第27話 拠点構築 2


 俺達の拠点候補地として譲渡された土地は超巨大駐車場跡地だった。

 戦前はここに車を停めて地下鉄に乗ったりしていたのだろうか。


 俺は拠点モードを展開し、放棄されて動かなくなった車を次々と素材に変えていく。


「旦那様のロストテクノロジーは凄いね。あんなにあった車の残骸が一瞬で消えたよ」

「ん、分解して構造調べてみたい」


 次々と目の前から車が消えていく様子にジェーンは目を白黒させ、セイは拠点モードの仕掛けを調べようと俺の行動を凝視する。


「まずは防衛部隊のゲートも含んで囲むか」

「もう隠さずに行くんですか?」


 傍にいた桐山が俺の呟きを聞いて問いかけてくる。


「ああ、下手に力を隠して中途半端な物作った方がノース・サンズにとっても俺達にとってもよくない結果になるからな」


 駐車場からゲート全体をコンクリートの分厚い壁で覆う。

 突如現れたコンクリートの壁に見張りをしていた防衛部隊の隊員が驚いているのが見えた。


「なっ、何やってるんですかああああ!」


 防衛部隊の人員が血相を変えてこっちにやってくる。

 やってきたのは蟻の巣を破壊する時にハンドカーを運転したジョージだった。


「あー、ジョージじゃん! 元気―?」

「はいっ! 自分は元気でありますっ!!」


 ジョージの姿を確認した工藤が手を振って挨拶すれば、ジョージは耳まで真っ赤にして緊張した様子で最敬礼しながら工藤に返事する。


「急にコンクリートの壁が現れたのですが、何事ですか!?」

「ああ、旦那様のロストテクノロジーで壁を作ってるんだ。首長の許可は取ってる、問題はない」

「えーっと……首長の許可があるなら……失礼しました!」


 ジョージは急に現れたコンクリートの壁を確認しにやってきたようで、ジェーンが問題がないと伝えると数度壁とジェーンを交互に見て、問題ないと自分に納得させたのか了解しましたと敬礼して自分の持ち場に戻っていく。


 

 ノース・サンズの出入り口も含めて四方をコンクリートの壁で囲み、東西南北四方に車両用のゲートとその脇に年限用のゲートを設置する。


 次にコンクリートの壁にサーチライトとレーザーターレット、マシンガンターレットを交差するように設置していく。


「あたしがメガシティ軍だったら……ここを攻める位なら自殺を選ぶわ」


 次々と設置されていくターレットを見てジェーンはぼそりと呟く。


「深山ッち、そんなに設置して拠点容量大丈夫?」

「容量無制限MODのおかげで材料がある限り設置し放題だ」


 次々とターレットを設置していくのを見て工藤が容量は大丈夫か聞いてくる。

 拠点の設置要領を無制限にするMODを入れていると伝えると工藤は納得したようだ。


「深山さん、建築材料は大丈夫です?」

「ああ、元々のアイテムMODと工藤の完成拠点にあった分、建築者のパークスキルで建築材料を抑えられる」


 桐山は俺が次々とターレットを設置していくのを見て建築材料の在庫が大丈夫か聞いてくる。


 元々アイテムMODのおかげで豊富な在庫を持っており、工藤が持っていた完成拠点にあった建築材料を回収し、また建築者という建築に必要な材料数が最大50%減らすことができるスキルパークを習得しているので、よほど馬鹿な使い方しない限り建築材料はは底をつくことはないだろう。

 

 ゲートの上には警備塔を建て、仮眠が取れるように簡易ベッドとイスとテーブルを設置する。

 ここから周囲を見張れるように防弾ガラスを張り、双眼鏡とマイクスピーカー、ターレットの起動やゲートの開閉が行えるスイッチを設置していく。


「……俺の部屋より快適かも……」


 使い心地など確かめてもらう為に防衛部隊のジョージを見張り塔に招き、内装を見てもらうと、ジョージは乾いた笑いを漏らしながら地下鉄内にある自分の部屋より快適だと呟いた。


「とりあえず外周部分はこれでいいだろう。まずは防衛部隊と食料調達部隊の宿舎を作るぞ」

「え? そこまでしてくれるの!?」

「こんな感じの宿舎作ってくれるんですかっ!? 一生ついていきます、兄貴!!」


 外周部分の設置を終えて、次に地上で活動する防衛部隊と食料調達部隊の宿舎を作るというとジェーンは予想していなかったのか驚き、ジョージは目を輝かせて拝む勢いで俺を兄貴と呼んで慕ってくる。


「ジェーン、ジョージ、双方の部隊の総人数と男女比は?」

「防衛部隊は隊長のグランパさん入れて男が15、女が5の総勢20人です」

「食料調達部隊はあたしを入れて男が9、女が6の15人」


 ジェーンとジョージからそれぞれの部隊総人数を聞いて部屋の間取りなどを頭の中で構築する。


 一階部分は談話室に食堂等双方の部隊が集まって食事や寛げる場所と、室内射撃場、トレーニングルーム、俺達がクラフト作業や車両が置けるガレージエリアを作る。


 二階は中央に階段とエレベーターを設置し右側を男性宿舎、左側を女性宿舎に分ける。

 部屋は個室で増員しても大丈夫なように部屋数を多めに作る。室内は電灯にベッドにテーブルと椅子、私物を入れるとランクを設置していく。部屋にユニットバスを設置するMODをインストールしていたので、それを使うと配管とか何処にもつながっていないのになぜか奇麗な水が出て、どこかに流れていくユニットバスができた。


「んー? この水は何処からきて何処に流れている?」

「浄水器も何もないのに奇麗な水が流れてる……」

「ロスト・テクノロジーだ」

「ロスト・テクノロジーすげえ!」


 セイは蛇口を弄ったりしてどこから水が流れているか調べようとし、ジェーンは浄水器もなしに汚染されていない飲料可能な水が出てくることに驚いている。

 とりあえず俺はMODのユニットバスの効果をロストテクノロジーによるものとごまかしお茶を濁すと、ジョージが更に尊敬の念を込めて俺を見つめていた。


「三階は俺達のエリアだ。……桐山、工藤、ちょっと実験に手を貸してくれ」

「実験……ですか?」

「何するし?」


 大まかに三階フロアを作ると俺はあることを思いつき、霧島と工藤を呼ぶ。


「建築材料を渡す。お前達拠点モードを開いてここを弄れるか試してくれ」

「え!?」

「あー、なんか面白そうだし」


 無限バックパックから建築資材を取り出し床に置く。

 桐山と工藤は拠点モードを開こうと試みる。


「あっ! 弄れます!」

「ほんとだ、あたい達もここ弄れるし!」


 桐山と工藤が手を動かすと、何も置いていなかった三階エリアに壁が出現し、バックパックから取り出した建築材料が消費されていく。


「これは危険だな……」

「え? なんでですか?」


 内装を決めていく桐山と工藤を見て俺が呟くと、桐山が振り向いて聞いてくる。


「条件があるかもしれないが他人の拠点を弄ることができる。万が一他のプレイヤーと敵対した時、こういった拠点に閉じこもっても壁やターレットを除去して攻め込まれるぞ」

「あ……」

「逆を言えばあたい達もその手で攻めることができるし?」


 俺が設置した拠点を同じプレイヤーである桐山と工藤が弄ることができる。

 今後出会うプレイヤーと万が一敵対した場合、籠城戦は意味がない可能性が高くなった。


「これの対策も考えていかないとな……すまないが二人とも、内装を決めたらしばらくは拠点モードは使わないでくれ、敵に情報を渡したくない」

「……そうですね……わかりました」

「おっけー、わかったし」


 桐山と工藤にしばらく拠点モードを使わないようにお願いすると俺はジェーンとセイの方を向く。


「二人は部屋のリクエストはあるか?」

「あたしたちの個室も作ってくれるのかい? なんなら同室だってあたしはいいんだよ?」

「ん、夫婦は一緒」

「お互いプライベート空間は必要だ。俺も一人になりたい時がある。リクエストがないなら俺の感性で作るぞ」


 ジェーンとセイに部屋の希望を聞くと俺と同室でいいと言ってくる。

 俺はそれを無視して二人の個室を作る。

 俺、桐山、工藤、セイ、ジェーンの部屋を作るが、三階エリアは半分以上スペースが開いているので簡易の談話室を作っておく。


 最上階の屋上には巨大なラジオ塔を建てる。

 ゲームではこのラジオ塔を利用して拠点にNPCの入植者を募ったり、敵が襲撃してくるとサイレンを鳴らしたり、MODを追加するとゲームフォルダに入れた音楽を放送したりする。


 今回ラジオ塔を設置した理由は他のプレイヤーにメッセージを送るためだ。


『俺の名前は深山裕次郎、異世界トリップMODによって日本からこの世界に来た。俺以外のプレイヤーがいるのならばノース・サンズに来てくれ、元の世界に戻る方法を探している。座標は———』


 他のプレイヤーに向けてメッセージをリピート放送設定して流すようにする。

 間に休憩や食事をとりながら一日中拠点政策に時間を費やしていた。

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