第16話 新たなプレイヤーとクエスト:アリの巣退治2


「これが無難かな?」


 俺は無限バックパックからいくつか衣装を取り出し、工藤がその中から女性ライダーが着そうな黒のレザーのライダースーツを着用する。


「うっわ~……MODの影響かボディラインが……」

「私もそのMOD入れてからこの世界に来たかった……」

「その前にお前は未成年だろうが」


 ただのレザー製のライダースーツだったはずなのに、エロ系MODの影響か工藤が着用した瞬間、まるでR18禁のアダルトゲームに出てくるヒロインのようにボディラインが強調される。

 それを見た桐山がぼそりと呟き、その呟きが聞こえた俺はツッコむ。


「工藤はその拠点を手に入れたらどうする気だ?」

「あー……どうしようかなあ……なあ、あたいもあんた達についていっていい?」


 セクシーなライダースーツに着替え終わった工藤にアリの巣近辺にある拠点で荷物を手に入れた後どうするかと聞くと、工藤はしばし考えて、俺達に同行していいかと聞いてくる。


「ああ、仲間は多い方がいい。能力値とかレベルを教えてくれないか?」

「もちろんだし! レベルは3、筋力10、知覚1、耐久10、魅力1、知力1、敏捷1、運1だし! 2レベル時に耐久を1上げて、3レベル時に鉄拳のスキルパークを取ったし!」

「うわぁ……本当に格闘キャラで行く予定だったんだぁ」


 工藤の能力値を聞くと筋力と耐久を最大値、残りは最低値という極端なキャラクタービルドだった。ちなみに鉄拳は素手格闘攻撃のダメージを上昇するスキルパークだ。


 桐山は工藤の能力値を聞いてあきれ顔になる。


「そういう深山ッち達の能力は?」

「私は5レベルで筋力5、知覚4、耐久3、魅力3、知力3、敏捷5、運1だよ。取得したスキルパークは予防接種3とランニングマン1」

「スタンダートな能力値だし。でも予防接種3もいる?」

「この世界はゲームと違う。病気一つ致命的になるかもしれないし、この世界の病気患ったまま元の世界に戻りたいのか? 下手すれば隔離病棟だぞ?」

「………」


 工藤は桐山のキャラクタービルドを聞いて予防接種3もいるのかと疑問を口にする。

 俺がエンドレスホライズンの世界の病気の効果がゲームと現実とで違う可能性や、感染したまま元の世界に戻った時の危険性を指摘すると、工藤は事態を理解したのか顔を真っ青にする。


「次レベルあがったら最優先で取るし!」

「そうしろ」

「ところで深山っちの能力値は?」

「レベルカンスト、能力値オール10、スキルパークも全部最大値だ」

「は? チート?」

「チートMODのおかげだ」


 工藤は次のレベルアップで予防接種を取得することを聞くと、今度は俺の能力値を聞いてくる。

 チートMODで全て最大値になっている能力値だと説明すると工藤の目が点になった。



「話し合いは終わったか……の……」


 多目的機動戦闘車から降りてくると、グランパが声をかけてくる。

 工藤の姿を見た瞬間、グランパは工藤の姿に見惚れて手に持っていた日本刀を落とす。

 同じように防衛隊の面々も男女問わず工藤に釘付けになっていた。


「なあ……深山ッち、顔隠す系の防具か衣装ない? 視線が……なんか怖いし」

「これでもかぶってろ」


 取り出したのはライダー用のフルフェイスメット。工藤はサンキューと礼を言ってメットを装着する。


「グランパ、彼女の名前は工藤。俺達と同じ故郷の人間で、チームを組んで働くことになった。ノース・サンズに入る許可を貰えるか?」

「……え? あっ、ああ……わしが首長に伝えてこよう」


 工藤を集落に入れていいか聞くと、最初は惚けていたグランパが我を取り戻し、落とした日本刀を拾い上げて首長に報告してくると伝える。


「ついでに何か仕事がないか聞いてくれ。工藤も働ける所見せれば集落の住民も文句ないだろう」

「そうじゃな……仕事もついでに聞いてこよう。ここで待っていてくれるかの」


 グランパはついでに仕事の有無も聞いてくるからここで待っていろと言うと、見張りを他の隊員に任せて地下鉄の階段を下りていく。

 

