第17話 新たなプレイヤーとクエスト:アリの巣退治3


「首長から話は聞いております。巣迄の案内は防衛部隊所属ジョージ・アームストロング・カスターが務めさせてもらいます!」

「ぶふっ!?」


 地下鉄のホームに向かうと昔見たアメリカの南北戦争時代の軍服によく似た服装の青年がハンドメイドのパイプ銃を背負って敬礼していた。

 青年がジョージ・アームストロング・カスターと名乗った瞬間、俺は思わず吹いてしまう。


「深山さん?」

「深山ッち?」

「いかがなさいました?」


 いきなり吹いた俺を見て桐山、工藤、カーターがこちらを見てくる。


「ゴホン、すまない……君の名前が知り合いとよく似た名前だったもので……」

「そうだったんですか」


 ジョージ・アームストロング・カスター、南北戦争時代の北軍の将軍だった男の名前だ。

 どうもこの世界、俺達がいた世界の偉人の名前を使っている節がある。


「皆様の準備がよろしければさっそく出発しますが?」


 そう言って線路の上には木製の四人乗りの人力トロッコが設置されていた。


「これがハンドカー?」

「はい! これに乗って目的地まで移動します。漕ぐのは私の役目なのでご安心を!」


 工藤と桐山は物珍し気にハンドカーを見ている。

 ゲーム画面でしか見たことない物が実物となって目の前にあれば興味がわくのも仕方ない。


「さっさと乗るぞ」

「あ、はーい!」


 俺と桐山、対面に工藤とジョージが乗車する。


「ジョージだっけ、あたい工藤、よろしくだし」

「はいっ! 現場まで誠心誠意もって全力で案内します!!」


 ジョージの隣に座った工藤は笑みを浮かべて挨拶すると、ジョージは顔を真っ赤にして鼻息荒く大きな声で返事をする。

 あんなプロポーションの女性が隣に座れば男ならそうなるのも仕方ない。


「残る者達に幸運を!」

「旅立つ者達にも幸運を!」


 ジョージがホームにいた住人達に残る者たちに幸運をと掛け声をかけると、ホームいた住人達は作業の手を停めてジョージ達に旅立つ者にも幸運をと返す。


「出発します!」


 ジョージはハンドカーの真ん中にあるレバーを漕ぐ。ひと漕ぎするたびにハンドカーがゆっくりと動き出し、徐々にスピードを上げる。


 線路はあまり手入れされていないがハンドカーの走行には支障はない。

 光源はハンドカーに面下げられているランタンのみでかなり暗い。

 キコキコとレバーを漕ぐ音とカタンカタンとレールを走る滑車の音が地下鉄構内に響く。


「ジョージ、頑張れ頑張れ!」

「はいっ! 頑張ります!!」


 工藤がジョージを応援すると、ジョージは良いところを見せようとハイペースでレバーを漕ぐ。


「あまり無理するなよ」

「自分体力には自信ありますから!」


 やんわりと注意するが、ジョージは工藤に良いところ見せたい一心で頑張るアピールをする。


「ジョージ、スピードを落とせ!」

「は、はいっ!」


 ハンドカーの進行先が緩いカーブになっており、曲がり角ギリギリにジャイアントアントの後ろ腹部がちらりと見えた。

 ジョージにスピードを緩めるように言うと、ジョージは漕ぐのをやめて、レバー横のブレーキバーを握り、ブレーキをかけてスピードを落とす。


 ブレーキで滑車の回転を止められ、レールと滑車が擦れ合い、甲高い金属の擦れる音が地下鉄構内に響く。


 その音を聞いてか、それともレールに伝わる振動を感知して、二体のジャイアントアントがこちらにやってくる。


「ワーカーか、桐山撃て!」

「はい!!」


 桐山と俺は手に持ったアサルトライフルの引き金を引く。マズルフラッシュで地下鉄構内が照らされ、銃口から5・56mm弾がバーストモードで吐き出される。


 銃声が地下鉄構内に響き、ジャイアントアント・ワーカーは銃弾を浴びて体液をまき散らし絶命する。


「レールの金属を捕食していたようだな……」


 ハンドカーから降りてジャイアントアント・ワーカーの死体とここで何をしていたか調べると、ジャイアントアント・ワーカーはその強靭な顎でレールを何度も削り取る様に捕食していた。


