第20話 クエスト:発電所再稼働 1


「発電所を……調べたいですか?」

「ああ、昨日食料保管担当のジョンという人が昔は電気が通っていたとか発電所があったといってたのが気になってな」


 翌日、蟻の巣の破壊を確認できたと連絡があり、首長の部屋でもある駅長室に来た俺は蟻の巣破壊の報酬を受け取る最中、発電所について話を持ち出す。


「ええ、確かに昔は川の上流にある水力発電所から送電されてくる電気で暮らしていました。ですが……ある日突然送電が止まり、様子を見に行かせましたが……この集落の者にそのような専門的な機械知識を持つ者はおらず、結局原因は不明のままです」


 首長のマリアは過去に発電所に調査隊を向かわせたが、発電所の施設に関する運用や修理知識を持つ者がおらず発電所が稼働停止した理由も何もわからなかったという。


「深山さん……貴方はそういった知識も持っているのですか?」

「聞きかじり程度だがな。それが今回の発電所に通用するかは保証しない」


 マリアは恐る恐るといった感じで知識があるのかと聞いてくる。

 クエストで発電所が止まった原因と再稼働の手順を知っているだけだが、馬鹿正直に説明してもこの世界の住人は理解できないだろう。


 発電所に関して知識があると答えると駅長室の中がざわつく。

 特にざわついているのが年配の住民達だった。もう一度電気のある生活ができるのかと期待するような目でこちらを見てくる。


「……もし発電所を再稼働することができればそれはこのノース・サンズにとって喜ばしいことです。調査をしてきてくれますか?」

「ああ、発電所を再稼働させることができた時には報酬としてノース・サンズ

の地上部分の土地を貰いたい」

「土地を……ですか? 理由を聞いても?」


 発電所の調査を依頼してきたマリアに対して俺は報酬に土地を要求する。

 マリアは土地を欲しがる理由を聞いてくる。


「ここに俺たちの拠点を作るためだ。工藤のように散り散りになったプレイヤーを可能な限り集めたい。俺たちが作る拠点には、そちらにもメリットはある」

「メリットですか?」


 俺が土地を欲しがる理由をマリアに説明する。

 そちらにもメリットがあるというとマリアはこちらに耳を傾けた。

 

「ああ、俺が作ろうと思っている拠点には防衛用にターレットなどを設置する予定だ。ジェーンから聞いたが、メガシティのサンアンジェルスと揉めているとか? 俺たちの拠点が防波堤にもなるはずだ」

