第21話 クエスト:発電所再稼働 2


「ねぇこれ、分解していい?」

「へえ、深山とは最近出会ったのか」

「そうだし、でも頼れる人だし」

「そうですよ、深山さんはいい人です」


 昔から女が3人以上集まればやかましくなるといわれているが、それは事実だと今日ほど思ったことはない。


 川の上流にある発電所を目指し多目的機動戦闘車を走らせる。

 後部座席ではジェーンと桐山と工藤が俺の話で盛り上がり、セイがハンガーラックに固定されているオートプロテクターを見て分解していいかと聞いてくる。

 俺はそれを無視しながらカーラジオから流れる音楽に耳を傾けて現実を逃避している。


「ここから先は徒歩で行くぞ」


 放置された車両の残骸を避けながら川を遡るように走る事2時間弱。遠くにダム型の水力発電所が見える位置で多目的機動戦闘車を停める。

 先ほどまできゃいきゃい騒いでいた女性陣が俺の指示を待つように黙る。


「俺と桐山と工藤はオートプロテクターに着替える。ジェーンとセイは着替えが終わるまで外に出るなよ」

「オーライ」

「ん」


 オートプロテクターの装着を終えてから俺達は下車し、周囲を調べる。

 発電所周辺は放棄された車両や蔦が侵食して巻き付いてる錆びた送電用の鉄塔などがある。


「桐山、ジャバウォックの動体レーダーを起動させて、リンクしてくれ」

「えーっと……あ、これかな?」


 桐山に電子専用オートプロテクター【ジャバウォック】に搭載されている動体レーダーを起動させるように指示する。


 桐山は最初レーダーの起動の仕方に戸惑ったが、ウィザードのスキルパークのおかげか、すぐに操作方法を理解し起動、俺と工藤のオートプロテクターのメインカメラにリンクさせる。


「脅威となる対象はいなそうだな……俺と工藤が先頭、真ん中にジェーンとセイ、殿は桐山でいくぞ」


 レーダーにはリスなど小動物と思われる反応のみで、こちらに向かってくる大賞もいないことを確認すると隊列を組んで発電所に向かう。


「見た限りじゃ問題なさそうね」


 ジェーンは二丁のリボルバーを両手に持って周囲を見回す。

 セイはジェーンの横にくっつくように同行し、ショットガンを構えながら歩いていく。


「まずは川を調べるぞ」


 ダムの駐車場を抜け、ダム真下の川に向かう。


「やはり水の量が少ないな」

「どういうことだい?」


 俺はダム下流の川の水の量を見て、クエスト通り川の水の量が少ないことを確認する。


「この発電所はダム水路式と言ってダムで貯めた水を水路に導き、水流でタービンを回させて発電する。ダムに貯めてる水がなければタービンを回せず電気を生産できない」

「へえ……」


 一緒に川を覗き込んでいたジェーンは感心したように声を漏らす。セイは無言でふんふんと頷いて俺の話を聞いていた。


「それに、発電所が静かすぎる。タービンが動いていれば電線の音が聞こえてくるはずだ。ダムの向こうに水が溜まっているか見るぞ」

「ん!」


 同じように川を覗いていた残りのメンバーに声をかけてダムを上っていく。


「導水路には異常はないな……」

「導水路って何?」


 ダムの階段をのぼりながら、所々むき出しになっている導水路を確認していると、工藤が導水路について質問してくる。


「ダムの貯水池の水圧が高くなると水がそこを通って流れを一か所に集中させて、タービンを回す水路だと思ってくれ」

「へー、へー、へー」

「お前……歳幾つだ?」

「18だし!」


 導水路についてかみ砕いて説明すると工藤はへーと連呼しながらボタンを連打する仕草をする。俺は工藤のリアクションを見て思わず突っ込んでしまった。


「さて、こっちはどうなっているかな」


 そんな話をしながらダムの最上階エリアに到着すると、貯水池を覗き込む。


「こっちは水が溜まってるね。何が悪いんだ?」

「んー?」


 同じように貯水池を覗き込んだジェーンが何が悪いのか一緒に覗き込んだセイに声をかけ、セイが分からにと言いたげに小首をかしげる。


 ゲームでは導水路の吸い込み口にゴミが溜まり、それを駆除するために無駄にあちこち盥回しされてゴミを排除していく。


 これをショートカットできるルートもあり、直接貯水池に潜って手動でゴミを除去する方法もあるが、水が汚染されてる上に、水深が深いので何の準備もせずに潜ると溺死か汚染死してしまう。