「あたしはマーサー・ジェーン・キャナリー、何を食ったらそんなに大きくなるんだ?」

「うーん……MODかな?」

「ぶふっ!」


 様子を見ていたジェーンが工藤に近づき握手を求め、胸の大きさの秘訣を聞いてくる。工藤は少し考えた後にMODと答えて、桐山が吹いていた。


「MOD? 聞いたことないねえ……まあ、首長の許可さえ貰えればあたしは歓迎するよ」


 ジェーンたちと雑談をしながらグランパが帰ってくるのを待つ。

 防衛部隊のメンバーたちは鼻の下を伸ばして工藤にあれこれと話しかけたり、アピールして興味を引こうとする。


「許可が出た、また首長の家まで来てくれるか? 会って直接話したいそうじゃ」

「んじゃ、あたしは食料調達部隊を連れて、サブクアンがまた上陸していないか見回りに行くよ、またな」


 グランパが帰ってくると首長のマリアが工藤と直接会って話してみたいと言っていると伝える。

 ジェーンは自分の仕事に戻ると伝えると、部隊を引き連れてゲートを出て行った。


「へえ~、ノース・サンズの中ってこうなってるんだぁ~」


 フルフェイスメットをかぶりながら工藤は地下道を歩き、周囲を興味深く見まわる。

 ノース・サンズの住人達、特に男性たちは工藤の体を見て口笛を吹いたり、一晩いくらだと声をかけたり、卑猥な腰振りを見せつけたりする。


「首長の客人に何か用か?」


 そういった不埒な住民はグランパが睨むと青い顔して逃げ出したり、視線をそらして震えている。

 グランパはこのノース・サンズでは住民から恐れられる人間のようだ。


「集落の者が失礼した、許してほしい」

「気にしてないし、こうなるだろうって思ってたし!」


 グランパが工藤に向かって深々と頭を下げると、工藤は気にしていない素振りを見せる。


「貴方が深山さんのお知り合いの方? 見せたくない理由がなければ、御顔を見せてくださる?」

「あ、ごめんだし! 人前だから脱ぐべきだったね」


 駅長室に到着し、首長のマリアに会う。

 マリアはやんわりとした口調で工藤にヘルメットを脱ぐようにお願いし、工藤は慌てた様子でフルフェイスヘルメットを脱ぐ。


「………」


 脱いだ瞬間、工藤のサラサラの髪が巻き上がる仕草に皆見惚れてしまう。


「んんっ、ごほん……お仕事を探していると言っていましたね?」

「あ、ああ……工藤が合流したから部屋も狭くなるしな。広い部屋に引っ越したいし、こいつらの分の食い扶持も稼がないとな」


 いち早く我に返ったマリアは咳払いをして、俺が仕事を探していたことを聞いてくる。


「あなた方の実力はセイから聞いています。でしたら、この地下鉄の線路を北に向かったところにジャイアント・アントが巣を作り、隣の駅の集落との交易に支障をきたしています。徹底的に破壊してください。できればアリ肉を採取してくれると嬉しいです」


 首長のマリアは隣の駅の集落との交易に使っている地下鉄の経路にアリの巣ができて交易に支障が出ているから破壊してくれと言われる。


「報酬は?」

「……巣の破壊で300チップ。肉は重さにもよりますが一つ5~10チップで買い取らせていただきます」


 首長のマリアはしばし考えた後、ゲームと同じ報酬を提示する。


「いいだろう。それで交渉成立だ」

「準備ができましたら連絡を。目的地近くまでのハンドカーを用意します」


 報酬を了承するとマリアは準備ができ次第、ハンドカーを用意するという。

 ハンドカーと言うのはエンドレスホライズンの世界の地下鉄網で使われるトロッコのことで、ノース・サンズの住人や地下鉄を集落にしている人々はこれに乗って他の集落への移動手段にしている。


「それじゃあ、準備してくるよ」

「よろしくお願いします。無理はなさらないように」


 俺達は首長の部屋を出て、割り振られた部屋へと向かう。


「工藤、お前は戦えるのか?」

「大丈夫! 深山っち達に会うまで、モングルやサブグアンとか倒したし」


 部屋に到着すると俺は工藤に戦えるか聞く。

 工藤はシャドウボクシングしながら、俺達に合流するまでの間に何度か戦闘を経験していると答える。


「バニラ装備の希望は何かあるか?」

「じゃあ、ボムシンググローブとかある?」

「うわぁ、本気で格闘キャラやり続ける気だ」


 バニラ装備でほしい物があるかと聞くと、工藤はボムシンググローブを希望し、それを聞いた桐山が引いた声を漏らす。


 ボムシンググローブは宇宙船用の指向性炸薬ペレットが取り付けられた金属製のボクシンググローブと腕を覆うプロテクタータイプの格闘武器。


 エンドレスホライズンの世界ではこのボムシンググローブを使った賭博をやる地下ファイトクラブがあり、その試合に参加すると手に入る格闘武器だ。


「防具はあのMODのエロ服が結構強いんだ。いざとなったら着替えて戦うし、拠点に置いてある装備に良いのがあるからそれでいく」


 防具は工藤がインストールしているエロMODのエロ服が見た目と違って防御力が高いのでそれでいくという。


「よし、出発するぞ!」

「はい!」

「腕が鳴るし!」


 準備を終えた俺達はハンドカーがある駅のホームへと向かった。

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