「ここから先は徒歩だ。ジョージは一旦戻って、俺達が巣の駆除を終えたらレールの補修をするようにノース・サンズに連絡してくれ」

「……わっ、わかりました! お気をつけて!」


 ジョージは俺達に別れを告げると、反対側のレバーを漕いで、来た道を戻っていく。


「おっと、肉の確保も頼まれていたんだったな」


 俺は大型のククリナイフをバックパックから取り出すとジャイアントアント・ワーカーを解体する。


「深山さん、解体とかできるんですか?」

「鹿、猪、蛇……たいていの動物は捌いたことあるぞ」

「深山ッちワイルド~」


 解体を始めると桐山と工藤が物珍し気に解体作業を見学し声をかけてくる。


「うわぁ……蟻の体ってこうなってるんですか? 気持ち悪い」


 解体作業を見学していた二人だったが、工藤は解体作業のグロさに耐えれなかったのか少し離れた場所で終わるのを待っている。

 桐山は工藤と比べるとグロ耐性が強い方なのか気持ち悪いと言いつつ作業を見学している。


「おわったぞ」

「うう……ゲームだったら死体ルートするだけで肉が手に入るのに……こんなところリアルにしないでよぉ」


 解体作業を終えて蟻肉をバックパックに詰めると工藤が青い顔でゲームだったらと呟きながら合流してくる。

 実際ゲームでは死体をクリックするだけでドロップアイテムを手に入れることができた。

 この世界では実際に死体を解体したり、遺体から防具などをはぎ取らないといけないようだ。


「結構な肉の量取れましたねえ」

「スキルパーク:ブッチャーのおかげかもな」


 バックパックに収納されていく蟻肉の塊を見て桐山は感想を述べる。

 スキルパーク:ブッチャーは食べれる植物や生物型クリーチャーから採取できる肉の量を最大5倍まで上昇させることができる。

 そのおかげか蟻肉は数キロ単位の量を手に入れることができた。


「俺が前、工藤が真ん中、桐山は後方を警戒してくれ」

「あたいの分も残しといてほしいし!」

「了解です!」


 隊列を組み、アリの巣を目指して地下鉄路を進む。

 道中折って発光させた蛍光スティックを投げ捨てていき、光源を確保する。


 しばらく線路沿いに進んでいくと線路が大穴によって崩れ、その大穴から次々とジャイアントアントが這い出ては、餌を運んだり、ワーカー種が拡張した巣の土を吐き捨てていってる。

 人も簡単に出入りできるほどの大きさを誇るその穴の中には、ジャイアント・アントにとっての楽園が広がっているのだろう。


「……ここも敵強化MODが適応されているか……」

「うわぁ……ソルジャーにルーク……げっ、シルバーまでいるじゃん!」


 周囲を徘徊するジャイアントアント達をよく観察すれば、外敵との戦闘を担当するソルジャー、装甲の厚いルーク、体の表面が鏡面になっており、レーザーを跳ね返すシルバーが徘徊していた。


「あ、あたいの拠点はあそこにあるし!」


 蟻の巣の周りを観察すると、巣のすぐ近くの壁に非常口と思われる扉があった。

 あの扉の向こうが工藤の完成拠点MODによって作られた拠点があるのだろう。

 あそこに向かうには巣はともかく、入り口付近を徘徊するジャイアントアント達を何とかしないといけない。


「あ、入り口電子ロックかかってて、巣までカードキー取り行かないといけなかったんだし!」

「どっちにしろ巣は排除しないといけなかったんだ。やることは変わらない」


 完成拠点MODの一部には拠点を利用するのにクエストをクリアしたり、拠点周囲に鍵が隠されていたりする。

 工藤の完成拠点に入るにはアリの巣内にあるカードキーを入手しないといけなかった。


「まずは入り口のやつらを俺と桐山で排除するぞ。工藤は近づいてきたやつを殴ってくれ」

「おっけいだし!」


 俺は拠点モードを展開し、マシンガンターレットと金属製のバリケードを選択して設置する。


「攻撃開始! フルオート!!」

「このこのこのっ!」


 合図と同時に俺と桐山はアサルトライフルの射撃モードをフルオートに切り替えて弾幕を張る。

 ワーカー達はアサルトライフルの攻撃で倒せるが、ソルジャーやシルバーは銃弾を受けて体液を噴き出しているが怯む様子もなくこちらに向かってくる。

 ルークに至っては命中しているが傷を負っているのかすらよくわからない状況だ。


 マシンガンターレットの射程範囲に入ると、ターレットが自動的にジャイアントアント達の方に向いて12.7mm弾が発射される。

 マシンガンターレットによってソルジャーとシルバーの侵攻は止まるが、ルークは持ち前のタフネスと防御力でマシンガンターレットの弾幕を掻い潜り、金属製のバリケードを乗り越えようとする。


「あたいの番だね! せーのっ!」


 バリケードを乗り越えてきたルークに向かって工藤は肉薄すると宇宙船用の指向性炸薬ペレットが取り付けられた金属製のボクシンググローブでルークの顔を殴る。

 インパクトの瞬間、指向性炸薬ペレットが爆発し、ルークの触覚が破壊される。


「んあっ? なんかこいつ様子がおかしいし?」


 触覚を破壊されたルークはもだえ苦しむように体をうねうねとくねらせると近くにいた別のルークに攻撃を加える。

 攻撃を受けたルークは触覚を動かして何かアピールしているが、触覚が破壊されたルークはお構いなしに噛みついている。


「あっ! 深山さん、確かジャイアントアントは触覚を破壊されると敵味方見境なく攻撃を加える特性が!」

「そういえばそんなのあったな!」


 ジャイアントアントは触覚から特殊なフェロモンを分泌し、それで仲間を認識している。

 触覚を破壊されるとジャイアントアントは目と耳を潰されたような状態になり、近づくもの全てに攻撃を仕掛ける。

 ゲームでは遠距離から高火力武器の一撃で仕留めるか、無視するかだったのでそんな弱点があったことすっかり忘れていた。


「ルークは触覚を狙え!」

「はい!」

「別に倒しちゃってもいいんでしょ? なんてね!」


 俺と桐山は触覚を狙う様に弾幕を張り、弾幕を抜けてきたルークは工藤がボムシンググローブで殴り飛ばす。

 ルークの装甲が硬いと言ってもダメージを受けないわけでなく徐々に駆除されていく。


「これでっ、さいごぉぉぉ!」


 最後の一匹となったルークに向かって工藤は跳躍し、ルークの腰柄部分に拳を打ち込む。

 インパクトの瞬間、炸薬ペレットが爆破し、ルークの体が上半身と下腹部とでちぎれて別れ、仰向けになって絶命する。


「アイムチャンピオーン!」


 工藤は自分が仕留めたルークの上に乗って拳を掲げて勝利宣言していた。

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