第25話 幕間:ノース・サンズの人たち 2



 ノース・サンズの集落、首長の家でもある駅長室にノース・サンズの主要な住人が集まって会議を行っている。


 以前の会議の時と違って駅長室はランタンの薄暗い明かりではなく、電気の明かりで部屋の隅々まで明るく照らされ、空調が効いた快適な室内は以前のような暑苦しくよどんだ空気も消えている。会議用の長テーブルの上に置かれたコップには製氷機から精製された氷で冷やされた汚染されていない奇麗な水が入っていた。



「以上が発電所での出来事よ」


 会議室ではジェシーが発電所を再稼働するまでに起きた出来事を説明していた。


 深山達が発電所を再稼働したことで電気が送電され、ノース・サンズに明りがついた。


 当初、突如ノース・サンズ地下鉄駅構内に明りがついたことに住人達が混乱した。

 特に電気の存在を知らない子供達や、電気の供給が止まってからノース・サンズに入植した人々の混乱はすさまじく、防衛部隊全員で対応することになった。


 そんなトラブルもあったが、電気が戻ってきたことに住人達は大喜びしている。

 だが、会議室に参加している全員は三者三様の表情を浮かべていた。


 会議の議題は傭兵たちに地上の土地を譲渡するか?

 譲渡するならどこまでの広さにするか、譲渡して危険はないかと話し合っていた。


「土地を渡すのは反対だ。我々の脅威となる!」


 前回の会議で深山達はサンアンジェルスのスパイだと騒いでいた住人が土地の譲渡に反対だと意見を述べる。


「では発電所の再稼働の報酬はどうする気だ?」

「そんなもの、適当にチップでも握らせてればいい!」


 対面にいた中年の住人が土地の代わりの報酬はどうするつもりだと言えば反対意見を述べていた住人はカジノチップを渡せばいいと言い返す。


「適当に? いくらだ? 我々がずっと求めていた電気だぞ? しかも傭兵は発電所に巣食っていたクリーチャーだけでない、デッドウォーカーすら退治したのだぞ! 100や200で済む話じゃないんだぞ? ノース・サンズにあるチップだって有限だぞ」


 バンとテーブルを叩いて中年の住人が反対意見を述べる住人に怒鳴る。

 反対意見を述べていた住人は反論が思いつかないのか無視するような態度を取る。


「はっ! デッドウォーカーの大群と戦ったなんて、どうせ報酬の上乗せを目論んだ傭兵の吹かしだろ」

「へえ、あたしが嘘ついてるっていうんだ?」


 反対意見を述べていた住人は鼻で笑いながらクリーチャー退治は傭兵の嘘だと主張する。

 その瞬間、ジェーンは微笑みながら腰のガンベルトに差した銃に手をかけながら反対意見を述べる住人を睨む。その目は怒りに染まっていた。


「いやっ……そういう意味じゃ……」

「へえ、じゃあどういう意味なんだい? あたしにもわかる様に説明してほしいねぇ?」

「ジェーン、銃から手を放しなさい。そしてあなたも憶測だけで物事を進めないように」


 首長のマリアが裁判所などで見受けられる木づちでテーブルを叩いて仲裁に入る。

 反対意見を述べていた住人は不承不承という顔で俯く。

 ジェーンは両手を上げたまま自分の椅子に座り、机に足を乗せる。マリアが睨むとジェーンはヘイヘイと言いたげに億劫な仕草で机から足を降ろした。

 

「さて、話を戻しましょう。現状我々ノース・サンズは傭兵深山達の助力によって電気の恩恵を受けています。さらにはデッドウォーカーの群れから発電所を守ってもらいました。これに見合う報酬を土地以外で払えるものがありますか?」


 マリアが問うと会議に参加した住人達が隣同士ひそひそと話し合う。

 話し合うが、具体的な案は出ていないと言った感じで時間が無駄に過ぎていく。


「やはり、土地を渡すしかないだろう」

「ですが……もし彼らが悪意を持って我々に迫ってきたら……」


 異常な軍事力を持つ深山達が自分たちに牙を剥いたらと恐れており、一部の住人が土地の譲渡に関して消極的な反対の意思を表明する。


「それに関しては打開できるかもしれない方法はあるよ」


 土地の譲渡に消極的な住人達に向かってジェーンが打開案があると述べる。


「ジェーン? その案とは?」

「あたしとセイが深山に嫁入りする。血縁となれば深山も動きにくいだろうし、あたしと結婚すればノース・サンズに銃を向けることはない。いずれ手に入るんだから。そうだろ、母さん」

「ジェーン、公共の場では首長と呼びなさい」


 首長のマリアが代案の内容を聞くとジェーンとセイが深山に嫁入りすると伝え、ジェーンはマリアに向かって母と呼ぶ。

 マリアは少し困ったような顔をして公共の場では首長と呼ぶようにと公私の仕分けを口にする。


「貴方が嫁に行くのは分かりました。ですがなぜセイまで巻き込むのです?」

「発電所にデッドウォーカーが向かってるとわかった時、セイが言ったんだ、自分を報酬にするから発電所とノース・サンズを守ってってな」

「セイ、本当か?」

「ん、本当」


 ジェーンの話を聞いてグランパがセイに声をかける。

 セイは何時ものように短い言葉で肯定する。


 また住民たちがざわつく、だが今度は否定的な意見より、深山と血縁になれるならと土地の譲渡に関しても肯定的な意見が多く出ている。


「……では、傭兵たちにはノース・サンズに防衛力の提供を条件に土地を譲渡。ジェーンとセイを嫁に出してノース・サンズとの血縁を結び婚姻同盟を結ぶ。この方針でい行きます」


 首長であるマリアは最終的に、深山が持つロストテクノロジーを駆使した防衛力の提供を条件に土地の譲渡、ジェーンとセイを嫁に送り血縁関係を結ぶことで婚姻同盟を構築することを決定する。


 こうして二度目のノース・サンズ会議は終了した。

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