 別の場所で防護服や汚染耐性を上昇させる薬品摂取、酸素ボンベか一時的に水中呼吸ができる料理バフ、アクアマンと言う水の汚染無効と水中呼吸ができるスキルパークがないとショートカットルートは苦しい選択肢だった。


「おそらく、導水路の吸い込み口にゴミが溜まっているんだろう。まずはタービン室のキングス弁を閉めないとな」

「首長があんたは知識を持っているって言ってたけど、本当だったようだね。あたしたちに手伝えることは?」

「今は桐山たちと一緒に周囲警戒してくれ。こういった建物はクリーチャーの巣になってたりする」

「OK!」


 タービン室へ向かう途中、ジェーンが何か手伝えることがないかと聞いてくる。

 俺は桐山たちと周囲警戒に当たるように伝えて、タービン室のキングス弁を閉めに行く。


 キングス弁を封鎖せずにショートカットルートでゴミを除去すると、導水路に吸い込まれてタービンによってずたずたに引き裂かれてゲームオーバーになる。


 周回プレイでうっかり閉め忘れて吸い込まれてゲームオーバーになり、セーブもほとんどしていなかったため、かなりゲーム序盤迄巻き戻されたこともある。


 ごみを除去しても吸い込まれないようにタービン室のキングス弁を閉める。

後は俺が直接潜って拠点モードでごみを撤去するだけだ。


「あっ! レーダーに反応あります!」

「どこだ?」


タービン室のキングス弁を閉め、ダムの最上階まで戻ると桐山の動体レーダーに小動物以外の反応があったようで叫ぶ。


「あそこです! モルグが5体、水を飲みに来たようです」


 桐山が指差す方向に貯水池の水を飲みに来たと思われる犬型クリーチャーのモルグがいた。


「あっ! 別の動体反応……えっ、何これ!?」


 桐山はさらに別の動体反応をレーダーで感知したが、様子がおかしい。


「おいおい、これは洒落にならないぞ」


 オートプロテクターのモニターにリンクしているジャバウォックのレーダー画面を確認すると、貯水池から水を飲んでるモングルたちに近づく巨大な魚影がレーダーに感知されていた。


 そしてそれは、ザバァッと大きな水飛沫をあげて、水上に巨大な姿を現す。


「何あれ!」

「頭が2つある鮫!?」


 姿を現したのは頭部が二つある全長5mはありそうな巨大ホオジロザメ。

 ホオジロザメは水上に姿を現すと、水を飲んでいたモルグの一匹に噛み付く。


もう片方の鮫頭も獲物を求めて鋭い牙が生えた口を大きく開けて逃げ遅れたモルグに噛み付く。


「おいおい、ここはB級鮫映画の撮影現場かよ! 宇宙いったり、竜巻に乗って移動しないよな?」


 そんな悪態をつきながら双頭鮫の様子を伺う。

 双頭鮫は食欲旺盛なのか、モルグ一匹では足らなかったようで、残りのモルグにも襲いかかろうとするが、残りのモルグ達は水辺からすでに避難している。


「は? 何あれ? あり得ないし!?」


 工藤が唖然として驚くのも無理もない。

 双頭鮫は水辺から離れたモルグを追いかけて上陸した。


 上陸したことで双頭鮫の全身がダムの上から確認できる。

 双頭鮫の下半身は白いアルビノ肌の鰐の下半身だった。


 双頭鮫は鮫部分の上半身で地面に削り掘りながらモルグ達を追いかけて噛みつき、鰐のようにデスロールを繰り返して肉を噛み千切る。


  モルグ達は断末魔の悲鳴をあげ、血肉を辺りに飛び散らせて絶命する。


 獲物を食い散らかし、口の回りを赤く染めた双頭鮫は貯水池へと戻り、水底へと潜っていった。


 あの双頭鮫をどうにかしないと吸い込み口のゴミを除去なんてできないだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます