロよ!」


「頼りにしてるぜサラ」


「一撃で……!?」


 自信満々なサラとそれに驚くカオリと共に俺たちは街を出てウルススアルクトスの討伐へと向かった。




「どういう事だ!! 全然効かねえじゃねえか!!」


「イヤな予感はしてたんだよな!!」


「一撃じゃないじゃないですかぁ!!」


 ドヤ顔で心臓を狙って射撃したが案の定倒れる事はなく俺たちはクマに追いかけられていた。


「はぁ……部位耐久はありますが前世での常識は通用しないって言いませんでしたっけ」


「そんでも心臓ブチ抜いたら死ぬもんは死ぬだろ!?」


「そんな常識は犬にでも食わせろ!」


 恐らく前世で言うところのヒグマだろう、レベルは9だがその攻撃力はかなり高いようで寸でのところで回避すると衝撃が腹に響いてくる感覚があった。

 呆れたようなアマテラスの声を聞きつつ逃げ続ける。


「あぁもう……正面からやりあいますよ!」


「カオリ!?」


 カオリが足を止めてクマへと対峙する、カオリへと向かって力強くクマの前脚が振り下ろされる。


「はあぁっ!!」


 それをカオリは杖をしたから振り上げて真っ向から対抗する構えだ。

 次の瞬間クマの腕が強く弾かれたかのように上へと跳ね返り、振り上げた勢いをそのままに杖をクマへと振り下ろすカオリの姿があった。


「追撃お願いします!」


「お、おう!」


 魔法使いって何だっけ? カンスト白魔導士が杖で殴ったらカンストダメージ出るとかいうアレか?


「フレイムウェポン! プロテクション!」


 俺も攻撃補助魔法をかけて攻勢に出る、幸いあまりにも常識外れな行動をとる事はないようでクマの攻撃はせいぜい噛みつく、腕を振り回す、突進といったもの程度だ。


「大振りな敵は好きだぜ俺はっ!!」


 大きく振りかぶられたクマに対して俺は両手で剣を構える。


「はあぁっ!!」


 カウンターだ、こういうタイプの相手とはカウンターの相性はかなりいい、そして切り裂くと同時に確かな手ごたえを感じる、クリティカルが発動したのだ。


「っしゃ!!」


「エリス! 油断してんじゃねえ!」


「ごふぁっ!?」


 弱点属性、カウンターによる威力増加、クリティカルによる超火力でも倒しきれてはいなかったらしい。

 運と自分の読みに感動していた俺は殴り飛ばされた。


「大丈夫ですか!? ハイヒール!!」


 カオリからの回復魔法が暖かい、しかし最低な姿を見せてしまったという後悔が若干心残りだ。


「大丈夫だありがとう! 一気に畳みかけるぞ!」


 数分後に決着がついた、カオリの放ったファイアボールがクマへのトドメとなり、クマはその巨体を燃やしつつ光となって消えていった。


「ふぅ、意外と手応えのある相手でしたね」


「これまでは何をしてたんだ?」


「フリーの依頼を少しずつ、後は自主的に狩りをしていました!」


 狩りでレベルを上げるのは正直なところ効率としては良くは無いとは思ったがサラよりもレベルが高い辺りそうでもないのだろう、彼女の戦闘スタイルは杖での殴打と魔法だ、近接戦闘型の魔法使いというのはどうにも違和感があった。


「剣とかならまだしも杖ってのがな」


「スキルを前に見てもらったと思うんですが、どうやら杖の方が威力が出るみたいで……」


「なるほどな……」


 ドロップはクマの毛皮や爪といったものだった。


「お、防具だ」


 サラはどうやら下半身鎧を手に入れたようで早速装備しているようだった、見た目を変えているおかげで金属鎧の見た目ではあるがもしも見た目を元に戻したら前衛的な見た目であるのは想像するのは簡単だ。


 依頼を達成し報酬を受け取る、どうやらサラは11レベルに上昇したようでカオリの家で結成記念も兼ねてパーティーをする事となった。


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