「……さすがにこれは私の一存では決められません……時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

「まあ、まずは発電所が再稼働できるか見てからだな。それができなきゃ拠点作りも机上の空論、絵に描いた餅さ」


 話がでかすぎるのかマリアは消極的だ。まあ集落の指導者としてはそれぐらい慎重なほうがいいのかもしれない。

 いったん保留という形で話を切り上げて、俺達は件の発電所へ向かう準備をする。


「土地が欲しいとはずいぶんとでかく出たのう?」


 駅長室を出るとグランパが声をかけてくる。


「電気を取り戻せればそれぐらいは当たり前の対価だと思ったが?」

「土地を貰い、拠点を作り、仲間を集めて何をするつもりじゃ?」


 グランパは雑談感覚で聞いてくるが抑えきれない殺気が漏れているのが俺にはわかってしまう。

 銃やオートプロテクターなど最新鋭の軍事兵器で武装した素性のよくわからない傭兵が自分たちの家の近くに住もうとしている。気味悪がって警戒するのも無理もない。


「プレイヤーを集めて、全員で故郷に戻るためさ」

「故郷か……そこまでして戻りたい場所か? おぬしほどの力があれば集落の一つや二つ支配もできるであろう」

「めんどくさい。俺はこの両手で抱き抱えられる程度しか面倒見切れん」


 プレイヤーたちを集めて何をすると問われ、俺は全員で元の世界に戻るためだと答える。

 グランパはそれだけの力があれば他者を支配することもできると聞いてくるがそんな面倒なことはごめんだ。


「……信じよう」

「そりゃどうも」


 しばし無言でグランパと二人で駅構内を歩く。不意にグランパが俺に向かって信じようと呟き、防衛部隊の元へと去っていく。



「発電所に向かうことになったぞ、準備しろ」


 部屋に戻れば桐山と工藤が銃の手入れをしながら俺の帰りを待っていた。

 といっても専門的な知識はないのでガンオイルで汚れを取るように拭き上げてるだけだ。


 つい最近までは銃すら握ったことがない少女たち。

 運悪くというか本当に異世界にトリップしてしまうMODを入れてしまったがためにこんないかれた世界に投げ出され、今では銃を握っている。

 元の世界に戻れたなら、こんなふざけたMODを作った張本人をぶん殴ってやらないと気が済まない。


「土地は貰えそうですか?」

「あたいは自分の部屋がほしいし」


 俺が部屋に戻ってくると、二人は作業を止めて土地が手に入ったか聞いてくる。

 工藤に至っては自分の部屋の間取りの希望を口に出してる。


「土地に関しては保留だ。首長一人の一存では決められないらしい」

「首長って一番偉い人だよね? その人が土地をあげるーっていえば、決まりじゃ?」


 土地に関しては保留になったというと工藤は首長が鶴の一声ですべて決まると思い込んでいるようだ。


「そういうわけにもいかないのが世の中ってやつさ。さっきも言ったが発電所に向かうぞ」

「はい!」

「準備オッケーだし!」


 整備の道具を収納し、地上連絡口の階段を上り地上へと出る。

 

「ん、やっときた」

「まってたよ」


 停めてある多目的機動戦闘車に向かうと、セイとジェーンが俺たちを待っていた。


「どうした? 何か用か?」

「あたしたちも発電所に連れて行ってほしいのよ」

「ん、機械修理得意」


 ジェーンとセイに声をかければ、二人は俺達と発電所に同行するといってくる。

 セイはカバンからドライバーを出して両手に持ってふんすふんすと鼻息荒く機械修理の腕をアピールする。


「おいおい……外には何があるかわからないんだぞ」

「あたしは自分の身は自分で守れるよ」

「ん!」


 ジェーンは腰のホルスターに収納したリボルバーを叩き、セイは小型の二連ショットガンを掲げて戦えるとアピールする。


「連れて行ってやってくれんかのう?」

「グランパ……」


 ジェーン達と話しているとゲートの見張りをしていたグランパがいつの間にか傍にいて、二人をつれ行ってほしいと伝えてくる。


「命の保証はないぞ」

「両手で抱えられる程度なら面倒見れるのじゃろ? 今更女子が1人や2人増えた程度で抱きかかえられないほどの短くて弱い腕でもなかろう? セイから聞いたぞ。工場跡でサブクアンに追われたとき、セイとそちらのおっぱいが残念な娘っ子抱きかかえて走り回ったとか?」


 ノース・サンズ側の意図がわからないが、今回の発電所の調査にジェーンとセイを同行させたいようだ。


 遠回しに来るなという意味を込めて命の保証はないと伝えるが、グランパはニヤニヤと笑いながら分かれる前に行った俺の言葉や、浄水器の修理部品を探すときにサブクアンたちから逃げる際にセイと桐山を抱きかかえて逃げたことを持ち出してくる。


「私はこれからなんです! 雫さんはおっぱいアピールしない! 下品ですよ!!」


 グランパの声が聞こえたのか桐山が胸を隠してグランパに抗議して、悪ふざけに胸を強調するグラビアポーズをとる工藤を注意する。


「俺の指示には従え。命の保証がないということを覚悟しろ。それに同意ができるならついてこい」

「もちろん。食料調達部隊で外に出るたびに何度もそういった目には合ってきてるよ」

「ん、約束する」


 俺は深くため息をついて指示に従え、命の保証がないと伝えて多目的機動戦闘車の後部ハッチを開けると、俺はジェーンとセイに「乗れ」とばかりに、顎をしゃくった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます