第10話 初の共同依頼
「すぅ……」
「ん……ふあぁ」
体を起こすと床で少女が眠っていた、金属鎧は着ておらず華奢な体が無防備に晒されている。
「ちょっとは自覚して欲しいんだがな……ま、難しいか」
「襲ったりしないんですか?」
「しねぇよ!! ……あ、おはようございます」
「ちょっとアマテラス?」
「ふふ、ごめんなさいね。」
ミネルヴァがやや怒ったような声色でアマテラスへと注意する、まぁそういうのはちゃんとお互いの気持ちが大事だろうしな。
「そういえばお互いのステータスの確認とか出来るのか? つっても比較対象が日本神話の主神ってなると比較対象としてどうかとも思うけど」
「ん、可能ですよ?」
「あと気になったんだが……有名どころの神様ばっかりなのか? プレイヤーのガイドしてるのって」
「んー、確か無名の神もいたはずだよ? まぁ多少個性は出るだろうけど総合力で言えばみんな同じようなものだったはずだよ、でないと無名の神の立つ瀬がないしね」
「そうか、ありがとな」
気持ちよさそうに眠るサラに目をやる。
サラは昨日話した感じではあまりゲームはしていないような印象で、ゲーマーと非ゲーマーで組むと言うのは正直なところ不安があった。
俺は過去に楽しみ方の違いを意識できずに布教に失敗した経験があるのだ、よく先人の「〇〇にしとくと無難」というのは善意から来るものというのは理解出来る。しかし受け手からすればレールを敷かれているように感じるという見方も出来るのだ。
実際意識してみると新しく始めたゲームで先輩プレイヤーに割としつこくコレの方がいいと勧められた事があったがそういう所なのだろう。
サラはこういうのに慣れてそうと俺と組む事を了承してくれたがそういう部分で傷つけてしまわないかという不安があった。
「考えすぎじゃないかなぁ」
「気を付けてるなら大丈夫ですよ、サラの事をきちんと考えていただいてありがとうございます」
「はは……」
どうやら心の声が漏れていたらしい、サラが大きな欠伸をしつつ起き上がる。
「ふああぁ……」
「おはよう」
「ん、おはよ」
彼女は背伸びをし、すぐに鎧を装備した、やる気満々のようだ。
「サラ、仕事を探す前にステータスをお互いに確認しないか?」
「OK! ってレベル6? 高くない?」
「サラは3か、っていうか知力高いな……」
ちなみにレベルだがレベル看破があるから彼女のレベルだけはわかっていた……というわけではない、どうやらプレイヤーのレベルは看破できないようだ。
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レベル:3
名前:サラ 称号:新米 種族:人間 加護:アマテラス
スキル:【主人公適正】【記憶相続】【魔法適正】
魔法・剣技:《初級剣技》《中級魔法》《雑用魔法》
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中級魔法とまとめられているが、これはつまり中級の魔法を全て使えるという事のようだ、俺と比べて能力値も知力が高めの魔法使いのステータスのように見えるが筋力や技量もそれなりにあるように思える。
今の所思うのは主人公適正を持つものはみんなステータスが高いのだろう、そして神の持つ特性や性格によって伸びや魔法などに影響が出る……と予想している。
サラのスキルである魔法適正、これはどうやら消費MPを抑えるスキルのようだ。
「とりあえず討伐系の依頼でも探しに行くか、ほら」
「お、サンキュ」
パンとジャムを渡して二人で朝食にする、サラの戦闘スタイルは基本的には魔法を中心としたものらしく、武器はまだ持っていないそうだ。
ギルドへ登録する為に旅をする途中でオオカミやゴブリン、コボルトと接敵したそうでそのおかげでレベルが上がっているらしい。
「とりあえずコイツ使うか?」
「お? いいのか?」
バスターソードをアイテム欄から取り出す、どうせ使うかどうかも怪しいものだ、戦力強化に繋がるなら渡しておいた方がいいだろう。
「ありがとう! 早速試し斬りに行こうぜ!」
「まずは掲示板のチェックだな、そこに何も無かったら詰め所に行こう」
俺たちは村の掲示板をチェックする、するといくつかの依頼が貼り付けてあった、思わぬ誤算だ。
「お、結構あるじゃねえか!」
「どれ……討伐依頼に採取依頼に……配達?」
配達の依頼は持っていくだけでいいらしく帰る必要は無さそうだ。
「とりあえずこの2つは受けとくか」
「薬草採取? こんな依頼受けなくてもいいんじゃないか?」
「金がねえと飯も食えねえだろ? それに討伐依頼のついでで集めるだけで追加が貰えるって考えたら得じゃないか?」
「へぇ……流石ゲーマーだな!」
「はは、それじゃ行くか」
今回は依頼者に話をしに行く事はしない、毎回するのは面倒な上に今回は場所も数もしっかりと指定されていた、討伐依頼は衛兵から、採取依頼は薬屋から出されたものだったからだろうか。
「ファイアボール!!」
俺たちはコボルト討伐依頼の為に森に入っていた、コボルトのレベルは殆どが2で稀に3のものが目に入る。
サラは剣を魔法のステッキのように操り魔法を放つ、ちなみにヘルスバーはやはり見えない、どうやら自分の感覚で判断しなければならないようだ。
「【
俺は剣に補助魔法をかける、これは初級のもので剣の攻撃力を単純に上昇させるものだ、ファイアウェポンのような属性強化魔法やドレインブレードとの組み合わせも可能なようでもっとレベルが上がれば戦闘の幅は広がりそうだ。
「よっと」
軽く剣を振るう、レベル差もあるおかげか簡単に屠る事が出来た。
まだまだ補助魔法をガンガンかけながら戦うにはMPが心もとない、いや、初級でやりくりする分には十分なのだがケチ精神が出てしまうのだ、エリクサー使えない病と似たようなものだと思ってもらえばいい。
「よっしゃあ!! くらえ!!」
ガァッ!!
「ぎゃああ!! やられた!!」
「もしかして近接戦闘は初めてか?」
意気揚々とサラが剣を掲げてコボルトへと斬撃を放った、命中したものの一撃では倒せなかったようでコボルトの持つ欠けた剣がサラへとクリーンヒットしていた、リアクションをするサラへと追撃しようとするコボルトを俺が思い切り突き刺す。
「あれ、何ともないな……? どういうこった?」
「アマテラス、説明してないのか?」
「忘れていました……魔法で近付かれる前に撃破していたのでうっかり」
「サラ、この世界ではどうやら――」
大雑把に自分の知っている事を説明する、するとサラは
「剣術はサッパリなんだよな、だからか?」
「魔法だとかの所にある武器術のおかげで補正は結構あるみたいだけどな、俺も剣は殆ど振ったことなかったし」
「それにしては慣れてるように感じたけどな」
「中学の頃に剣道してたからかな? そんな大した実力じゃなかったけど」
一応剣道二段の資格は持っている、しかし俺は試合でもいい成績はとれずこんな命のやり取りと言っていい所で活かせるほどのもの実力は無かった、ましてや剣道をやめて何年か経っている為忘れている事も多いはずだ。
「やった事のあるものか……ってなると俺は銃だな」
「金が貯まったら買ったらどうだ?」
「あるのか?」
「使い勝手は違うかもしれないけどな、まぁ見てみればいいさ」
サラは武器屋には立ち寄らなかったのだろうか、採取目標の薬草を回収しつつサラのレベリングついでにサラの武器を買う事が次の目標となった。
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